強襲
「テリア様。五分後到着します」
「ありがとうございます」
空を飛ぶ小型超高速飛空船に身を任せたまま、父上が派遣してくださった作戦要員の話に頷いた。
トリアがある場所はラグナス平原に隣接した小さな村の隠れ家。今回そこを攻撃する作戦は普段とは違って少し珍しい。
平たく言えば天からの強襲。
敵にはこのような高度の飛空船を探知する方法がない。少なくともあの小さな村の隠れ家にいる奴らには。そんな装備をあんな小さな村の隠れ家で密かに保管して運用することはできないから。
隣にはイシリンとアルカとロベル、そしてジェフィス。ジェリアとリディアとシドはまだ復帰できず、ケイン王子にはやるべきことが多い。
「イシリン。今回も頼むわ」
「分かったわ」
イシリンは今は竜人の少女の姿をしているけれど、今の彼女の本当の姿は邪毒の剣。全力を出すためには本来の姿に戻らなければならない。ジェリアが暴走した時のように。
「何か久しぶりに一緒に戦うね」
ジェフィスはそう言って笑った。
彼の雰囲気は以前より超然となった。以前よりはるかに強くなった上、様々な経験をしながら成長したことが分かるね。
けれどジェフィスは私たちを見て苦笑いした。
「正直、足を引っ張らないか心配する立場だけどね」
「そんなはずないじゃない。どうしてそう思うの?」
「君たちの戦力を考えてみてよ」
……まぁ、正直に私とアルカは言うまでもないわね。
ジェフィスの視線は特にロベルに向けられていた。
「特に君。すごいことになったんだね」
ロベルは少し警戒していた。するとジェフィスはニヤリと笑いながら手を振った。
「いや、本気ですごいよ? 幻影系の特性でありながら『加速』を持った僕と物理的にもほぼ対等だっただろう。正直、他の奴より君がもっとすごいと前から思っていた。今は世界権能になったんだって? 正直憧れているよ」
ロベルは率直な言葉に目をパチパチした。
まぁ、ジェフィスも公爵令息だから。あんな態度は意外だったろう。……率直に言って、私や周辺の公爵令嬢令息はほとんど似合わない気さくな性格ではあるけれど、ジェフィスはその中でも目立つ。
彼が生きていたら『バルセイ』の話も少しは変わったかしら。
今では意味のない家庭だけど、時々そんなことを考えてしまう。
「もうすぐ着きます」
要員がそう知らせてきた。投下する時ね。
「よし。作戦通りに先鋒は私が引き受けます。皆さん、三十秒後についてきてください」
そう指示を出して、私は先に門の前に立った。邪毒の剣に戻ったイシリンと始祖武装『天上の鍵』を握ったまま。
「ドアを開けます。ご武運を」
ドアが開いた。魔道具で空気の流れを遮断していて風が吹くことはなく――その平穏さを拒否するように、私は一人で飛び降りた。
――紫光技〈選別者〉
両目から紫の眼光を散らして急降下。投下地点は正確に目標とした場所のまま。空中で揺れながら生じる誤差は魔力で補正しながら、指定された座標へと正確に落下した。
村にはすでに父上の名前で領主と交渉して待避令が下され、すべての住民の待避が完了したこともすでに確認した。そして村のすべての破損は我が家で補償する予定だし、すでに
そのため、迷いはなかった。
――テリア式天空流奥義〈夜空の満月〉
浄化神剣の巨大な球体とその周辺を渦巻くイシリンの力。相反する力による巨大な破壊が村全体を一撃で吹き飛ばした。
「うおおおおおおっ!?」
「何だ、ぐああああああっ!?」
村のどこかに隠れていた安息領の雑兵たちの悲鳴が聞こえた。
戦略級爆弾のような破壊が襲った場所に残ったのは村全体が消滅した巨大なクレーター。そして不自然に形を維持している一部の地面と、その中の半分ほど破壊された結界に隠れて傷をつかんで転がる安息領の雑兵たちだった。
トリアを最速で見つけるには、村の中をいちいち調べることなど論外だ。オステノヴァの探知魔道具を動員しても時間が少しはかかる。それで私はこの方法を選んだ。
すぐに結界を壊して入り、安息領の雑兵たちは無視したまま拳で地面を強打した。地面が破壊され内側のスペースが明らかになった。
その中にトリアの姿はなかったけれど、もっと下に彼女がいるということが感じられた。
「筆頭の命令を遂行せよ! あの女を解放しろ、急げ!」
どこからか荒い男の声が聞こえた。それを聞いて私は冷静に思った。
トリアはすでにラスボス化されているだろう。おそらくこれまではわざと暴れないように抑留していたようで……私が来ることを予想して準備しておいたのかもしれない。
できれば奴らが何かをやらかす前にトリアを探したかったけれど、それは成し遂げられなかった。
「っ!?」
突然地面が爆発した。内側から噴き出した魔力が地面を吹き飛ばしたのだ。その余波で私まで吹っ飛ばされた。
そしてその中で明らかになったのは――。
「トリア……」
……すでに二度目だからだろうか。ジェリアの時と違って複雑な感情以外は冷静だった。
トリアの顔はほとんどそのままだった。それさえも白目が真っ赤になったぐらい。けれど髪の毛は途中から気持ち悪くうごめく触手に変わり、背中にはねじれて歪んだ翼が生えたし、手足は鎧のような漆黒の甲殻に覆われていた。そして両肩から触手のような腕がもう一つずつ出ていた。
『バルセイ』での姿と似ているけれど少し違う。そして感じられる魔力が予想を格段に上回っていたし……その中から見慣れた気配が感じられた。
「あの時の邪毒獣の破片を混ぜ合わせたわね。本当に……悪趣味ね」
理性を失ってうなるトリアが聞き取れるはずはなかったけれど、話さずにはいられなかった。
トリアは巨大な咆哮と共に魔力を解放した。
―――――
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