第28話雑味のある都会へ
中世か近世かよく分からん、エセヨーロッパの田舎町で、科学技術を凌駕してしまい、伏してお詫び申し上げたい。床をペロペロしながらしず○ちゃんのパンツをチラ見しつつ謝罪したい。
なーんだ、どこで○ドアに負けてるじゃんと思った、そこのあなた!キャベツの千切りは一旦止めて、私のお話を1分だけ聞いてください。
見たことがあるとは、目で知るということ。
目で知るとは、絵を見る、写真を見る、地図を見る、望遠鏡で見る、ということ。
裸眼で場所を捉えて、脳みそに焼き付けるなんて昭和みたいな事、しなくていいんですっ!
奥さん、日々の家事大変でしょう?たまにはゆっくり、羽根を伸ばしたいわーなんて思っていらっしゃるでしょう?
二泊三日の温泉旅!なんて雑誌をパラパラと眺めて、甲斐性のない旦那に溜め息をついているんでしょう?
その温泉宿、どこにあるか知ってます?住所が載っていますね?ググれますね?もしかしたら地図付きですか?
さあ今です!
せーのっ、
やって来ました王都。
石積みの家、元気の良い商人、やたら多い果物屋に、武器を持った輩。雑多でまとまりのない、町並み。遠ーくの方に見えるでっけえ城。日本の城とは大違いで、まあディズ○ーみたいな城だ。
首輪をつけてボロ布を纏った、オナゴやオノコ。SMプレイ中だろうか、後ろではエロそうなハゲ親父が鞭でビシビシしごいている。楽しんでますねー。
ほお。これが噂のエルフか。
耳が長い、けど……。
耳が長いアングロサクソンだな。耳が長いパツキンだ。普通に不細工もいるし、エルフが美形ってのは嘘だわ。
おお、こっちには蜥蜴人間がいる。リザードマンというやつだろうか。でっけえ蜥蜴だあ、皮膚がゴーヤみたいだあ。何かキモいなあ、ゴメンなゴー○マン。
「標様、直接王城に転移しては如何ですか?」
「ノンノンノンフィクション。歩いていこうぜ」
「年寄りにはキツイですな〜」
「バーロー。これはれっきとした敵状視察だよ」
「ほう?」
「あれ見ろ」
笑顔の眩しい青年が、年増のおばさんに金を払っている。年増のババア、テラテラでパツパツのカクテルドレスのババア。
俺の目が曇っているだけだろうか、いや曇っていない。新聞紙で拭いた窓ガラスぐらいクリアだ。
あの青年、熟女好きだな――――。
「あれが、なんですか?」
「いや何でもない。その横だ、見てみろ」
「物乞いがたむろしているだけでは?」
「コンビニ前のヤンキーぐらい、至る所にいるだろ?」
「コン……はい」
「それだけ貧乏なんだろうよ。それだけ仕事がないんだろうよ。つまり?」
「つまり……?」
「政治がクソなんだよ」
「なるほど。して標様」
「なんじゃい」
「これから転生者を殺すのとなんの関係があるのですか?」
「それはだな……」
そもそも、転生者を呼んだのは誰か。勝手に転生してきたとか?ないな。クラス全員が一箇所に集まって、尚且つ、魔王・魔族殺しという任務を背負っている。
洗脳教育を施され、シンナーを吸いまくったぐらいトロトロした目になったアイツらは、意図して召喚され、徹底的に仕込まれた。
事前準備あっての賜物だろう。
いきなり出てきてゴーメーン!の転生者共に、魔族はゴミで魔王はヤバ杉内とか説いても、暴れられるだけだろう。
ちゃーんと、ご褒美を用意して、ちゃーんと良い思いをさせてコントロールしている。
首魁は誰か。
王様だろ。でも王様は死にかけ10秒前らしい。つまりマリアーネちゃんが悪者。
よってあやつはシメる。
どうするのか、簡単だ。
不満の溜まった市民。その上に立つ王族。
単純にどうなるのか見てみたいという本音はあるが、実際のところ殺したくはない。だって子供だし、政治も未経験だろ?そこまで恨んじゃあいない。
でも知りたい。王族がどんなもんかってのを。
クソみたいな政治を続ける王族に恨みをぶつけますか?それとも我慢して頭を下げますか?
社会実験とでもいおうか、リアルな市民のリアクションを見たいのさ。俺のジャーナリズム精神が疼くぜ。
「城に行ったらマリアーネとかいう女もシメるだろ?」
「ええ」
「ここに連れてこようぜ」
「ほお」
「きっと民思いのいい王女様だろうから、連れてきてやろう。民は奴隷だ!みたいなクズだったら、それはそれで興が乗る」
「悪魔のようなお考えですな標様」
「えぇ~、それ悪い意味?」
「楽しみで仕方がない、という意味でございます」
そうだろう?そうだろう?いい笑顔だぜジジイ。
にしても、辛気臭い顔してんなあ青頭は。何が不満なんだよ。
「笑えバカ」
「なんだよいきなり」
「ブスッとするな。笑え」
「フレデリカがこんな目にあって笑っていられるか」
「ったく、いつまでもウジウジと……」
トマト投げ合い祭りだと勘違いした市民が、フレデリカを狙ってトマトを全力投球したのだ。幸い、フレデリカは後ろの方にいたから俺は無事だった。
後ろの方ってのは魔族全員の後ろって事だ。そう、村人総出で都会へやってきたのさっ!
可哀想に、勘違い君は青頭にボコられていた。トマトをぶつけられた訳でもないのに、全身が赤くなっていた。トマトジュースでも被ったんだなきっと。
「目をどうにかさせろよ。赤いからトマトと勘違いしたんだろ」
「トマト?何を言ってる。魔族だからに決まってるだろ」
「だから隠せって。チ○コ丸出しで歩いてたら、オ○ホを投げられましたって警察に言うか?普通、言わな……」
「言えねえだろ!公然わいせつだろ!つーか例えが、むちゃくちゃだろ!オ○ホぶん投げる輩がいんのかよ!違うわ、チ○コからしまえ!」
「下ネタはいいから、目の色を変えろって」
「ちっ、できないんだよ。変身は苦手らしい」
「――――はあ」
苦手って……。
努力しなよー。カラコン入れた?可愛いは作れるって知らないのかなー?
魔族みんな詐欺メイク得意だからね?骨格から変えるから。レベチだから。
フレデリカちゃんはできないんだねー。やっぱり、魔族じゃないねー。
ホント我儘で協調性の無い子ねー。
「ふんっ。ユウキが守ってくれるから隠す必要なんてないもんっ」
――――――――――――――――――――――あっそ。
このお子様はほーんとカワイイざんしょ?少しツンケンしてるざますけど、そこがまた愛らしいざんしょ?ユウキ君が大好きなんざますって。背伸びしちゃってこの子はねえ。
ユウキ君がいなくなったらどうするざんしょ。一人で頑張るざんしょか?目の色も隠せないへっぽこざますのに。そうざます!これも試すざます!
ざんしょ残暑ざんしょ。ざんしょ竄書ざんしょ。
お前もざんしょ、青頭もざんしょ。み〜んなざんしょ。
頭の中でざんしょ音頭を繰り返しながら、ガキへの怒りを堪えた。マジでコイツは叩き殺す。魔族にあるまじき腑抜け具合だ。復讐の影すら見えないフニャチンだ。女の子だけど。いや女の子だからこそ?まあなんでもいいや。
おいおい、人が話してるときに何してんだハゲ。空中を指で弄るな。親指と人差指でナニを開いてんだよ。ド変態に思われるだろうが!
「おいハゲ」
「フサフサだろ」
「下ネタ大好きかよ。そういう年なのは分かるけどさ、場所を考えようぜー」
「勘違いも甚だしいな。地図を見てたんだよ」
「地図?てっきり――――――を――――――する練習でも……」
「やめろっ!フレデリカに聞こえるだろ!」
「ん?――――――って何?」
「あ、ああーあれだよ。果物だよー」
最低だなコイツ。農家の方々が汗水垂らして必死に作ってる瑞々しい果物を下ネタに昇華しやがった。
コイツは下衆だ。初対面の時から思ってた。風俗街を乙女連れで歩くその精神性、ゲスの極みだ。ロマンスもへったくれもない。
「おい変態」
「いい加減名前を呼べ!」
「戦いのとき指を動かしてなかったろ?あれはどうやった」
「ああ、あれは音声認識だ。言葉にすれば自動で作動してくれる」
「ほえー」
にしても遠いな王城。やっぱ瞬間移動しようかな。
※※※
コウタという転生者が幽閉された。マリアーネ殿下は庇い立てしていたが、彼女一人ではどうにもならない。
法律があるからだ。
その法律は元老院が制定し、この国全土へ発布する。市民という奴隷を殺さない程度に作られた法律は、日毎に新しくなっていく。
あまり欲張るとこちらが立たず、遠慮しすぎるとあちらが立たず。だから適度に巧みに懐を温める。その塩梅はしっかりと心得ているようで、甘い蜜を吸い上げるのが上手だ。
市民から搾取する法は殿下でも王でも覆せない。それほど元老院は強いのだ。
王族といえども、絶対的な権力があるわけではない。封建制を維持しているこの国にとって、実質的な支配者は元老院なのだ。各領主の代官、または弁務官が元老院議員となり、この国の政体は作られる。
王族は、直轄領を持つ1貴族でしかない。そして今、地方領主よりも地位が低下している。国王が病に伏せ、代理となった殿下の力がそのまま反映されているのだ。
つまり、元老院を押さえればこの国は瓦解する。
ベチャベチャとくぐもった水音が、執務室に染み入る。
書類を広げた机の上には、私の部下ソルティドッグが腰掛けて、議員の頭を両手で優しく包んでいる。
発情期の獣のように、息も荒く血走る目。たらーっと、顎髭から艶のある水が滴る。
「ぶはあ!ああー、臭っ!おえええ」
「はあはあはあ、も、もう一度」
「黙れ」
「は、はひっ!」
手の平に作り出した水でうがいをすると、議員の顔に吹きかけた。まだ口元をが気になるようで、鼻から顎まで濯ぐと、手の平に浮かぶ
元老院でかなり力を持つこの男。小娘に屈辱を与えられても、とろりとした表情だ。
「姉さん、ペロペロしてぇー」
「やーよ。汚い」
「サイテー。サイテーだよぉ」
「さて、仕事は終わりだね。そろそろ標様が御出になる頃合いじゃないかい?」
「んん~、標様が……」
「なんだい、嫌だってのかい?」
「だってさ〜魔力がスゴくて…」
「はあ、まったく」
標様の魔力は魔族の糧になる。それに私達に近い魔力をお持ちだから、とても心地よく魔力を頂いている。飢えることもなく、これ以上受け止めきれない程の魔力だ。
私達の感覚も、幾分か狂ってきた。
初めはディキだった。
暗いあの男が、部下に手を出したと聞いたときは驚いた。女の影が無いとは思っていたけど、まさかあんな少年に。
他人の趣味に口を出す気はない。ただ意外だっただけだ。それからモヒートも族長夫妻の娘、マルガリータと番になったようだし、村が発情期に入ったみたいに、番を求め始めた。
今までにない現象の説明をするなら、今までにない人物の影響だと考えた方が理屈が通る。
標様だ。
ソルティドッグも、昔はこんな顔をしなかったのに。標様がいらしてから、こんなに……。
小さな顎に手を当てて、潤む瞳を見つめる。苦しそうだ。頬に滑らせた手が熱烈な情念を感じ取る。唇がこんなに乾いてしまっている。洗い過ぎたのだろう。
小さな切れ間から漏れる熱い吐息が、私を呼んでいる。潤してあげないと。この子も頑張ってくれたのだから。
「バイアさまぁ……」
ペロリと舌を這わせる。
とても熱い。唇で舌が火傷しそうなぐらいに熱い。火照った体が、水分を逃しているのかもしれない。それならもっと与えないと……。
「ふ……んぐっ」
「バイア様っ!」
「ふぁっ!?」
ビックリした!
床から上半身だけ飛び出た人間が、険しい顔で私達を見ている。
ちっ、ディキの手下か。クソッ、絶対チクられる。最悪だ、アイツにだけは知られたくなかったのに。
「ディキ様より伝言です。レズる前に働けバカ、だそうでございます」
「――――なんで知ってんだい、クソッ。ディキに伝えな、ホモる前に働けってね」
「それについての返答がございます。お前より働いてるわバカ。でございます」
「ぐっ、マジであのボケ!寝不足でくたばれ!」
「それについての返答が……」
「いらん!他に用がないなら消えなっ!」
「最後に一つだけございます」
「なんだい」
「標様を迎える準備をせよと」
「ご到着は何時なんだい」
「現在、城下を散策中でございます。そろそろかと」
「ソルティドッグ、マリアーネに気取られないよう、豚どもを一箇所に集めな」
「はぁーい」
「アンタも消えな。標様がお着きになるまでは転生者なんだからね」
「はっ」
やっと殺せる。ゴミ共をこの手で。
いや、標様がお殺りになるか。それでも構わない。
標様がただ殺すはずはないもの。あれ程苛烈な趣味をお持ちなのだから、きっと私たちも満足できる演目となるでしょうね。
「バイアさまぁ〜」
「早く行きな。続きは後だよ」
「はぁい!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます