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 このままだとタックが可哀想だ。ここはミューリエを説得して、タックの分の護符も追加で買おう。ゲドラさんには二度手間を掛けてしまう形になって申し訳ないけど。


「ミューリエ、このままだとタックが可哀想だよ。タックの分の護符も買ってあげようよ」


「ほぅ? アレスはエルフの小僧の肩を持つというのか?」


 今までクールだったミューリエの眉がピクリと動き、声にもわずかに怒気が混じる。


 すかさず僕は首を横に振り、ミューリエの瞳を真っ直ぐ見つめながら言葉を続ける。


「そ、そういうことじゃなくて、本当はミューリエにも護符を持っていてほしいんだよ。だって万が一のことがあったら僕は悲しいもん。僕たちの誰が欠けても嫌なんだ。三人が揃っていないと僕は胸が苦しくて、旅が続けられなくなってしまうかもしれない」


「アレス……」


 ミューリエは少し驚いているみたいだった。それとなぜか口元がわずかに緩んでいたような気もする。僕の見間違いかもだけど。


 いずれにしても彼女が僕の言葉を好意的に受け取ってくれたのは確かだと思う。だって不機嫌さはすっかり消えている感じだから。


 直後、タックがニコニコしながら僕に抱きついてくる。


「さすがアレスだな。オイラ、嬉しいぜ。分かった、今回はその気持ちだけ受け取っておく。オイラの分の護符はいらねぇ」


「えっ? いいの?」


「まっ、なんとかなるだろ。さすがにヴァンパイアクラスの高位アンデッドが相手だと厄介だが、そもそも護符でなんとかなる程度の連中なら問題ないはずだ」


「……無理はしないでね?」


「おうっ!」


 タックは照れくさそうに微笑んだ。すっかり元気を取り戻してくれたみたい。


 まぁ、もしもの時は僕が全力でタックのサポートをするし、敵と戦う覚悟だってある。絶対に見捨てるもんか。だって僕たちは大切な仲間同士なんだから。


 もちろん、それはタックだけじゃなくてミューリエに対してもだけどね。三人で助け合って旅を続けていきたい。


 でもそんな僕の想いとは裏腹に、タックはミューリエの方を向いて舌を出す。


「ミューリエのバ~カ! 少しはアレスの優しさを見習えってんだ!」


「……ふん」


 ミューリエは相変わらずクールなまま、タックの言動をスルーしている。言い争いにならないだけマシかもしれないけど、このふたりの相性の悪さには困ったなぁ。


 なんでここまで反発し合うんだろう? やれやれ……。



 →102へ

https://kakuyomu.jp/works/16817330652935815684/episodes/16817330652939270955

 

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