巻き狩り
魔力のこもった咆哮が強力な風圧になって私を押し出した。
私は風圧を切って突進しようとしたけれど、その前にトリアが先に突撃してきた。
「ん!?」
獣の爪のように先のとがった手の甲殻を剣で防いだ。その直後手のひらから火が噴き出した。魔力を展開して火炎を払い、斬撃を放つとトリアは腕で防いだ。
剣を振り回すのが不便な間隔の中で、トリアは剣とぶつかり合わない方の腕で拳を握った。
――極拳流〈一点極進〉
ごつごつした拳がまっすぐに放たれた。
剣でその一撃をいなした。恐ろしいほど重い一撃だったけれど、なんとかいなすことに成功した。外れた一撃から恐ろしい風圧が爆発し、巨大なクレーターになった周辺をさらに破壊した。
直撃したら山を吹き飛ばすほどの威力。けれど私は絶えず飛びかかるトリアを迎撃しながらも、他の理由で眉をひそめた。
今の姿は『バルセイ』でも出てたけれど、戦闘フェーズじゃなかった。融合がまだ完成していない状態で登場した時はこの姿で、直後に暴走して融合率が急激に上がり化け物の姿になった。ラスボストリアは醜い化け物の姿のままアルカと戦った。
けれど今は不完全な姿。それにもかかわらず
おそらく融合が不完全なのはトリアが抵抗しているからだろう。けれど皮肉なことに不完全なため、彼女の技量が曖昧に残ってしまった。技量自体はまともな時より劣るけれど、驚異的な魔力のせいで威力は比類がない。
融合が不完全なのに魔力がもっと強いのは邪毒獣の破片を注入したためだろう。ゲームでは邪毒獣の破片まで飲み込んではいなかったから。
「はあぁぁっ!」
隙を見て剣を力いっぱい振り回した。トリアは腕の甲殻で防いだけれど、衝撃に押されて飛ばされた。
飛ばされたトリアが空中で翼を広げて停止した瞬間――空から光が浴びせられた。
――アルカ式射撃術〈ホシクモ〉
雨のように降り注いだ破壊がトリアの周辺を覆った。魔力の矢だけでもトリアの姿が隠れて見えないほどだった。
「お姉様!!」
アルカが私の傍に着地した。その直後、二人の人影が破壊の土ぼこりに飛び込んだ。ロベルとジェフィスだった。
【――――――!!】
言葉にできなかった咆哮が爆発した。土ぼこりが吹き飛ばされ、ロベルとジェフィスも遠くへ飛ばされた。
咆哮を放ったトリアは変質した瞳で私を睨みつけながら突撃してきた。
「作戦通りに行くわよ。みんな準備して!」
正面からトリアを迎えて戦おうと構えると共に、トリアの身体に異変が起きた。
彼女の体内に融合した『獄炎機関』と『天風機関』が既存の限界を超えて稼動し、トリアの四肢と翼から炎風が激しく噴出した。
炎風の規模は従来の彼女と同じぐらい。けれど暴力的な熱気と魔力の密度が今の彼女がラスボス化したことを実感させた。
――テリア式天空流〈月光蔓延二色天地〉
――極拳流〈閃拳・連式〉
無数の斬撃と正拳突きが激突した。浄化神剣の力が魔物の影響を受けたトリアの炎風を撃滅した。でも今のトリアの魔力はあまりにも強大で、攻撃の勢いは速かった。
斬撃の乱舞が突破され、トリアの炎風の拳が頬をかすめた。
「お姉様!?」
「集中しなさい」
アルカが予定通りに行動できるように、私は平然とトリアに飛びかかった。
――極拳流〈一点極進〉
再び放たれた炎風の拳を剣で受け流した。
極拳流の真髄は精製され集束された魔力の圧縮。それでも今トリアの一撃は魔力がじゃあじゃあと漏れていた。
率直に言って、魔力量はジェリアが暴走した時より強大だ。けれど暴走しながらも技量を完璧に維持していたジェリアとは違って、今のトリアの状態はめちゃくちゃだ。
――天空流奥義〈満月描き〉
巨大な奥義がトリアを押した。トリアは膨らんだ魔力で奥義を押し出そうとしたけれど、少し前から魔力を集めていたアルカの方が速かった。
――天空流奥義〈空に輝くただ一つの星〉
魔力が極度に凝縮された矢が〈満月描き〉を貫いた。
「吸収しなさい!」
――『万魔掌握』専用技〈掌握魔装〉
アルカの矢が私の〈満月描き〉を貪欲に飲み込んだ。アルカの力に私の力まで加わった矢がトリアを狙った。
【――――!】
トリアは両手を重ねて矢を防いだ。矢は炎風の手に有意義なダメージを与えることはできなかった。でもトリアを追い出すことは可能だった。
私との戦いの余波で地面にできた大きな穴の中へ。
トリアの炎風がついに矢の力をすべて相殺した瞬間、穴の中にロベルとジェフィスが飛び込んだ。
「お嬢様。行って来ます」
「頑張るよ」
二人が飛び込んだ直後、くぼみから強大な魔力が発散された。
――『虚像世界』侵食技〈虚像世界〉
***
お嬢様の先制打撃で村を消し去り、トリア姉貴を素早く発見。戦闘で地面に穴を作って追い詰めた後、そこで僕の〈虚像世界〉でトリア姉貴を隔離。
作戦の全過程のうち、二番目の段階まで成功裏にやってきた。
お嬢様の爆撃で村を消したことにも理由があるが、それはこの段階を成功裏に終えた後の話。今は完全に目の前の状況に集中する時だ。
それができなければ――死ぬ。
【―――――!!】
トリア姉貴が咆哮をあげて拳を突き出した。炎風の拳が巨大な火柱となった。私とジェフィス様は同時に違う方向に跳躍した。
「ジェフィス様、本当によろしいですか!?」
「そう、作戦通りにやってくれ。僕が本当に危険な時だけ手伝う程度でいいんだ」
ジェフィス様はそう言ってからまっすぐ走った。
いや、走ると思った。しかしその時すでにジェフィス様はトリア姉貴の目の前にいた。
刃はすでに走っていた。
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