第52話 百合マンガですか?


「うーん、いきなりエロマンガのモデルやれって言われてもなあ」


『ちょっとポーズとるだけだよ? 君と萌君ならいい百合物が描けそうだし』

「鈴音先生はこの業界じゃ、かなりの有名人なんですよ? その先生に気に入られるのは凄いことなんです」


「なるほど、だから先生呼びなのか」


「さっきお二人が見てたのも先生の作品ですよ」


「ほー、確かに物凄いレベル高かったなあ。人気なのもうなずけるわ」

「むちゃくちゃエロい百合物だったすよね」


「萌ちゃんもマンガ描くの?」


「あたしもちょっと自分で描いたりするんですけど、鈴音先生の作品に惚れ込んでしまって。今はお手伝いがメインなんです」


「ああ、それでプロレス辞めたかった訳か」


「プロレスも好きなんですけど、それ以上に鈴音先生のマンガが好きになっちゃったんで……」


「レスリングからレズリングに行っちゃったんすね」


「なんだ? レズリングって?」


「本当にあるんすよ。まあ、スポーツじゃなくてエロ関係すけど」



『そろそろ始めていいかな? それと君、明里君だっけ? カメラマンやって貰える?』


「喜んで」

  



   ◇



『じゃあまず、朝陽菜君が萌君を後ろからハグね。明里君、いろんな角度から撮っといて』


「オッケーっす。おー、初々しいっすねー」



『朝陽菜君、手をちょっとずつ上に上げていこうか。いいねー、あっ、そこ。胸でストップね』


「萌ちゃんの恥じらう顔がたまらんすねー。先輩は顔怖いっすよ?」



「うるさいっ」



『こら朝陽菜君、喋らない! 集中して? 萌君は首だけ後ろ向いて、二人見つめ合う、と』



「……」


「……」



『そうそう、良いよ。明里君、二人が指を絡めてるとこ、アップで撮っといて』


「了」




『はい、そのまま顔を近づけていって』


「……ゴクリ」




『唇重ねてみようか?』


「ウヒョー」



         「えーと、萌ちゃん、いいのか?」

         「はい、真先輩なら……」

         「…………」




『おおっ!!インスピレーションが刺激されるっ! 創作意欲がビンビンに湧いてきたー!!』


「ノッてきたっす」





   ◇




『萌君は机に寝て、そこに朝陽菜君覆い被さって……』




『……右手、太腿あたりに這わせて……そうそう……』




『……今度は体位変えて……』




『…………足を絡める感じで……』













       ◇













『やあ、みんなお疲れさん。すごくいい画が撮れたよ。最高の作品ができそうだ』



「ハァハァ、それはなにより。いろんな恥ずかしい格好されられたんだから、いいもん描いてもらわないと。な、萌ちゃん?」


「…………ハァハァ……アア……」  


「萌ちゃんの意識、まだ飛んじゃってるんじゃないすかね? ハアハア」


「何で明里おまえもハアハア言ってんだよ?」


「いやー、ファインダー越しにエロい刺激散々もらっちゃったんで。コーフンしたっす」




『朝陽菜君と萌君は、暫く休憩しててくれ。その間、私はコンビニでお茶とお菓子でも買って来よう。明里君も一緒に来てくれるかい?』


「え? あ、はい、いいすけど」






   ◇



「あれ? 涼音先生、こっちのコンビニの方が近いっすよ?」


『いいんだよ。買い物に行くってのは口実だし』


「もしかして、わざと先輩らを二人っきりにしたんすか?」


『うん、かなり気分が盛り上がっていたようだしねえ。特に萌君の方がね』 


「モデルに使ったご褒美的に、後は好きにしてくれって事すか?」


『アフターケアは大事だからね。それに、二人が親密になれば、もっとリアルな画が撮れるだろ? 私としてもメリットがある事なのさ』


「なんか悪い顔になってるすよ? 涼音先生」


『ふふ、そうかい?』


「まあ、そういうの、嫌いじゃないっすw」


『光栄だねw さて、もう暫く時間を潰すか。今頃、どうなっているやらw』
















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