作戦決行
「フフ、期待してもいいわ。でもそのためにはまずここで無事に生き残るべきでしょうね? 頑張ろう」
「はい!」
ダメだ。
この絶望感をアルカと共有できないというのがあまりにも悲しいけれど、すでに公言してしまった以上仕方ない。
……アルカも一度経験してみればわかるだろう。
アカデミーに入学する前に母上に直接鍛えられたのは私だけ。アルカは母上が私を教えるのを見学することもできなかったし、私が入学した後に母上が忙しくなったので直接鍛えられたことがないと聞いた。
何であれ、母上の言う通りとりあえず生き残らないと鬼教官の授業でも何でも受けられない。
もちろん、ただ生き残るだけでは意味がない。
「それでは――行きます!!」
――天空流〈彗星描き〉
紫色の閃光になって突進した直後。極光の閃光に変わった母上が私を追い越した。
私たちの行く先ではトリアと公爵は激しく戦っていた。超高速で突進する間も数百数千回の攻撃があるほど速くて猛烈な戦いだった。
ほんの一瞬の瞬間だったけれど……率直に言って、目に強く刻まれる光景だった。
二人のラスボスの戦い。
台風と違って真ん中が一番激しいそこに、母上と私が飛び込んだ。
――天空流奥義〈五行陣・木〉
私が放った至高の斬撃がトリアの片翼を切り。
――天空流奥義〈五行陣・水生木〉
母上は暴れ回る周辺の魔力をすべて吸収して強化した〈五行陣・木〉で公爵を攻撃した。
【――――!】
「いつ来るのか気になったぞ」
斬撃直後の突進でトリアを遠くへ飛ばした。公爵は母上の斬撃を待っていたかのように正面から受け止めた。
まずは二人を引き離すことから。トリアは理性がほとんどないのでいったん押し出すと私に注意が集まる。そして公爵は別にトリアを相手にすることに執着せず、この場にいる誰でも来るなりに余裕を持って相手にするだけ。引き離すだけなら難しくない。
問題はその後だ。
【―――――!】
トリアは炎風を伴った咆哮をあげながら四本の腕を動かした。肩に生えた触手のような腕の方は今まで一度も攻撃に生かされなかったけれど、それを突然動かしたのだ。
翼を切られたせいかしら、少し怒っているような気配が感じられるけど!?
――極拳流〈一点極進〉・〈頂点正拳突き〉・〈閃拳〉
触手の腕二本と右腕まで計三本が同時に攻撃を放った。
攻撃を受け流……さない。双剣を強く握り魔力を集中させたのは防御じゃなく、攻撃のため。
――天空流奥義〈二つの月〉
二つの〈満月描き〉を双剣に凝縮した刃で全力の斬撃を放つ。
トリアの猛烈な炎風と拳に集中した魔力、そして固い甲殻が双剣の魔力を激しく消耗させたけれど――ついに到達した刃が二つの触手腕を完全に切断した。
だけど右手の〈一点極進〉が私のお腹を強打した。
「がはぁッ」
強い打撃を受けて息を吐いてしまったけれど、押されないように足に力を入れて踏ん張った。熱い炎風が肌を燃やすのも魔力の再生で相殺した。
距離が近い。剣では斬れないほどだけれども――。
「はあぁっ!」
後頭部から魔力を噴射する反動で突進。痛烈な頭突きでトリアの額に激突した。
「い、痛っ!?」
固すぎ! 私が打ったのだけれどめっちゃ痛いわね、これ……!
トリアの方はあまりダメージもないようだったけれど、怒ったように鋭く咆哮した。彼女の魔力が私を狙っているのが感じられた。
そう、それでいいのよ。
「追いかけてきなさい!」
――紫光技特性模写『加速』
トリアの注意を引いたまま高速で逃げた。トリアは悲鳴のような咆哮をあげながら私を追いかけてきた。
まずは物理的にトリアと公爵を離れさせることから。公爵の方は母上が一人で担当している。そしてトリアの方は私の仲間全員がマーキングする。
アルカの矢、ロベルの幻影、ジェフィスの速さ。そのすべてがトリアを牽制する。そして正面からトリアを抑え、彼女の力をほとんど受け止めるのが私の役目。
トリアを確実に倒すことは不可能で、そもそも目的でもない。けれど大変ではあるわね。
「ぐッ……はあっ!」
【――――!】
トリアの鋭い指先が頬をかすめた。本当にほんのわずかにかすめただけなのに、強烈な魔力に全身が燃えてしまいそうだった。
それを抑え、トリアの脇に刃を突きつけた。そのまま腕を切り取るつもりだったけれど、トリアはその瞬間上腕を胴体にくっつけて刃をつかんだ。
浄化神剣の力を召喚した『天上の鍵』を。
【――――!?】
魔物のキメラとなった今のトリアにとって浄化神剣の力は相克。
浄化神剣の力を鋭く裁断して腕を切断した。そして再び修復できないように浄化神剣の力で腕を確実に消滅させ、〈赤月の影〉で体の真ん中を狙った。
トリアは残った腕を伸ばして――。
――『融合』専用技〈融合体変形〉
その腕が突然変容した。
歪んだライオンの頭と八匹のヘビ。ライオンの頭が〈赤月の影〉を噛み砕き、八匹のヘビが私の全身を狙って駆け寄った。
【テリア!】
――第七世界魔法〈赤天竜波〉
イシリンの魔力砲がヘビたちを吹き飛ばした。けれどトリアは切られた腕を瞬時に再生させ次の攻撃に切り替えた。
……いや、あれを再生って呼べるのかしら。
本来の腕に甲殻が加わっただけだった今までとは違う。新しく生えてきた腕は似合わないほど巨大な上に恐ろしくねじれていて、六つの関節が気持ち悪い動きを体現していた。
『バルセイ』のラスボストリアと似ていながらも違う。おそらく邪毒獣の破片のせいだろう。
トリアは恐ろしい腕を私へと振り回した。
―――――
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