第二章
一、私に任せてください!
四竜のひとり、
藍色の衣を纏った、緑がかった青色の瞳が特徴的な青年の姿の分身で、薄茶色の髪の毛を頭の天辺で銀の環で括り、そのまま背中に垂らしている。
「ふふ。連れて来ちゃった♪」
「······
「だって、
その腕に抱えられている当の本人は、全く理解していないという顔で、こちらに助けを求めているようだが?
「だったらせめてちゃんと説明をしてあげた上で、同行してもらうのが道理では?」
こくこくと
きっと大した説明もされないで、「一緒に来て!」と勢いで連れて来られたのだろう。ご愁傷様としか言えない。
「
騒がしい広間の奥から姿を現したは、
三十代くらいの青年の姿を模しているため、この中では一番年上に見える。実際そうであるが、分身は年齢に比例しないのでわかりづらい。
白を基調とした上質な長い衣の裾や袖は、金の糸で描かれた波のような模様で飾られている。その優し気な瞳は灰色で、長い黒髪は頭の天辺でひとつに纏め、黒い環で留めていた。
「
「
ふふ、と
「ここに来るのは、
「ああ。まさかここを去った後にそんなことが起こっていたとはな。例の件の報告を聞いていないが、問題なかったか?」
「あ······はい、その件はやはり勘違いだったようで。すぐに行ってみましたが、なにもありませんでした」
「天帝からの直々の依頼だったんだが、そういうこともあるだろう」
拝礼が終わった後も跪いて頭を下げていた
ただ、
(例の件って······なんだろう)
だがそれよりも、
自分に対しては、笑っていてもどこか一線を引いているような、そんな態度をとることが多いのだ。
「それで、
「地上で、人食い蝶の噂を聞いた事があるかい?」
「いえ······怪異ですか? それとも妖の類?」
長く地上に留まっているが、
「南の地で起こっている怪異のため、
「そうだったんですね。わかりました。被害がこれ以上広がらないように、すぐにでも向かいます」
(ちょっと待って。ただでさえ呪いのせいで法力が通常の半分しかないっていうのに、そんな危険な所に行くつもりなの?)
喉元まで出かかったその疑問を、なんとか呑み込む。無言で困惑している
「大丈夫ですよ?
どうやらまったく解っていない
私に任せてください! という素振りで胸をばんと叩いて、美しい顔にきりっとした表情を浮かべている。それはそれで可愛いのだが······。
「ちょっと、そこの下僕くん!
「
こら、と子供を𠮟るように
「なによ。その子の味方をするの? その子、
「だからといって、君の言い方は良くない。これから同行するなら尚更だ。彼のことは下僕なんて言わずに、ちゃんと名前で呼びなさい」
「まあまあ。ふたりとも、喧嘩はよくないです」
なんだか、こんなやりとりを数ヶ月前にもしたような気がする······と、
「
「······はぁい、」
「わかっています」
(ここんちの竜って、こんなひとたちばっかりなのかな、)
「すみません、
「なにを? 下僕ってやつ? 全然かまわない。俺は色んな意味であなたの下僕だよ、」
こそこそと
正直、どうでもいいことだった。
それよりも耳元でそう囁いた後、
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