二、知らぬ間に、巻き込まれていました。
七、八歳くらいの見た目の幼子の身なりは、お世辞にもこの宴には相応しいとは言えない、上から下まで薄汚れた漆黒の衣を纏っており、その黒髪も赤い瞳を隠すように前髪を垂らしていて、暗くて陰湿な印象を与える。
逆に
まるで月と闇のようなそのふたりを避けるように、大きな円ができていたのだった。
そうとは知らずに、
「
「申し訳ございません。
地面に跪き、
ふん、と
その後ろを慌てた様子で幼子が追う。ちらちらと
幼子はどうやら
足音が遠のいた後、
そんな
「まったく、なんなんだあのひとは。本当に上位の神なのか? 品がなさすぎる」
「
口々に彼女の悪口を言い出すので、
「私は大丈夫ですよ。ご心配には及びません」
「それにしても、あの言い方はないだろう。君は確かに天帝のお気に入りだが、調子になど乗っていないし、恥知らずでもない」
「私のために言って下さっているなら、もう十分ですよ。さあ、楽しい宴の席ですから、皆さんもどうぞ気を取り直して、」
言って、
はあ、と嘆息して、
神仙たちに囲まれ、静かに笑みを湛えているその者こそ、すべての女仙を支配する最上位の女神。この宴の主催である
「
「お久しぶりです。本日は宴に招いていただき、ありがとうございました」
「ふふ。皆、あなたの
なので、そんな彼女が
「表でひと悶着あったようだけれど、大丈夫だった? あのひとは誰にでもああいう感じだから、気にすることはないわ」
すでに耳に届いていたようで、お恥ずかしいと
「すみません。私がぼんやりしてたせいです。あの方は悪くありませんので、お気になさらず」
「あなたは、本当に穏やかで素敵な
「私などには、勿体ないお言葉です。
お互いを褒め合い、最近の近況などを語り合うと、
「あなたに話すようなことではないのだけれど、聞いてくれるかしら?」
座って頂戴、と椅子をすすめられ、
「彼女を退席させた理由は、耳に入っている?」
彼女、とは誰と問わずとも月神、
主宰である
自分の知らないところでそんなことが起こっていたとは、露知らず。
「それとは、別に、彼女が連れていた者にも問題があって、」
「あの幼子ですか? 赤い瞳の、」
「あれは
「とにかく、彼女はあなたの事が特に気に入らないみたいなの。なるべく関わらない方が身のためよ。それに······彼女は自分の目的のためなら、なんでもすると聞くわ。あの
それを聞き、
(······あの子は、そんなに悪いモノには思えなかったのですが、)
確かにあの血のように赤い瞳には驚いたが、大人しそうだった。なにより、荒々しく恐ろしい神にも思えなかったのだ。
(今度会ったら、少しでもいいから話をしてみましょう、)
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