雨の中の決闘
――自在水芸〈雨媒衝〉
タールマメインはその場から一歩も動かずに水槍の突きを放った。魔力も発さないそれが私に届くはずがなかった。
でも彼が突きを放った瞬間、私は魔力を読んで横に避けた。直後、私がさっきまでいた所を水槍刃が突き刺した。〈水源世界〉の雨粒が宙で団結して槍刃を形成したのだ。
〈雨媒衝〉は雨を媒介に水槍を遠隔で形成して突きを転移させる技。世界中に大雨が降っている〈水源世界〉の中でなら、その射程距離は事実上無限だ。
しかも何度も放たれる。
――自在水芸〈雨媒衝・連式〉
タールマメインがその場で超高速連続突きを放った。雨の中から無数の槍の刃が私に降り注いだ。横に跳躍してそのすべてを避けた瞬間、あらかじめ待機していた安息領の兵士たちが一斉に剣と槍を伸ばしてきた。
――天空流〈月光蔓延〉
兵士たちの攻撃と追撃を続けてくる〈雨媒衝・連式〉をすべて双剣の乱舞で迎撃した。しかし進むことはできなかった。猛攻が殺伐としていたからでもあったけれど、それよりも……。
「アルカ!」
雨の中でアルカを狙う数々の槍刃を剣で粉砕し、飛びかかる安息領兵士の体内に濃密な電撃を打ち込んだ。〈水源世界〉の力でも早く回復しないように。
タールマメインの槍も、兵士たちの動きも私とアルカを同時に狙っていた。アルカは立ち上がり動ける状態にまで回復したけれど、まだ〈水源世界〉の雨の影響をまともに振り払っていない。武器なしで体を動かすことだけで精一杯のあんな状態じゃ兵士一人さえまともに相手できない。
けれど、私は焦らなかった。
「かかってきなさい!」
すべての攻撃を剣で振り払い、剣の間隔へ生半可に入ってきた敵の手足をすべて切り落とした。いくら〈水源世界〉が強力な再生力を付与するとしても、四肢を切断すれば再生するには時間がかかる。さらに刃を通して『万壊電』を大量に注ぎ込めばさらに再生を遅らせることができる。
もちろん敵もバカじゃなかった。私の戦略を把握するやいなや刃の届かない距離まで下がって遠距離攻勢に切り替えたのだ。〈水源世界〉の雨で強化された魔弾や魔力の斬撃などが殺到してきた。
けれど私が警戒すべきことは兵士たちの攻撃なんかじゃない。
――『水源世界』専用技〈雨矢〉
雨粒が鋭くなった。私とアルカに降り注ぐすべての雨粒が雨の矢に変わったのだ。それに加勢するように〈雨媒衝〉まで私を狙った。そのすべてを剣で迎撃している間、タールマメインが接近してきた。
自由な遠距離攻撃が可能な彼があえて距離を縮めるのは、もちろん彼がバカだからじゃない。
――自在水芸〈無限閃〉
タールマメインは水槍を振り回した。間隔の外にあった槍があっという間に長くなって私に届いた。それを剣で弾くと槍を成した水が散らばり、新しい槍が数本現れた。それをまた破壊すると今度はもっと多くの槍と剣になった。
魔力を注入した水が無限に武器を作り出し攻撃を続ける〈無限閃〉。『バルセイ』でも面倒な攻撃パターンだったのに、現実になるともっと面倒ね。
――『万壊電』専用技〈狂乱の壊雷〉
〈無限閃〉が作り出したすべての武具を『万壊電』が宿った剣で打ち返した。触れるたびに崩壊の雷電が水そのものと水に宿った魔力を消した。魔力を強奪する水が雷電を削ったけれど、魔力量で押し付けることだけは誰よりも自信があるわよ。
〈無限閃〉が完全に無力化される直前、タールマメインと兵士たちが同時に動いた。
――自在水芸『水源世界』専用技〈水葬閃〉
兵士たちが私に飛びかかり、タールマメインは少し離れた所で槍を大きく振り回した。私は避けたけれど、いざ私に飛びかかっていた兵士たちが〈水葬閃〉に斬られた。兵士たちの切り傷から血の代わりに水がどっとあふれた。
洪水のように氾濫した水が私に降り注いだ。まるで私を水葬させようとするかのような勢いだった。いや、〝かのような〟じゃなくて文字通りだろう。もともと〈水葬閃〉は切り場から湧き出る水で対象を水葬させる技だから。
でもそれは本来怪我をした本人を水葬させること。その水を制御して私に誘導するなんて、このような応用は『バルセイ』でも見たことがない。
「ふん!!」
剣圧で水を吹き飛ばした。〈水源世界〉の水が強奪するのは魔力だけで、純粋な物理的風圧は無力化できない。魔力を放出せずに剣圧を発するのは少し骨が折れるけれど、今だけは仕方がない。
タールマメインと左右の兵士が同時に攻撃してきた。突いてくる水槍を一撃で破壊し、左右から迫ってくる刃ごとに兵士たちを切り倒した。だけど破壊されて水滴に散らばっていた水槍が再び固まり、今度は巨大な大剣になった。
――自在水芸『水源世界』専用技〈水葬閃〉
大剣の〈水葬閃〉を剣で防いだ。けれど私が振り回した魔力剣はタールマメインの雨に打たれ続けて弱くなっていた。折れてはいなかったけれど水の大剣の刃が私の剣に傷をつけた。
その瞬間、剣の傷から大量の水が溢れ出た。
――自在水芸〈黄泉ハリネズミ〉
私が剣を捨てると同時に、無数の水槍が私を攻撃した。残った一本の剣で一閃を走らせてそのすべてを一気に破壊したけれど大量の水が目の前で散り、しばらく視界を遮った。
目の前を覆った水の膜を二本の剣が切り裂いた。
「ふっ!」
タールマメインの水の武具じゃなく、兵士の剣だった。一本は〈選別者〉で強化された素手で折れ、残った一本の方に飛び込んだ。兵士は私が先に飛びかかるとは思わなかったのように目を見開いた。
「がはぁ……」
拳で奴の腹部を殴り気絶させた後、奴を盾にしてタールマメインの追撃を防いだ。そして気絶した手から抜け出した剣をひったくった。
……ふむ。でも幹部格だからかしら。まぁまぁ悪くない剣ね。
気絶した兵士を横に投げ、紫光技に染まった剣を握って前に出た。
―――――
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