第3話 いろいろダメになるクッション

 結局クッションは二つになったのだった。



「朝陽菜先輩、このクッション、やっぱサイコーっすね」


「うんまあ、クッションじゃないけどね」


「メルカリで売って大儲けしません?」


「それ、世界規模でパニックになるから止めとこーか?」


「えーもったいない」


「忘れてるかもだけどコイツら、モンスターだからね?」


「だって、こんなにおとなしいじゃないすか。お手。ほら?」


「いや、普通のクッションは『お手』しないから」


「他の芸も出来ますよ? 『触手っ』、ほら?」


「ほらじゃねーよ。何覚えさせてんだよ。うねうねキモいな」


「マッサージですよ。先輩、喜ぶかと思って」


「頭に性感って付くやつだろ? 絶対やるなよ?」


「それは、やってくれってゆー」


「フリじゃないから」


「じゃあせめて、この子逹に名前を付けたげません?」


「えークッションに名前付けんの?」


「……スライムっすよね?」


「あー、そうね」


「で、考えたんすけどね」


「どーせロクでもないと思うけど聞こうか」


「スライムだから、『ムライさん』ってどーすか?」


「またツッコむほどボケてないのが微妙だな。1匹はそれでいいんじゃない? で、もう1匹の方は?」


「え? クッションの名前なんだから全部ムライさんでよくないすか?」


「おまえ、言ってる事がブレまくってるな」


「でも見た目一緒だし、区別つきます?」


「つかないね。タマネギ部隊くらいつかないね。全部ムライさんでいいか」


「じゃあさっそく。ムライさん、おっぱいマッサージして」


「ふあぁぁぁぁぁっ!? 止めんかコラ!! やるなっつったろーが」


「いや、わたしはコッチのムライさんに言ったんすけどね? わたしも先輩みたいにおっぱい大きくなりたいんで」


「どっちもムライさんなんだからコッチのムライさんも動くだろーが!?」


「あー、そーいやそーですね」


「確信犯?」


「ところで先輩、なんかさっきから背中がスースーするんですけど気のせいですかね?」


「そりゃ奇遇だな。アタシも背中がスースーするんだけど。明里、ちょっと立って後ろ向いてみ?」


「こーすか? どんな感じすかね?」


「……うん、リアルびんぼっちゃまだね」


「なんすか、それ?」


「ググったらわかる」


「それよか、先輩が背中見せてくれた方が早くないすか?」


「絶対いや」


「それは見てくれとゆー」


「フリじゃないから!」





 この後、ムライさん逹は服を食べちゃわないよーにと、しっかり躾られたのだった。






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