第46話 ボスはポンコツ


「ちわ、会長ボス


だからボス※リモート中って言うなと》


「へいへい」


《……では、定時報告を》


「えーっと、校庭の桜の木に登って、枝折る場面をネットに上げよーとしてたバカがいたんで、締めときました」


《暴力は使ってないでしょうね?》


「直接は使ってないですよ?」


《それ、間接的には使ってますって言ってるようなもんじゃない?》


「間接的というか、関節技というかね」


《問題になりそうなのは勘弁してよね?》 

 

「へいへい。あ、そいつらのプロフィールは後で送るんで」


《はい、了解。他にある?》


「小さいイタズラが結構ありましたよ。ほとんど動画サイトに上げるつもり用っぽいんですけどね。最近、流行ってんですかね?」


《迷惑系動画ね。世間で問題になってるけど、ウチの学園から出すわけにはいかないわ。徹底的に潰していって。あくまでも合法的にね?》


「また面倒くさい事を。部費はちゃんと出るんでしょうね?」


《ほぼ決定したから、近日中に降りるわよ》


「ならいいけど。あとさ、新しいアレ、届いた?」


《アレ…………アレね? 届いたけど、前と同じじゃないの? スペアって事?》


「まだ付けてないの?」


《まだだけど……なによ?》


「新しい機能説明するからさ、とりあえず付けてくれない?」


《またここで生徒会室脱ぐの? 今じゃなきゃダメ?》


「重要な事なんだよね。知らないで使って不具合が出ても困るしさ?」


《……わ、わかったわよ。ちょっと待ちなさい?》





   ◇




「相変わらずの手際っすね、先輩?」


「てか、あの人ボス、この手の話になると、途端にポンコツになるからなぁ」


「画面に入らない所で今、脱いでるんすね」


「微かな衣擦れの音がまたそそるよな」


「あんた、どこの親父すか?」


「うるさいわ」


「まあ、今回のヤツは試作品より、感度を大幅に上げてるんで見ものっすよ?」


「それだと、ブラに触れただけで過剰反応しないのか?」


「生体だけに反応するように設定してるんで大丈夫っす」


「なるほど。だとしたら、筆でさわさわしても感じない訳か」


「あんた、普段どんなプレイしてるんすか?」


「し、してないわ。ふと思っただけだわ」


「ふうん、どうだか。由麻さんとかと……」


「あっ、ほら、会長ボスが脱いだみたいだぞ?」




   ◇




《……脱いだわよ?》


「はい、じゃあ、新しいヤツと付け替えましょうか?」


《……まったくもう………………どう?》


「オッケーです。それでは反応を調べたいんで、先っちょの方、指で触ってみて」


《反応?……いったい何の?……あぁっぁあぁあっあーっ!?》


「うっ、すげーっ、鼻血でそう。エロ過ぎるぞ?」


「へたり込んじゃいましたね。相当刺激あったんすね」


《ハァハァ、ああ……な、なんなのこれ!?》


「ちゃんと触覚があるパットですよ。もうほぼ本物のおっぱいって言ってもいい代物です」


《はぁはぁ、それ必要なの?》


「考えてもみて下さいよ? そういう場面になった時の事を。お相手が一生懸命、吸ったりつまんだりしても何の反応もないんじゃ、愛想つかされますよ? その点、この新型パットならちゃんと刺激を感じるから、よい反応が出来る訳です」


《何いってるの!? そ、そんな場面なんか……》


「ない事もないでしょ? 備えあれば憂い無しって事です」


《で、でもこの刺激強すぎない!? 普通に自分のモノを触るより遥かに強い刺激だったわよ!?》


「ああ、会長ボスは普段から御自分で弄くり回してるんですね?」


《弄くり回してないわっ!! 普通に手が当たったりするでしょーが!?》


「はいはい。でもねえ、その刺激が普通なんですけど。もともとボスの触感が鈍かったんじゃないですかね?」


《はぁ!? な、なにを……》


「経験不足もあるのかな? とにかく、その普通の刺激に慣れておいた方がいいですよ?」

「よくまあこんなデタラメが言えるっすね、この人」


《ほんとに? そんなものなの?》


「そんなものです」

「チョロい、チョロ過ぎるっす、会長」


《……わかったわ。この刺激に慣れればいいのね?》


「その通りです、会長ボス

「あーあ、落ちちゃった」





  ◇



《んっ、んんんんんっ、あぅっ、ああーっ!!はぁはぁ》


「ほらもっと刺激に耐えないと。がんばって」


「……何を見せられてんだか、これ。って、そろそろすかね?」



《ハァハァ、ちょっと、慣れて、あぅ、きたかも、うっ》


「いい感じですね。あ、もうちょい後ろに下がりましょうか。ちょい右、うんその辺で」

「先輩、これはつまり、例のヤツに備えたポジションすね?」

「いかにも」

「画面から遠いけど、なんとか聞こえるっすね」





             ここ? うっ、あぁ、ハァ……えっ、えっ、誰か来、ちょっと!? 西口君!?



「来たーっ」

「来たっすね」




          待って待ってっ、ああっ、ちょっと大丈夫うっ、あぁぁぁぁぁーっ!!





「惜しいっ、画面から外れちゃったすね」


「多分、驚いた西口君がよろけてボスの胸に突っ込んだんじゃないか?」


「なるほどその刺激が、あの最後の絶叫って訳すね?」


「しかし、西口君のラッキースケベが留まるところを知らないな」


「西口君、恐るべし」


「ああ。しかし、なかなか実りある実験だったな」


「なんかわたしら、悪の組織みたいっすね」


「今さらだけどな」

















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る