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 このままでは旅がギスギスした状態になってしまいそうだし、僕としてはふたりに仲良くしてほしいから間に入ることにする。


 やっぱりパーティではお互いに協力し合うのが大事だもんね。特に魔族やモンスターとの戦いでは思いも寄らないピンチになることだってきっとある。ミューリエやタックがどれだけ強かったとしても。


 でもそういう時に連携が取れれば、1+1の力が2ではなくて5にも10にもなる。ううん、もっと大きな力を生んで奇跡さえ呼び寄せることが出来るはずなんだ。


 ……それに不謹慎って言われるかもしれないけど、そもそも僕は楽しく旅をしたい。苦しい戦いが待っているからこそ、そうでない時間は楽しく過ごしたい。


 だから僕は激しく火花を散らせているミューリエとタックの真ん中へ強引に入り込み、両手を伸ばしてふたりの距離を取らせる。


「ストーップッ! そんな些細なことで言い争いをしてどうするの? それなら僕がふたりの間を歩くよ。それでいいでしょ?」


 僕はすかさず左手でミューリエの右手を、右手でタックの左手を握った。そして有無を言わさずふたりを引っ張るようにして前を歩き始める。


 この行動にはさすがにふたりも目を丸くして戸惑っている。


 それから数歩ほど進んだあとのこと、ミューリエが不意に立ち止まった。僕が視線を向けると彼女はばつが悪そうな顔をしている。


「……アレス、すまなかった。私は頭に血が上ってしまっていたようだ。我ながら大人げなかった」


「っ!? あっ、うんっ! 分かってくれたのならいいんだよっ!!」


 さすがミューリエ、素直に言葉を聞き入れてくれたみたいで僕は嬉しくなる。


 すると直後、タックも指で頬を掻きながら大きく息をつく。


「オイラも悪かったぜ、アレス。ここはアレスの顔を立てて、矛を収めることにする」


「タック……。ありがとうっ! ところでさ、この場が収まったのならふたりとも僕の手を離してもらってもいいかな? 照れくさいし」


 すでに僕は手から力を抜いている。でも今やふたりがそれぞれ僕の手を握ったままなので、離そうにも離せない。それどころかさっきより力が強く入っていて、握り潰されそうな気さえする。


 ちょっと戸惑うというか、痛いくらいなんだけど……。


「ふふっ、良いではないか、アレス。照れくさいと言ってもこんな山の中、誰が見ているわけでもないのだし。それに私は左手だけでも大抵のモンスターには負けん」


「オイラも結界魔法や防御魔法でアレスを守るには、近くにいる方が都合いいしな~☆」


「っ!」


「……っ……」


 ミューリエとタックは僕を間に挟んだまま、目を合わせてニッコリと微笑んだ。


 ……あれ、おかしいな。ふたりともいい笑顔なのに空気がピリピリとしているのはなぜだろう?


「エルフの小僧、アレスのことは私に任せておけ♪ だから貴様はアレスから離れて良いぞっ?」


「その言葉、そっくりそのままミューリエに返すぜ~?」


 …………。


 ミューリエとタックが仲直りをしてくれたのはいいけど、ふたりともそれとは別の形で対抗意識を燃やしているような気がする。


 なんだか先が思いやられそうな予感もするけど、きっと大丈夫……だよね……?


 僕はちょっぴり不安を抱きつつも、そのまま街道を進むのだった。



 →53へ

https://kakuyomu.jp/works/16817330652935815684/episodes/16817330652938268935

 

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