第30話前菜
何でもしますって?そんなんで許されると?ナメすぎだろがいっ!人を殺しに来といて、甘すぎだろがいっ!
「だってさ。ゆりかちゃん愛されてるねー」
「――――――――幸太」
「ゆりか?どうしたんだ」
「でゅふ、でゅふふ。ゆりかは俺のものだ!」
キーーーーーーーーーーーッショ!
この展開を望んでたけど、予想以上に吐き気がするぞおぉ!俺のものだって!モノ、者、物?モーノー。消しゴムじゃないよね?
女の子をモノ扱いは良くないよー。今の時代に逆行してるよー。完全に寝取った気でいるよー。
「は?誰だよお前」
「でゅふふ。言ってろよ。そうだよなゆりか?」
「――――――――ち、違うの!無理矢理だったの」
「無理矢理?何かされたのか?」
「はあい!オイラが説明してしんぜよう」
牢屋にぶち込んだら、急にディープな大人の関係になっちゃってさ。オイラも困っちゃったよ。喘ぎ声っていうの?大きくてさあ、他のクラスメイトが可愛そうだったから、わざわざ部屋を拵えたんだよ?まったく困っちゃうよねー。
と、正確に伝えた。
「嘘だ!あり得ない。そんな事するはずがない!」
「だって見たんだもん。
「ええ聞いたわ。朝から晩まで。孕んでんじゃないの?」
おっふ。強烈な一撃だなあ、おい。いじめられっ子の復讐ですか?ノリが良いのは有り難い。だけど、お前は後でぐちゃぐちゃにしてやるから。
「ゆりか、嘘だよな」
「魔法を掛けられたの!私の気持ちは変わってないわ!」
「ヤッたのか?」
「違う、無理矢理ヤラれたの」
「――――そうか」
「ゆりか、言いなよ。僕の方が良かったって……」
ここで一旦、カァァァァット!
展開が完全に寝取られAVの導入になるのでカットォ!
ここからは俺の巧みな話術で、一連の流れを解説してやろう。
でゅふふCはゆりかちゃんが大好き。人としてというよりは穴としてだな。
ゆりかは……キメセクが良かったのか、でゅふふCに割と好意的のようだ。牢屋にいた3日間。恐怖に震え、肌を重ね、優しくしてくれたでゅふふに芽生えるものがあったのだろう。
だがこうた君への気持ちにも変わりはないようで、どちらにも気を配っていた。
そしてこうたくんは、鼻筋にシワを寄せて苦苦しかった。どんな経緯とかどうでも良くて、ヤッたという事実だけが重要なんだろう。
浮気現場に居合わせた彼氏と間男と彼女、的な修羅場だった。想像ではこうたくんがブチギレるかと思ったが、意外と静かで、イマイチ盛り上がりに欠けていた。
こういう時はひと手間加えるといい。
青椒肉絲を作るとき、肉に下味をつけるだろ?アレが結構大事なんよ。うまい飯は丁寧な下ごしらえを必要とする。
胃袋に入りゃあ同じなのにさ。ベロに乗せる時のあの一瞬の為に時間と労力をかけるのよ。それが愛情なのさっ!
「こうた君、手伝ってやろうか?」
「何?」
「殺すの手伝ってやろうか?」
カモン怒り!もっと怒っていいんだぞ!ゆりかちゃん、楽しんでたんだぞ?ムカつかないの?カモンカモンカモン!キレろ、キレろキレろ。
「手伝ってもらう必要は……」
「でゅふ、ふふ。魔王様!」
「んん?な……ん?」
ん?コイツに魔王様と呼ばれるのはムカつく。それに、笑い顔が腹立つな。童貞捨てたぐらいで浮かれやがって。
で、こうた君。何故、表情が無くなったのかね。
「こうた君、どうした?」
「――――――――頼む。取引をさせてくれ」
「どんな取引を……」
「でゅふふ。こうたばかり贔屓するんですか?魔王様」
「はあ。な……」
「待てっ!」
しゃ・べ・ら・せ・ろ!割り込んでくるな!黙れよモブ共が!
「うるせえよ!」
「アイツの武器、知っているのか」
「はあ?」
「返事をするな。操り人形にされたくないならな」
「ふーん」
「でゅ、ふ。魔王様!」
こうた君、奴隷に興味があるのかな。今のって、俺を助けてくれたんだよね?でゅふふCが驚いてるし。
急に尻尾を振ってどうしたんだい。
「幸太、どうして……」
「考えがあるんだ。魔王に今死なれちゃ困る」
OH しっぽり懇ろな仲なだけある。ゆりかちゃんとでゅふふCの画策かい。お前ら2人の共謀かい。頓挫しちまったから、こうた君を責めるような目つきをしてらあ。
こうた君だけ除け者?いや、邪魔者?
もしそうだとしてもさ、彼女がそんな目をしちゃあイケないよ。浮気したばっかなのに、でゅふふCに肩入れするのは悪手じゃねえの?
まあ美味しい展開だ。ヒリヒリするぜ。手間がいい感じに反映されてらあ。
でも意味不明でついていけねえよ。
こうた君は何を考えてんの?何か策があるんでしょ?
「どーんな考えよ。おっちゃんに聞かせてご覧」
「友梨佳を、友梨佳だけでも元の世界に返してほしい」
「えっ!?浮気したのに?」
「俺は信じてる。きっと魔法か何かで混乱していたんだろ」
「違うって。自分で腰振ってたんだって」
「よく考えてみたんだ。そうだとして、友梨佳を見捨てられるのかって。俺だけがこの場を切り抜けて後悔しないかって」
「後悔するんだねー。はいはい。かっこいー」
「バカにすればいいさ。友梨佳が好きなんだ。命に替えられるぐらいに好きだ。だから信じる」
「幸太……」
やだぁ。キュンキュンしちゃう!子宮があったら孕んでるぅ!
「元の世界に帰すって、やり方知らねえけど?」
「マリアーネなら知ってるはずだ。もしくは元老院議員が」
「頼むとこ間違えてない?」
「アンタの部下、バイアとソルティドッグが元老院を支配する、いやしたと宣言していた。アンタの手下だろ?」
「ああ〜そーゆーことですか」
元老院議員かマリアーネたちが異世界に戻す方法を知っている。コイツらはそういう約束の下、俺を殺しに村まで来た。
んで、俺が元老院とマリアーネを支配させたと思っているから。頭を下げていると。確かに、俺に死なれちゃあ困るわな。
俺、指示してないけどね。
つーか大前提として帰れないんだぜ?まだ知らないんだ。ウケる〜。
括弧笑い括弧閉じ。ダブリューダブリューダブリュー。
大草原だわ。
「帰れんよ。俺の神がそう言ってた」
「俺の?神が違うのか?」
「知らんけど。お前も神に聞いたの?」
「神と話せるのは神の代弁者であるマリアーネだけだ。彼女が言うのなら真実だろう」
「ほおー。そうなんだ。死んだくせに帰ってどうすんの?もうお骨になって砕かれてんじゃね?」
「死んだ?何を言ってるんだ。この世界はゲームの中だろ」
「ゲーム?」
「違うのか?」
知らんよ。
俺に聞かんでもろてええかな。
まあ確かに?クラスまるごと転生は不思議な現象だ。転生自体不思議だけど、輪を掛けてオカルティックだ。
全員が首吊りでもしたか?あり得んわな。学校に暴漢が入ってきて……的な?それなら、記憶があるよな。じゃあ記憶が抹消された?それはない。クラスメイトを覚えてるんだし、こうして元の世界に帰りたがってるんだから。
「詳しく説明プリーズ」
クラス全員、学校全体、地域の同世代、他県の同世代、日本の若者の間で流行しているゲームがあるらしい。体感型うんたらかんたら。没入感ぱねえー的なゲームで、このクラス全員がそのゲームをやったことがあるらしい。
こうた君はヘビーユーザーって訳では無いらしいが、この世界に見覚えがあるとか。ゲームの中で体験したまんまの世界らしい。
なるほど。
俺の中で行き着いた結論は「設定」だ。
俺の「設定」は自殺が転生のトリガーになっている。
コイツらはゲーム世界に飛び込んだ「設定」。トリガーは不明だが、元の世界で死んでないのは確かなんだろう。情報が少なくて断言できないけど。
となると、ネズ公は?金髪の貴族系主人公は?色々興味が出てくるが、死んだから理由は聞けんな。残念。
「設定」が転生にも影響している。となるとコイツらが帰れるってのはあながち嘘でもないのかも。マリアーネや元老院もマジで帰る術を持ってるのかも。
俺の神様が帰れないよーって仕様説明していたから、てっきり帰れないと思いこんでいたが、コイツらは帰れるのかー。
だからって帰す気は1ミリもないけどね。
「でゅふふ、ま、魔王様!話を聞いてください!」
「チェリー?煩いから殺していいよー」
「はっ!有り難き幸せ!」
とゅるんと床からこんちくわ。黒ひげ危○一発みたく飛び出したのは、全ショタ代表、腐女子が間違いなく野獣に犯させるであろう美少年のチェリーフィズ。
真っ赤な瞳がいつもより綺麗だった。怒りで据わった瞳が水面に映る太陽みたいに輝いている。お待たせしました、お待たせしすぎたかもしれません。
こうた君に殺させたかったけど、まあいいでしょう。チェリーが殺りたがってたし。
行けーチェリーボーイ!
「でゅふ、クソッ!こうなったら……今だ!殺れ!」
諦めの悪いでゅふふCが、謎の掛け声を発すると魔族の一人が飛びかかってきた。魔族のモブだ。確か、牢屋番を任せていた奴。ここにいるって事は魔族の主要メンバーなんだろうが、申し訳ない。キミダレ。
魔族のモブっ子の瞳孔は広がり、焦点の定まらない目で俺の首元に手を掛けようと息巻いている。
ちょっとビビった。いやめっちゃビビった。何するか分からん奴ほど怖いものはない。そういう奴の目はだいたい据わってんだよ。コイツみたいにぃぃぃ!
ヘルプ!おっちゃん怖いよー!
不覚にも固まっていると、床から顔を出したのはディキだった。俺の前に立ちはだかってくれた。かっくぃぃぃー!
ヒュンっと黒い影が横切ったかと思えば、ガンギマリの魔族が姿を消した。
どこにいった?
まさか、ドラゴン○ールみたいに超高速戦闘を仕掛けてきたのか!?そう思って、なんとなく身構えてみる。俺の能力は対主人公兵器であって、パンピーには効かない。となると魔法?ムリムリ。族長の奥さんであるババアに習ってない魔法は使えないんだ。
そうなると、己の身一つで戦うしかない。まさに天下一武道会の幕開けだ。
自信はゼロだが、とりあえず身構えるに越したことはないだろう。
で、ジャ○キーチ○ンをモチーフに、カンフーっぽく佇んでいた。そしたら、なんとなく視線を感じる。
ちらりとそちらに目を遣ると、イケメンがこちらに熱い視線を向けていた。
なんと、ダイキリ兄やんがガンギマリの魔族をヘッドロックで拘束していた。おもっくそ喉仏を潰しにかかっていた。たぶんあのまま首をへし折るんじゃ……。
バギッ!
押忍。そうなりました、押忍!
あざっす!
でも、なんで俺を見ながら?性癖かな?褒めてほしいのかな?犬みたいに頭をなでりゃあええのかな?
「失礼しました」
冷静だなー。数少ない魔族を殺したってのに、落ち着いとるなー。感情は……あるよな。転生者を恨むぐらい人並みに感情はある。悲しかろう、怨めしかろう。
それを圧し殺して、俺に頭を下げるんかい。
仕事人のポーカーフェイス。
やりよる。
「あああ!ふざけんなっ!なんで邪魔したんだよこうたっ!!上手く行きそうだったのに!」
『
『
チェリー!恐ろしい子っ!?なーんて残酷なんでしょう。でゅふふCの脚が無くなったじゃないのよ。腰からビチャリ、お座りしてるじゃないの。
ん~かわいい子っ。
「待っで!たずけでぐれるっで……」
「いや言ってねえーよ?友達を助けてやるとは言ったけど、お前は助けねえーよ?男になったんだから堂々としんしゃい!」
「いや゛だ!だの゛む゛が……」
『
「や゛め゛で…………お゛ごっ」
ごちーんごちーんと床に天井に赤い染みができていく。床に顔面が叩きつけられると、ステインなしの白い歯がポロリ。天井にぶつかると、キューティクルたっぷりの髪の毛がべっちょり。
チェリーよ、いつまでバウンドさせる気だい?そいつぁ、死んでるよい。
べちゃり。
一つの青春が消えました。
悲しくはない。彼も誇らしいだろう。
女を知って、天に召されたのだから、悔いはないだろう。
良かったね、でゅふふC。
あらあら、青い顔しちゃって。見慣れてないの?こういう風景。
魔族を見てご覧よ。こーんなに嬉しそうにしてるのに、君たちはダメダメだ。
――――ほう。
「青頭!こうた君は任せた!」
「分かった」
髭も剃って眉も整えたのか?指が貫通してる手袋から艶々の爪が出てらあ。気合が入っている。
黒のジャケットをピラピラとやたらに靡かせて、悪そうな顔で俺に近づいてきた。
すると小声で
「友梨佳は放置かよ」
だそうだ。なんだよ、ずいぶん悪人然としているじゃねえか。こっちも負けちゃいられねえ。
「いや。お前が戦い始めたらオークにぶん投げる」
どうよ。ゆりかちゃんはオークに種付けしてもらうとしようじゃねえか。
「ふっ、それは見物だな」
そうだろう、そうだがつお、そうだろう。俺も楽しみだよ。
おっと、そうなるとオークを呼ばなきゃいけないねえ。そしたら、能力を使ってみますかね。後で。
「
「何か問題でも?お前らに復讐できるなら、閻魔だろうが魔王だろうがハデスだろうが、誰の手下にだってなってやる」
俺ってそんなにすごいの?閻魔大王やハデスに並ぶほどかね。
まあ、半神だし?間違っちゃいないと思うけどさ……
俺ってやべえ――――。
なんか主人公っぺえ――――。
「悪かった。本当に申し訳なかった。だから……」
「都合のいい謝罪だな。それで許されるとでも?」
半神を解除というか返納というか、そういうシステムないかなー。神様に頼もうかしら。神なんだし、そういうのできそうじゃん。
「頼む!俺はどうなってもいいんだ!友梨佳だけは」
「幸太……」
「ふざけんな。お前も友梨佳も、あの時笑っていただろ。笑いながら人を踏みつけにした」
前は神からコンタクトがあったけど、俺からコンタクト取れるんだろうか。半神だしいけんのかなー?
「だから殺すのか?命を奪われるほどの事は……」
「してない。だから?俺は恨みを晴らしたいだけだ。どうなれば晴れるか、それは……」
「長えよっ!人が間を保たせてやってんだから、さっさと戦わんかいっ!」
な~にをポカンとしとるんだ。アホか!オードブルで満腹にさせる気か!戦闘がメインだろ!殺しがメインディッシュだろ!戦わんかいっ!
「確かにそうだ。殺しの弁明なんか必要ないよな」
「どうしても、か」
『
『
銃と剣。傍目から見れば銃が圧倒的に優勢だ。だーけーど、コイツらは転生者。チーターだ。剣が銃に負けるか?ノンノンノンシュガー。チーター相手はそんな甘くないぜ!
『
こうた君は、脇構えでホール中央へ突進した。部屋から飛び出し、銃で狙いすましていた青頭へ刃を振るう。
部屋から青頭までの距離は15歩程度。一瞬で間合いが縮まると、照明を反射した名刀が一閃。
ギィィィン。
鼻先へ迫った鋒が見えない壁に阻まれた。青頭の自動防御が作動したようだ。
攻撃を防いだものの、あまりの速さに驚いたのか、
青頭は蹌踉めいた。その動作が呼び水となり、直上からの剣閃を許す。
ギィィィン。
完璧なタイミング、完璧な剣筋だった。だが無情にも、弾かれる。
こうた君は不愉快さを眉間に表して、軽やかに距離を取った。俺や魔族たちにも警戒を払っている。場の様相は一対多の構図で、俺たちが背後に立つことを嫌ったようだ。
茶々入れるなんて無粋な真似、しないってのに。
『セット
距離を取り、敢えて剣の間合いから外れたのだ。自動防御を破る術を思索し、俺や魔族たちの様子を窺う。仕方のない一手だ。
しかし、青頭に利する一手でもある。
斬るには近づく必要があり、近づくには脚を動かさなければならない。攻撃に手数が増え、時間が掛かる。銃ならトリガーを引くだけで攻撃が完了してしまうのだから、一方的に不利な状況へと傾いたのだ。
ドォォォン!
中段に構え、次のプランを練ろうか。そんな僅かな隙もなく、轟音の弾丸はこうた君の眉間に接近した。
直後、音叉をガラスに当てたような音とベニヤ板を突き破るような、ミシリとした音がホールに響いた。
こうた君は微動だにせず、剣が細かに振動している。
彼の向こうに見える2枚の扉。そこに大穴が空き、降伏のつもりか、独りでにパタパタと開閉している。
弾丸を斬った――――。
映画、漫画、アニメ。そんな世界の絵空事をやってのけたのだ。これがチートの戦い。
当の本人に、得意げな表情はない。さも当たり前とでも言うように、青頭を睨みつけている。
『
『
再びトリガーを引く青頭。
対するこうた君が正面で刀を一周させると、刀の残像が華のように開いた。
弾丸は急上昇すると天井スレスレで方向を変え、こうた君の脳天へと迫った。
刀で描いた華の盾が少しだけ上向きに方向を変えると、キィンと弾丸を弾き、天井に大きな孔が空いた。
『
扇を閉じるように華が蕾となり、身を低く構えた。刀身に左手を添えて、焦点を絞り込む。
前傾姿勢になったと思えば、それは残像だった。
キィィィン――――。
青頭の目前、喉元に突き立てられた刃。既に攻撃が始まっていたのだ。
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