質問と神格
【また何よ? 私は無駄な時間の無駄が嫌いよ】
「ちょっとでいいんです。この質問に答えてくれるなら、これ以上何も聞かずに貴方の方針に従います」
【……言ってみて。でも望む答えをしてくれると期待しないで】
アルカは真剣な表情で私を睨みつけた。
こいつがあんな目をするのは珍しいことではあるね。露骨な敵にしか向かない目だから。
それを私に放っているというだけでも私のことをどう思っているかは大体分かるけど、別に構わない。あいつの好意なんか要らないから。
まぁ、もともとそう思ったんじゃなくて今日のことのせいでああしてるんだろうけど。
「……ジェリアお姉さんが言ったことがありました」
……いや、ちょっと待って。
「貴方と友達の修飾語が私たちと関連があるようだって」
アルカの眼差しは依然として強かった。でもそこに内包された感情の性質がさっきとは少し変わった。
根本は同じだ。私のことが嫌いだということ。しかし嫌がる理由が変わったような気がした。
さっきまでは私の態度、特にテリアについて話すのが気に入らなかったという感じだった。でも今は……。
「貴方たちの正体は何ですか? 私たちと……私と攻略対象者たちとどんな関係なんですか?」
【面白い推測というのは認める】
顔が勝手に微笑みを描いた。
もちろん喜びなどではない。あくまでも嘲笑であるだけ。声を出さなかったのでアルカは私があざ笑っていることさえ知らないだろうけど。
あんな推測が出かねないということは予想した。むしろジェリアがあんな話を切り出したことさえも当初予想していたことに比べればはるかに遅れた。バカだと笑いたくなるほど。
もちろん、そのような推測を予想したからといって答えが肯定だという意味ではない。
【私と私たちの正体が何なのか話してみても意味もないし意義もない。でもその推測がたわごとだということだけは言える】
「何の関係もないということですか?」
【もう何も聞かないと言わなかった?】
一応けんつくを食わされた。
でもまぁ、こいつがこうなるということはすでに予想した。そして特に答えられない理由もないので、この程度は話してもいいだろう。訳もなく疑問だけを残してこいつが集中できなければ私としてもイライラするから。
【そっちの世界の住民たちによく知られてはいないけど、そこにも輪廻の概念はあるよ。死者の魂は世界を循環しながらいつか生まれ変わることになる。そして生まれ変わった魂の特性はそのまま続くことになる】
「私たちと貴方たちがその輪廻ということで結ばれた存在ということですか? でも私たちと貴方たちは同時に存在しているんでしょう。それに貴方たちは邪毒神だし」
ふーん。少なくとも当然の疑問を提起するほどの知能はあるね。褒められることでもないけど。
私は右手を上げた。手のひらから流れ出た魔力が立体映像を描き出した。丸い光の輪の横に輪と似た大きさの大きな光の塊が浮かんでいる姿だった。
私は光の塊から小さな光が輪に入るように魔力を操作した。
【命が神に昇天するとその魂はとても肥大化する。人間だった時代の魂を切り離して輪廻の輪に戻しても自分の存在に何の影響もないほどにね】
「貴方がどうしてそれを知っているんですか?」
【貴方たちの五大神もそんな奴らだから。私もそうだし】
アルカは驚いたように目を丸くした。
五大神――テリアの旅程にはあまり重要でない概念なので話題になることもあまりなかったけど、一言で言えば彼女らの世界の正規の神である。
邪毒神とは違い、世界に認められ世界を管理する神。世界の数々の法則を司る根幹のような存在。
バルメリア王国は宗教色が弱い国なので、五大神と関連した宗教もそれほど大きな比重はない。でも他の国の中には君主が宗教の首長である所もある。
「五大神は太古の時代から存在した神格じゃなかったんですか?」
【太古の存在は合ってる。しかしもともとは力と法則の塊に過ぎなかったし、昇天した人間の魂が太古の五大神と結合して今の形になったそう。まぁ、その辺は私も聞いた話に過ぎないから詳しいことは知らない】
アルカは口を閉じてしばらく考え込んでいた。そうしてすぐ眉をひそめて、また視線を上げて私を見た。
「貴方たちももともとはこの世界の人間だったということですか? だから私たちとキーワードが重なるんですって?」
【……特別サービスとしておこうか。一応はそうよ。はるか昔のことだけど】
「でもキーワードがこんなにぴったり重なるのは偶然がすぎるんですよ」
思わずプッと笑い声がこぼれてしまった。
【そもそも貴方と攻略対象者たち全員が五人の勇者の生まれ変わりだよ? もともとそっちの世界で五人の勇者の魂は重要な時期ごとに世の中に現れる存在たちなんだ。貴方たちには分からないけど、特性なんか重なってもおかしくない奴らだということ】
アルカは眉間にしわを寄せながら首をかしげた。
「数が合わないじゃないですか。始祖オステノヴァ様の特性は私とお姉様が分けて継承したそうですけど、それを含めても五人の勇者の特性は六つですよ。でも私とお姉様と攻略対象者は全部で七人なんでしょう」
【五人の勇者も七つだよ。オステノヴァだけでなくアルケンノヴァも特性を二つ持っていたから】
話はそろそろ終わりにしようか。
私は手を強く一度叩いた。
【さあ、無駄なサービスタイムはこれでおしまい】
「でもまだ気になるのが……」
【そもそも答えてくれればもう聞かないと言ったのは貴方じゃない。そう言ったくせに次々と出てきた疑問に誠実に答えてくれたからもういいでしょ。なのにもっと望んでるの?】
アルカはぬぅっとうめき声を上げた。まぁ、役に立たないバカではあるけど良心はあるから私の言うことを否定しないだろう。
納得はいかなくてもいったん受け入れた様子のアルカに向かって、私は躊躇なく魔力を放った。
【さあ、始めるよ。貴方の深淵を引き出してみよう】
―――――
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