一瞬の作戦会議
「興味深い」
公爵は平然と言いながら魔力を開放した。
まるで長い間水を貯蔵してきた堤防を目の前で割ったような感じだった。その流れに流されるような圧力と威圧感が体を襲い、公爵の強力な魔力が私たちの奥義を正面から押し出した。
あまりにも強力な『支配』の力をアルカの〈ブラックホール〉にぶつけ、『万魔掌握』の支配力を相殺し、至高の一閃が〈赤月の影〉を破った。そして公爵が一歩前に踏み出した瞬間、まるでそれが信号であるかのように彼の魔力が爆発するように広がって私たちを吹き飛ばした。
「きゃあっ!? お姉様……!」
「大丈夫よ」
アルカは当惑したけれど私はニヤリと笑った。
――計画通りよ。
【――――――!!!】
公爵の暴力的な魔力に正面から立ち向かう存在があった。トリアだった。
おそらく今ここにいる他の誰も対抗できないほどの魔力に一人で対抗する。圧倒的な炎風が公爵の魔力の怒涛を対等に押し出し、閃光のような突進と拳が公爵を狙った。
「面倒くさい」
公爵はトリアの拳を剣で弾き出した。けれどトリアは炎風を激しく吐き出す拳を振り続けた。刹那の瞬間に数百、数千回の拳振りと剣撃が交差した。衝突するたびに魔力が爆発し平原をめちゃくちゃに荒らし、私たちはさらに遠くへ飛ばされた。
魔力に押されて一緒に飛ばされた母上が私の方を見た。
「テリア。これが狙いだったの?」
「はい」
「お姉様? どういう意味ですか?」
アルカは当惑した。まぁ、説明の一言もなくアルカの攻撃に便乗して勝手にやったのだからよく分からないだろう。
「今のトリアにとって巨大な魔力はとても美味しそうな獲物なのよ。理性をほとんど失った彼女にとって、あれほどの巨大な魔力はとても良い餌よ」
「わざわざフィリスノヴァ公爵に大きな力を使わせたということですか?」
「ええ。そもそもトリアがこっちの戦場に乱入したのもこっちの魔力衝突に注意が集まったから。それに、トリアは公爵を相手にしては非常に弱い理性の自制心もないようだから、向こうに投げる爆弾としてはとても有用ね」
「爆弾って話がちょっとアレですよ」
アルカは苦笑いしながらもトリアと公爵の方を見た。私の趣旨はちゃんと理解したようだね。
母上が私の方を見た。
「でもテリア。単純に二人を戦わせることだけが目的じゃないわよね? 結果が不確実な賭博にすべてを任せる子じゃないと信じているわ」
「もちろんですの。母上、父上はどこにいらっしゃいますの?」
「ここにいるんだ」
私の傍に空間の門が開き、そこから父上がひょいと現れた。
私は父上の姿を見て少し呆れた気分で母上を見直した。
「……母上は確かに現場で直接戦ったのですね?」
「そうだったわ。何かしら?」
母上は心底ご存じないと言わんばかりに首をかしげた。
……まぁ、当事者は感じないだろう。現場であの化け物公爵と直接戦った母上が、戦闘の余波が直接届かない所で空間転移で支援した父上ほど傷や戦闘の跡がないということがどれほどおかしいことかを。
それも全部母上の力がそれだけ圧倒的だという象徴なのだけれども。
「父上、魔道具の中で……」
私は頭の中に浮かんだ考えを皆に説明した。少し離れた所なので声が直接届かないロベルとジェフィスには思念通信を送った。
トリアと公爵の戦いの音が背景音のように響く中で、説明が終わって一番先に口を開いた人は父上だった。
「いいアイデアだね。ちょうど僕もその魔道具を使って公爵を制圧するのが一番良さそうだと思ったけど、その暇がなかったよ。でも君たちがいれば可能だと思う」
「旦那様。それはこの子たちが危険になりますの」
母上が眉をひそめて反対した。でも父上はトリアと公爵の戦いの余波を防ぐ魔力の障壁を展開しながら笑った。
「この子たちが今まで歩んできた道も十分危なかったんだ。今さらそんなことを問い詰める必要はない。それに今あのバカみたいに強いパロムの奴を何とかできなければそれ以上の最悪が待っているよ」
「……ぐぬぬ」
母上は相変わらず不満そうな様子だった。けれど父上の言葉に反論する論理はないだろう。
そもそも真剣な言い争いになるなら、アルケンノヴァである母上がオステノヴァの父上に勝つことはできない。いくら母上が
結局母上も納得した。
「いいですわ。代わりに最前線は私が引き受けます。反論は受けません」
「それが一番確実だろう。当然僕もそちらを任せるつもりだった」
「母上、危ないです」
お二人は納得されたようだけど私は不安だった。アルカも不安そうな顔をしていたし、多分私も同じ顔をしているのだろう。
けれど母上はため息をついた。
「危ないということを知ったら、私が貴方たちを前面に出すことができないということも理解できるでしょう?」
「でも……」
「そもそもね」
母上は私とアルカを見比べた。そして私たちの方ではないどこかに視線を向けた。魔力の気配を見ると……ジェフィスとロベルがいる方だね。
母上の目が厳しくなった。
「……とてもがっかりしたわ」
低い声。母上からは珍しい声。……アカデミーに入学する前にあきれるほど聞いていた、懐かしいけれど怖い声。
それを聞いた瞬間、私は身震いした。そんな私をアルカが怪訝そうに首をかしげながら眺めた。
母上だけが私の気持ちを理解して笑った。
「周りの人を鍛えるのは貴方に任せたけれど……どうやら私が貴方自分を教えることだけに集中しすぎたようだね。教授法もきちんと教えるべきだったそう」
「は、母上、その……」
「今回の戦いが終わったら覚悟しなさい。貴方と貴方の周りの子たち全員、この私が直接鍛えてあげるから」
きゃあああああっ!!
私が音もなく心の中だけで絶叫する間、私の心を知らないアルカは目をきらきらと輝かせた。
「わぁ! 私も騎士団の大師匠である母上に直接教えてもらえるんですか? 楽しみです!」
私はアルカに向かって必死に首を横に振ったけれど、アルカは母上の方を見ていて気づかなかった。
母上はいつものように微笑みながら、アルカの頭に手を置いた。
―――――
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