第四十六話 ゼクトのいない冒険者ギルド 二 美しき肉体 《ボディ》
「俺達に相応しい依頼はないのか……」
「ふむ。我らの筋肉に答える
「これとかはどうだ? 兄弟? 」
この村の人ならば慣れているが他の村や町から来たらまずもって彼らは怪しまれるだろう。
何故ならスキンヘッドにタンクトップ、そして太ももの半分ほどしかない短パンしか
圧倒的
日々体を鍛えて村を
せめてもう少し服を着て欲しいと皆思うが口には出さない。
そんな彼らだが、ゼクトがいないことによる
いつもはまわりの目線を気にしない——いやむしろ注目されたい——が今回ばかりはそうとはいかない。
家の中でトレーニングだけしていると次ギルドに来た時他の人達から避けられるかもしれない。自分達の肉体を周囲に見せびらかせたい彼らとしてはそれは許容できない。
よって自分達だけ家でトレーニングをする訳にもいかず
そのような中一人の耳の長い——しかし髪がない——エルフ族の男性が二枚の依頼書を手に取り熊獣人と人族の男性に見せた。
「運搬と……ん? 両方とも運搬だがこれに違いがあるのか? 」
「リーダー、依頼主が違うぜ」
人族の男がリーダーと呼んだ熊獣人に
そして気付いたのか腕を組んで
★
「ん? 今日はゼクトじゃないのか? 」
「すまんな。今日は俺達
依頼主の前で熊獣人のリーダーは両手を上に、そしてエルフ族と人族の男は前で組んでポージングを決めた。
それを見て依頼主の男性は少し困惑した後遠い目をした。
あまり人は多くないが、それでも周りに人がいる。
周りからの目線を受けて顔を引きつらせる依頼主。その一方で周囲から目線を
引いて行く周囲を見つつ依頼主は「彼らが出てくるほどだ。やむ得ない理由があるのだろう」と考えた。
「
しかし人の
仕事そっちのけで軽くゼクトについて聞く依頼主。
ポージングを解いた
「何でも怪我をしたようだ」
「あ~。なるほどね。確かに依頼の受け過ぎという印象はあるな。いつかはこうなるとは思っていたが、まさか本当になるとは」
事実を知らない農家の男性は納得する。
本当はミズチとの戦闘に加え、その後のぎっくり腰、そしてダリアからの追撃が原因である。
しかしいつもせわしく働いているように見えるゼクトはいつか体を壊すと思われていたらしく、誤解されたまま納得された。
腕を組みながら「うんうん」と頷く初老の農家は、顔を上げて彼らに尋ねる。
「今日は取引先に野菜を
「了解し……た! 」
ポージングで返事を返す男達。
「かなり量があるからお前さん達も怪我をするなよ」
「無論なり! 」
「我が筋肉を、とくと見よ! 」
農家の男性にポージングで答えながら、大量にある袋を来た馬車に載せて、完了の
★
次に彼らが向かっている場所はまだ襲撃の跡が残っている所である。
「……あの時は我が筋肉が通用しなかった」
「本当になんだったんだ? ただの賊とは思えなかったが」
「
そう言いつつも近寄る短パン。
しかし「あ。あいつらか」とその正体がわかると自分達の仕事に戻っていった。
この
「次、負けない様
「その通りだぜ、リーダー! 俺達の筋肉はこんなところでは終わらない! 」
「そうだとも! 常に
「「「——
少し
ハッとし、つられたリーダーは仲間二人をみて笑顔を浮かばせる。
「お前達には
「なに言ってるんだ。リーダー! 」
「そうだぜ。筋肉は、筋肉を呼ぶ! ただそれだけだ、リーダー」
ふふっと
「お。変態共か。今日はお前達か? 」
「その通り! 」
「我らが筋肉の活躍の場面! 」
「だが変態は
「そう! 俺達は——」
「「「|——
いつもの
慣れた様子でそれを見て、依頼主がスルーする。
しかし、他の村の
見られること
更に奇異なものを見る目線は止まらないが、彼らは更に興奮する。
これでは
「一先ず仕事だ。あちこちにある
「頼まれた」
「任せろ、主人」
「俺達の筋肉にかかれば
「ま、大丈夫だとは思うが怪我はするなよ? 」
手を振りそう言い、場所を指示して、赤く蒸気を放つ彼らを誘導する。
彼らは仕事を終えて、冒険者ギルドに戻ったのであった。
★
「あいつら……。どうしたんだ? 」
「わからねぇ。なんで体から蒸気が出ているのか……」
「恥ずかしさ、じゃねぇだろうな。いつもと同じ格好だしよ」
冒険者ギルドから出てくる彼らを見て周りの冒険者達がひそひそと噂する。
しかしそれを気に
そしてリーダーの熊獣人がポツリと声を出した。
「……今まで村の依頼は気にしなかったが、ここにきて一つ俺は真理に
「俺もだ」
「俺もだぜ、兄弟」
そしてピタリと足を止めて三人は沈む夕日を見上げた。
「「「依頼とは……筋肉を見せることと、見つけたり!!! 」」」
今日も変態は一日を終える。
そして更に
———
後書き
こここまで読んでいただきありがとうございます!!!
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