第50話 一肌脱ぎました


『……チラッ…………ちょっ、朝陽菜さん、怖いって』


「先輩、威嚇したら駄目っすよ。西口君もポッてならないと」


『いやいや、この状況で無理だって』


「うーん、仕方ないっすね。じゃあ、ひと肌脱ぎましょう」



  ずりっ



「うぉいっ! アタシを脱がせるんかいっ」


「大丈夫っす。肩と胸の谷間ギリギリまでなんで」


「大丈夫っす、じゃねぇわっ」


『……うっ……』 


「ほらほら西口君、前屈みになってる場合じゃないっすよ?」


『うぅ、僕は会長一筋、僕は会長一筋、僕は会長一筋……じー』


「なあ西口君、チラ見じゃなくてガン見してない?」


『あわわ、僕は会長一筋、他のおっぱいなんか……チラッ……じー』 


「あら、ラッキースケベ使いのくせに、ストレートなエロには弱いんすね」


『ふぐっ』 


「おい、この訓練、本当に効果あるのか?」


「ないっすよ?」


『ええ!? じゃあ何で僕、やらされてんの?』


「面白いからっす」 


『……』


「お前、本当に鬼だな」




   ◇





「ねえ、西口君は会長ボスが好きなわけ?」


『す、好きというより尊敬してるだけだよ? 生徒会役員として』


「じゃあ、付き合いたいとか思わないんだ?」


『そりゃ、付き合えるもんなら付き合いたいけど』


「どっちだよ? ラッキースケベマンのクセに煮え切らないな」


『うっ、ラッキースケベマンは流石に酷くない?』


「だって、ホントの事じゃん? あんた何回、アタシの胸に顔埋めたよ?」


『それは……ごめん。でも僕だって別に好きでやってるわけじゃ……』


「はあ? アタシのおっぱいが気に入らないって事?」


『い、いやいや、朝陽菜さんのおっぱいは魅力的だよ?うん。ただ、ラッキースケベなんてものはいらないって事』


「世間一般の男子から思いっきりヒンシュク買いそうな発言っすね」

「だな。野郎共にしたらラッキースケベなんて、絶対欲しいだろ?」


『それでも僕はいらないよ。仮にそういう体質なんだったら、普通になりたい』


「それだったら簡単じゃないすかね?」


「ん? どーするんだ?」


「要はラッキーじゃないタダのスケベになったらいいんすよ」


「あっ、なるほど。よろけておっぱいに突っ込む前に、自分から突っ込んでいくスタイルか」


『は? 意味分かんないんだけど? それってただの痴漢じゃないの?』


「まあ、そうとも言いますが」


『そうとしか言わないよ!?』


「本気でラッキースケベから脱却したいのなら、それしか方法ないんじゃない?」


『いや、もっと真面目に検討しようよ? 君ら絶対面白がってるよね?』




   ◇





「では、ラッキースケベ脱却のため、もう一肌ぬぎましょう」


  

  ズルリ



「やっぱりアタシを脱がすんかいっ」


『ぶぶっ』 


「とりあえずチクビ見えなきゃOKっしよ?」


「OKじゃねーわ」


「じゃあ、先輩と西口くんが廊下ですれ違う感じでいきましょうか。普通なら西口くんのラッキースケベが発動して先輩のおっぱいに顔を埋めたりする訳ですが、その前に自らおっぱいを掴みに行っちゃいましょう」


『はぁっ?! 君、なに無茶苦茶言ってんの?!』


「そーだよ、今度は明里お前がやれよ」


『いや、そーゆー問題じゃなくてね?』


「わたしがやったら、おっぱい掴めないで空振りするじゃないすか」


「あっ、……なんかゴメン」


「悲しくなるんで謝んないで欲しいっす。てな訳でいってみましょう」


『えっ、ホントにやるの?!』


  



   ◇



「はい、そろそろっすよ。今っす! そこでおっぱい掴んで!」


『うっ、ごめーん!!』



   ガシッ



「うん、ラッキースケベ発動前にちゃんと掴めたっすね。あとはこれで慣れていって……あっ」




「……ねぇ貴方達、いったい何やってる訳?」




「あ、会長ボス……」


『かっ、会長!? ち、違うんですっこれはっ!』



「ねえ、西口君? 思いっきり彼女のおっぱい掴みながら、何が違うって言うのかしら?」



『い、いや、これには訳が……』





「いつもと逆の展開になったっすね。これはこれで面白いからまあいいか」



















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