六、俺は幸運、あなたは強運。
「いやあぁあっ! また増えたっ」
「だから、ちょっと待てくださいと言ってるんです。本体、つまり核をなんとかしない限り、無限に湧いて出てくる類の妖でしょう。それよりも、私たちは
解っていたから、あえて
「ねえ! 私たち、人食い蝶の怪異を調査しに来たのよね!? それがなんで巨大
しかし、何度やろうと同じことで、その度に湧いて来るのでキリがなかった。
「どちらも噂の域を出ていなかったことに、今回の件の真相があると考えるのが妥当でしょう」
確か自分たちとは別に、
ここは南の地。
「魂が蝶となって天に還るという、この地特有の現象を利用して、人食い蝶の噂を流し、私たちを誘き寄せるのが目的だとしたら?」
「そんなことして、なんの得が?」
怪訝そうに
「それを証明するには材料が足りない。今後、同じような事が起これば別ですが」
「考えても無駄ってことね! なら答えは単純よ」
炎を放ち、火の粉がちかちかと舞う中で、
「出る杭は打つ!」
がくっと
それを言うほんの少し前のその美しい姿に、一瞬でも見惚れてしまった自分を消してやりたい。
「
「
その法力が半減しようが、余命が数年しかなかろうが、
(あとは、お任せしましたよ、
******
自分たちが
地仙が持つには相応しくない、その手の中の美しい宝剣も。
「ねえ、あなたって本当は何者?」
「私は、ただの地仙ですよ」
困ったように笑って、手に持つ宝剣で向ってくる巨大
宝剣に、
そうえいば、弁財天が何の気なく口にし、それから訂正した言葉を思い出す。どうしてずっと忘れていたのだろう。
「
そのひと言に、
「······それ、は、」
手を止め、足を止め、
その瞬間、巨大
「ごめんなさい。あなたを困らせて。もう、問うのは止める。いつかあなたが話したくなったら、俺にも教えて?」
「······私のような者は、君に守られる価値もない」
ちくちく。
痛むのに、言葉が止まらない。
「だから、ずっと、ひとりが良かったんです。他の誰かが私のために傷付くのは、絶対に嫌なんです」
ずきずき。
心が、悲鳴を上げる。
「········ずっとひとりで、生きて、」
あの出遭いは、偶然だったけれど。
「でも君が、」
あんなことを言うから。
「君といると····なんだかいつも楽しくて。愚か者の私は、すっかり忘れていたんです」
幸せなど、ほど遠い。
その罪は消えない。
すべて自分が齎した結果だから。
「これが解決したら········、」
「そんな顔をしてるあなたを、ひとりになんてできるわけない」
暗い気持ちが視界を覆い、俯いていた
「言ったでしょ? あなたについて行く。あなたは俺の大切な、唯一無二のひとだから」
言い終えたその瞬間、
「あなたが嫌だって言っても、地の底までついて行く。それくらいの気持ちで、俺はあなたの傍にいるつもりだよ?」
必要ない、と言われようと、間に合ってます、と断られようと。
「私は君を······不幸にするかもしれません」
「俺は幸運、あなたは強運。そもそも不運とは無縁な星の下に生まれてる。黒竜サマとの出来事も、あなたと出会うための縁だったのかも。そう考えたら、とても幸運なことだったし、なにより俺は、誰よりもあなたと相性がいいと思うけど?」
言って、悪戯っぽく笑う
「········君って子は、本当に、」
くすくすと
「行きましょう。核はすぐそこです」
「うん、さっさとこんなの終わらせて、また旅の続きをしよう?」
それから、たくさん楽しい話をして、あなたを笑わせてあげる。
あなたがまた、あんな顔をしないように。
ふたりだけの、旅の続きを。
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