一つ目の制圧
「はあっ!」
短い気合と共にトリアの一撃を弾き出した。
「くっ……!」
防御そのものは成功した。けれど一撃があまりにも重たくて強くて腕がしびれた。その上、腕が噴き出す巨大な炎風まで完全に弾くことはできなかった。
【――――!】
トリアは先ほどイシリンの魔力砲にやられて消滅した蛇を変化させた。飛ばされた頭の代わりに先が尖っていて硬い触手が踊った。同時に巨大な異形の腕に莫大な炎風が圧縮され、歪んだ獅子頭が巨大な炎風の獅子に変わって周辺を覆った。
だんだん融合した魔物の因子を活用している。その上、魔力の出力もさらに強くなっている。少しずつ融合が進んでるのだ。
もっと遅れる前にトリアを制圧しなきゃ。
――天空流奥義〈五行陣・金〉
トリアのあらゆる動きを予知し対応する。同時に自分自身にできる限り最善を超えた最高を見つけ出す。
トリアはジェリアが暴走した時以上の威力を物理と炎風の両方で発揮していたけれど、私はそのすべてを避けて弾いて受け流した。もちろん私一人だけの力ではない。アルカの矢が腕の軌道を外れ、ロベルの幻影が照準を合わさなくし、ジェフィスの速度が絶えず彼女を妨害した。
私たちがトリアを完全に制圧する必要はない。時間。時間さえ延ばせるなら――。
[終わったよ。準備しなさい、テリア]
――来た。
その連絡を受けた直後、私たち全員の動きが変わった。
「イシリン!」
――第七世界魔法〈赤天の光格子〉
イシリンの魔法が強力な魔力の監獄を作った。今のトリアの力でも簡単に壊せない監獄だった。
もちろん時間があれば壊せるだろう。だからその時間を与えない。
――テリア式天空流終結奥義〈真 太極〉
自ら監獄に飛び込み、今日二度目の最強技を。
「くっ……はああぁぁあッ!」
限界を超えた奥義を二度も使うため、腕が壊れそう。いや、実際に骨と筋肉の一部が壊れていた。
それでも崩れゆく体を〈五行陣・金〉の力と魔力で無理やり支え、相克である二つの力が融合した最強の奥義を維持した。
でもトリアはやっぱりすごかった。
【――――!】
――トリア式極拳流奥義〈二紋融陳〉
二つの魔力紋が共鳴増幅され私の〈真 太極〉に正面から対抗した。
今日二回目の対決。けれどその様相は最初の時とは違っていた。
トリアは融合が進むにつれてさらに強くなった。そして私はどうせ今のトリアを殺せないということを知っているので、私自身を壊してでも殺すという覚悟で押し通した。
いくらラスボス化したトリアでもこの状態で動くことはできない。
[よくやった]
――オステノヴァ魔道兵団式軍勢術式〈悪しき獣を殺す鎖〉
空に空間の門が開かれた瞬間、私は〈真 太極〉の制御をやめて魔力全部を放出した。
邪毒獣さえ致命傷を負う魔力放出だけれど、今のトリアにはただしばらく動けない牽制程度。けれど私の目的はその牽制であると同時に、反動で遠く離れることだ。
そしてトリアがしばらく足止めされた隙に、空間の門から魔力の鎖が浴びせられた。
大人数と強力な魔道具が必要な軍勢術式。その中でも邪毒獣を拘束して殺すためのものだ。それがトリアの全身を束縛した。
でもラスボスとは邪毒獣なんかを遥かに超える存在。
トリアが炎風を吹くだけですでに鎖が壊れ始めている。でもそのたびに新しい鎖が飛び出して拘束を続けた。
束縛だけでなく鎖の魔力が絶えず肉体を侵食し命を脅かす術式だけれど、そっちはほとんど効果がないようだ。
――紫光技特性模写『再生』・『操り人形』二重複合
〈真 太極〉の二度目の使用と無理な変形で壊れた体を魔力で無理矢理動かす。
トリアに突進した私は手で彼女の胸を刺した。魔力が集中した指が〈悪しき獣を殺す鎖〉の力で弱まった甲殻を貫いた。
【――――!?】
「今返してあげる」
指で心臓付近を手探り――探した。
心臓に張り付いている玉。安息領が注入したミッドレースのコアだ。『バルセイ』では心臓と完全に一体化して彼女の核になってしまったけれど、今は強力な魔力の壁が玉の侵入を防いでいた。それでも一部が心臓を侵食することに成功してしまった状態だったけれども。
トリアがまだ抵抗している。今ならできる。
確信を得た私は再び魔力を変調した。
――紫光技特性模写『融合』・『分解』二重複合
玉を摘出するために指を動かした瞬間、トリアの全身から激しい炎風が吹き出した。
「ッ……!」
〈悪しき獣を殺す鎖〉が力を抑えているにもかかわらず圧倒的な火力が私を燃やした。その中でも一番ひどいのは摘出される直前のコアの方。濃密な邪毒と炎風が私の手を消滅させる勢いで燃え上がった。
でも諦めない。
――『浄潔世界』専用技〈浄純領域〉
邪毒をすべて消し去る。
今のトリアの力は魔物因子との融合によるもので、それ自体が邪毒で強化されたもの。力をすべて無くすことはできないけれど弱化させることは可能だった。
それでも全身が燃える苦痛と指先が消滅しそうな恐怖は相変わらずだったけれど、私はずっと手を動かした。
【――――!!】
その時、トリアの巨大な腕が鎖を壊した。鎖が回復するよりも腕が私に向かって突進した方が速かった。
「きゃっ」
腕の一撃が私を強打した。口の中が裂けて血の味が溢れた。けれど私は歯を食いしばって耐えた。
「お姉様、続けてください!」
腕が二度目の一撃を加えようとした時、アルカの矢とロベルの実体化幻影が腕をしばらく阻止した。その隙に鎖が再び復旧して腕を拘束した。
【――――!!】
トリアは口を奇妙なほど大きく開き、炎風を吹いた。燃え盛る激痛がますますひどくなった。特に顔の方が。
ああ、まったく……!
「じっとしてて!」
魔力で心臓を打った後、力いっぱいで玉をむしり取った。
心臓が損傷しただろうけど、ある程度融合を分解したので完全に壊れることはなかった。『再生』の魔力を注入すれば後はトリア自身の再生力で治療ができるだろう。
そう思って安心した直後――トリアからこれまで最大の炎風が吹き出した。
―――――
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