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 僕は干し肉と干しキノコの両方を同時にもらうことにした。やっぱり順番を付けちゃうとトラブルの元になりそうだから。


 ただ、どちらも乾燥した食べ物だから、食べやすくするためにハーブティーを一緒に啜ろう。


 ――というわけで、僕はミューリエとタックから干し肉と干しキノコの両方を受け取り、ミューリエには水出しのハーブティーを淹れてもらった。目の前にはカップに入った萌葱色のハーブティー、そして干し肉を巻いた干しキノコがある。


「お、おい、アレス。一緒に食べるのはいいけど、味は大丈夫なのか? オイラは合わなそうというか、不味いんじゃないかって気がするけど……。やっぱり別々に食べたらどうだ?」


 顔をしかめて僕を見ているタック。ミューリエも表向きはクールだけど、抵抗を感じているような雰囲気がある。


 でも僕にとっては『どちらを先に食べるか?』ということで揉める方がなによりも。だからこれでいいんだ!


「それじゃ、いただきまーす!」


 僕は『干し肉巻きキノコ』を手で掴み、そのままかぶりつく。感触はやっぱりちょっと硬くてパサパサしているけど、噛み切れないほどじゃない。歯の弱い人は大変かもしれないけど。


 そのまままずは口の中で咀嚼して、味を楽しむ。


「――って、えっ!?」


 僕は驚いて、思わず声を上げてしまった。


 飲み込む前だからまだ口の中に食べ物が入っていて行儀が悪いけど、それを忘れてしまうくらいの衝撃と驚きが僕の心を鷲掴みにする。


 だって肉の風味と塩味が一気に広がって、さらにキノコから良い香りが膨らんできているから。それに表現が難しいけど、今までに体験したことのない『美味しい味』が舌の上に感じられる。噛めば噛むほどそれは増していって、唾液が止まらない。


 なにこれっ!? こんなの初めての快感!


 僕は夢中で咀嚼を続け、味を楽しんだ。そして名残惜しく感じつつも、最後はハーブティーを啜って口の中を潤す。


 ここで再びの驚き――!


 今までに何度か飲んだことがあるハーブティーなのに、今が一番美味しく感じられる。香りはそんなに変わらないと思うけど、口の中に伝わる味は『肉巻きキノコ』の美味しさをいつまでも残し続けている。それなのにサッパリとしていて爽快だ。


「美味しいっ! こんなに美味しいものを僕は食べたことがないっ!」


 もしかしてと思い、次に僕は『肉巻きキノコ』を口の中に残したままハーブティーを啜って、それから咀嚼してみることにした。


 するとその予想は見事に的中! 最高の味が引き出される!


「ミューリエもタックも食べてみなよ! 本当に美味しいからさ!」


 眉を曇らせ、顔を見合わせるミューリエとタック。でも僕の反応を見たり、強く勧める様子に根負けしたりしたのか、ついにはふたりも『肉巻きキノコ』とハーブティーを口に運ぶ。


「っ!? おぉ、確かにこれは美味いな。不思議な味だがクセになる者が出てもおかしくはない。私の個人的な感想としては、干しキノコは不要のような気がするがな」


「確かにこりゃ美味いぜ! それぞれの味が相乗効果で美味さを強めてる。調薬する際にも原料の組み合わせによって特定の効用を引き出すという手法があるが、それと似てるかもな。まー、今回に限ってはオイラとしては干し肉なんて不要だとは思うが」


 ミューリエとタックも美味しさに目を丸くしているようだった。もちろん、それぞれ相手の持っていた食べ物をサラッと貶すのを忘れてないけど。


 そんなふたりに対し、僕は大きく首を横に振る。


「違うよ、これは3つを一緒に食べるからこれだけの美味しさになってるんだよ。僕たちと同じ。3人が一緒に力を合わせれば、個々の力を別々に発揮するよりも何倍も大きな力になる。だからもっと仲良くしよう、ねっ?」


 満面の笑みで問いかけると、ミューリエとタックは困ったような顔をしつつも最後は頬を緩めながら頷いてくれた。今までにない穏やかな空気がその場を包み込む。


 なんだか3人で旅を始めてから初めて心がひとつになったというような気がする。



 ――うん、こういう雰囲気って良いな。でも力の相乗効果を最大限に発揮するには、それぞれの力のバランスが取れてこそだとも思う。


 だから僕もふたりに追いつけるくらいにもっと強くならなきゃ。この時、僕はそんなことを感じた。



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https://kakuyomu.jp/works/16817330652935815684/episodes/16817330652938031105

 

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