第48話 栞ちゃん無双


『うおーっ!! 山田が勝ったぞ!!』

『逆転勝ちだーっ!』




「てへ、負けちゃったす」


「てへ、じゃねえわ。ほぼ勝ってたのに、何コースアウトしてるんだよ?」


「コースアウトじゃなくて、ショートカットの失敗っす」


「んな事しなくても勝ってただろに?」


「いやー、ついタイムにこだわっちゃいまして。てへ」




『よーし、良くやった、山田! あと一勝で勝ちだぞ』

『次は田中、頼んだぞ』

『おう。で、何のゲームだ?』


「んじゃ、次はアタシが出るよ。ゲームは剛拳5で」

《キャー部長、頑張ってーっ》



『うっ、またちょい前のゲームか。そういう狙いって訳だな』

『俺らは最近のゲームしかやってないからなあ。こりゃ、五分ごぶの勝負だな』

『なんの、あんなおっぱいがデカイだけの女に負けるかよ』




「あの野郎、ぶっ潰す」




   Ready Fight!



『いけー、田中!! 押してるぞ!』

『いや、ほぼガードされてる。油断するな』



『うわっカウンターか、なんだこいつ、読みが半端ないぞ!?』

『ウソだろ!? なんであれ反応できるんだ?』

『げっ、あの空中コンボ、激ムズ難度だぞ!?』



《会長、スゴーいっ》

「先輩は読みじゃなくて、ちゃんと相手のモーション確認してから反応してるっすね」

《え、そんな事できるの?》

「腕だけスライムスーツ展開してるんすよね。今の先輩の反応速度と精密操作はスタープ○チナ並みっすよ?」



  KO!!



「うおっしゃ、勝ったーっ!!」

《会長ーっ、ステキーっ!!》

「これで一対一すね」



『ま、負けた。おっぱいだけじゃなかった』

『くっ。最後までもつれるとは』

『最後はリモートのあの眼鏡っ子か。種目はなんだ?』



《じゃあ、私はぽよぽよ最新版でお願いします》

「定番の落ちものパズルっすね」

「栞ちゃん、最新版で大丈夫なのか?」

《はい、任せて下さい》



『えっ、最新バージョンでいいのか?』

『よっしゃ、勝てるぞ。俺の実力が全国ランキング50位以内とは知るまいて』

『ふふん、バカなヤツらだ』



  Ready? GO!!!




『……え?』


『……は?』


『……ウソだろ?』



「すっげー、何連鎖してんだ?」

「あっという間っすね」


《ふん、ちょろいもんね。はい、終わりー》



『か、完敗だ……』

『あんな大連鎖、初めて見た』



「めちゃくちゃ凄かったな、栞ちゃん。このゲーム、相当やり込んでんの?」


《はい。私いま、全国ランキング7位なんですよね》



『なにーっ!? 7位だと!?』

『勝てる訳ない……』




  ◇



「これで部費の件は納得って事でいいんだよね?」

「てか、もともとウチは関係ないんすけどね。生徒会が決めた事だし」


『ああ。もう、あんたらに文句は言わない』

『俺らの完敗だしな。ただ……』

『リモートの彼女、名前は何と?』


《私? 一年の人見栞ですけど》

 

『一年生か! 人見さん、是非ゲーム研究会に入って貰えないだろうか?』


《ええっ、無理です!》

「そーだよ、栞ちゃんはウチの可愛い大事な部員だぞ?」

《朝陽菜部長……ポッ》


『そ、そこは掛け持ちって事で』

『たまに参加でも全然いいから、なにとぞ』

『なんなら大会の時だけでも』


「あんたら、大会は出ないって言ってなかったすか?」 


『こんな実力者がいたら出なきゃだろ?』

『上手くいけば賞金も……』 

『そうなったら部費が賄えるし』



「あんな事言ってるけど、栞ちゃんどーする?」


《イヤです》


『そんなあ、人見さーんっ!!』



「こりゃまた変な縁が出来ちゃったすね」






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