41,宇宙船の目撃情報 ー一緒ですねー
店の奥の部屋ではギルバート達が、物品の整理と部屋の清掃を行なっていた。
「はっはっは! やはり、早い! 大勢でやると早くことが済みますねぇ! 」
ギルバートは高らかに笑いながら言う。
それに対してジョンが、運んでいたアンティークの机を床に下ろしながら返す。
「ハァ……ハァ……全くですね。……だが、こんな重たいものを運び続けていると、いつか腰をやっちまいそうだ」
「はっはっは! 私もジョンさんも、自らの身体に気を遣わなければならない年齢ですからねぇ! お互いに気をつけましょう! 」
ギルバートが笑いながら返した。
一方、エロイーズとコリンの2人は、部屋の棚に置いてある雑貨を布巾で磨いていた。
「……アリスとレイラさん、もうマチルダさんから話を聞き終わったかな? 」
コリンが呟く。
「そうですね。いい具合に話が進んでいると思います」
エロイーズがそう返す。
それから暫く沈黙が続いた。コリンとエロイーズは、二人とも黙ったまま作業を続ける。
しかし、徐にコリンがその沈黙を破った。
「エロイーズさんは、どうしてレイラさんのところで働いてるの? 」
「えっ? 」
唐突な質問だったので、エロイーズは少し驚いてしまった。
「あ、ごめんなさい……。でも、ちょっと気になって……」
コリンは申し訳なさそうにエロイーズに告げる。
「答え難い質問だったら……」
コリンは、無理に答えなくていいよと伝えようとした。しかし、エロイーズが彼の言葉を遮る。
「いえ、全然構いませんよ」
エロイーズはコリンをチラッと見た後、自分がレイラの下で働いている理由を話し出した。
「私は幼い頃に両親を亡くしましたので、孤児院で育ちました。ある程度年齢を重ねた時、その孤児院が潰れて、私は独り立ちすることを余儀なくされました。ですが、この国では…その……様々な理由で、あまり仕事にありつけなくて……。やっと、働き口が見つかっても、すぐに解雇されたり、仕事場でよくない扱いを受けたりしました。ですので、暫くの間、不安定な生活が続きました。帰る家がなくて、路上で寝ることもままありました。そんな時に…レイラ様と出会いました。帰る場所がないのならうちに来ないかと、彼女は私に手を差し伸べながら言って下さいました。……それで今に至ります」
コリンは横目でエロイーズのことを見て、小さく口を開けながら話を聞いていた。
拭いていたものを静かに棚に置き、今度はエロイーズがコリンに質問をする。
「コリン君は……どうしてアリス様のところに居るのですか? 」
エロイーズに問われたコリンは、手に持っている木彫り人形に目をやり、微笑みながら答える。
「僕もエロイーズさんと一緒だよ? 僕も帰るところがなかったんだ。だから、路上で生活していた。そんな時に……アリスとジョンと出会って、ハスラー夫人とグレゴリーさんが家に来たらどうだって誘ってくれたんだ」
「……そうだったんですね」
エロイーズは小さく呟いた後、コリンの方に顔を向けた。
「じゃあ……一緒ですね」
エロイーズは優しくそう言って、口角を上げてみせた。
それを見たコリンは、不思議そうな顔をしていたが、やがて彼女と同じように笑みをこぼした。
すると、その直後、アリスの声が聞こえてきた。
「おーい、お前ら! 話が済んだからここを出るぞー! 」
扉の向こうからアリスがひょこっと顔を出す。
「はっはっは! レディ・アリス! この世の中で、人類がどうあるべきなのか? その結論は出ましたか? 」
ギルバートが彼女に問いかける。
「はぁ? そんな話、一切してねーよ。……うちの奴らが迷惑かけなかったか? 」
アリスはギルバートに顔を近づけ、小声で問う。それを聞いたギルバートは「ふっふっふ」と小さく笑いながら答えた。
「とんでもない。すごく助かりましたとも」
アリスにそう言った後、ギルバートはコリンとエロイーズに言った。
「お二方とも! 大変助かりました! 今度お会いした時は、この世界のパラドックスについて語り合いましょう! 」
「え、ええ……。はい……? 」
エロイーズが困り顔でギルバートに返事をする。
「まともに受け止めなくていいぞ、ちびっこ執事。そいつの言うことは8割方わけわかんないんだからよ」
アリスはそう言いながら、扉を越えて部屋を出た。
先程話をしていた部屋までアリスが戻ると、マチルダとレイラが待っていた。
「おい、あいつら呼んできたからこの店を出るぞ」
アリスがレイラに言う。レイラは「ええ」と呟いた後、マチルダに向かって言った。
「ミス・ハウンズフィールド。貴重なお話をありがとうございました。この御礼はいずれ」
レイラの言葉にマチルダが笑顔で返す。
「とんでもございません、ミス・ジーニアス。お話出来て嬉しかったです。……私のお話は役に立ちましたかね、アリスさん? 」
マチルダがアリスの方を見やり、質問する。そう問われたアリスは、得意げな顔で返した。
「ああ、悪魔女。まあまあ役に立ったさ。まぁ、もしお前が全く嘘をついていないのだとしたら、の話だがな」
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