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 このままだとタックが可哀想だ。本当は彼の分の護符を用意してあげられたら良いんだけど、それは難しそうだからなぁ。だからせめて声をかけて元気付けてあげないと。


 僕はミューリエに聞こえないようにタックの耳元で囁く。


「タック、元気を出して。きっとミューリエはタックの実力を認めているから、護符なんて要らないって思ったんだよ。でも照れくさいからそれを口に出せないだけ。少なくとも無意識のうちにそう認識しているのは確かだよ。そうじゃなきゃ出ないセリフでしょ?」


「そうかぁっ? オイラにはそう思えねぇけどな。単に嫌がらせしたいだけなんじゃね」


 タックはわざと大きな声で言った。当然、ミューリエは何事かとこちらの様子を訝しむ。


 ――まずいまずい! 僕がタックに耳打ちした内容がミューリエにバレたら、もっとややこしい事態になってしまう。


 ゆえに僕は激しく動揺しつつ、全身から吹き出る冷や汗に四苦八苦する。


「オイラはこの件から抜けさせてもらうぜ。ミューリエがひとりでなんとかするだろうからよ。んじゃ、先に宿へ行ってるから、またあとでな~」


「ちょっ!? ちょっと待ってよ、タックー!」


 タックは僕の制止を振り切って家を出て行ってしまった。そしてこれが彼の姿を見た最後の瞬間となったのだった。


 それはタックの身に何かが起きたということじゃない。いや、もしかしたら起きていたのかもしれないけど、確認することが出来なかったからそういう表現になったのだ。


 なぜなら、このあと僕とミューリエは恐ろしい事件に巻き込まれることになって……。



 BAD END 8-6

 

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