成長の結果

 魔力が激しく暴れた。これがボクの最強の一撃ではないが、神竜のすべての力を集中しただけに十分強力な斬撃だ。


 無論それはボロスの突きも同じだろう。


「はあああああっ……!」


「ぬおおおおおっ!」


 単純な魔力の大きさはあちらが上。だが〈暴君の座〉の権能が魔力の差を抑え、結果的に斬撃と突きは絶妙なバランスで拮抗していた。このままでは今回の激突はただ周りを荒らして済むだろう。


 もちろんそのように終わらせるつもりは微塵もない。


 拮抗する斬撃への魔力供給を中断し、激突して暴れる魔力の暴風に飛び込んだ。砕けた氷と魔力がボクの体をめった切りした。しかし斬撃の魔力を制御してダメージを最低化するようにし、体に巻いた最低限の魔力が致命傷を防いでくれた。


 ――『冬天覇剣』専用技〈断界〉


 魔力が激突する地点に着くやいなや剣を振り回した。ボロスの突きの魔力を途中で切るような形で。一瞬空間が断絶し、ボロスの突きの魔力が霧散された。同時に魔力の供給が先に途絶えた〈神竜の激怒〉も消滅した。


 突然で迅速な行動だったおかげで、ボロスの対応が少し遅れた。だが奴はそのわずかな遅延を無視できるほど早くて強かった。奴の槍がボクを迎撃するために動いた。


 ボクはさらに前進した。奴の槍どころかボクの重剣さえもまともに振り回しにくい距離まで接近するために。ボロスの槍はボクの傍をかすめた。しかし槍が直撃しなかったにもかかわらず、魔力の衝撃波だけで右腕が完全に破壊された。右手で握っていた『冬天覇剣』が飛ばされた。


 だがそれは最初から考慮したペナルティだった。


 ――『冬天世界』専用技〈封印の氷柱〉


 左手に持つのは平凡な大きさの氷剣。


 ボロスは槍を突き出した左手の代わりに右手で剣を防ごうとしたが、氷剣はその手のひらごとに奴の心臓を貫いた。


「グッ!? ち、痛ぇぜ……!」


 ボロスは心臓を貫かれたにもかかわらず、依然として好戦的に笑っていた。


 強大な魔力を持つ者は老化が遅れるだけでなく、身体能力や回復力も格が違う。ボクも破壊された心臓を再生できるほどだから、魔力の大きさはボクより大きいボロスなら言うまでもないだろう。


 もちろんそれを勘案してこそ〈封印の氷柱〉だ。


「うむ!? こりゃ……!」


 氷剣から奴の体が急速に凍り始めた。


〈封印の氷柱〉は対象を時間ごと凍結させて生け捕りに特化した技。ボロスも直感で気づいたのか、魔力を発揮して抵抗した。奴の両腕を覆った氷が壊れ、解放された槍がむやみに振り回された。


 しかし心臓を刺されても延命と回復が可能なことと、本来の力を完全に発揮できるかは別問題だ。


 ――『冬天世界』専用技〈封印の氷柱〉


 氷剣をもう一本作って地面に刺した。そこから広がった氷から氷の鉄格子が湧き上がった。それがボロスの四肢を縫って止め、奴の魔力を凍結し始めた。


 心臓を刺されても延命と回復が可能ではあるが、それが可能になるためには魔力が心臓付近に集中しなければならない。それは自律ではなく肉体の生理的反応だ。そのため、最初の剣で心臓を刺した時点ですでにボロスの力と魔力出力は本来より落ちた状態だった。


 ボロスは魔力を激しく放出して暴れようとしたが、重なった〈封印の氷柱〉が奴を急速に凍らせた。顔を除いた全身があっという間に凍りつき、最後に残った顔にも氷がだんだん上がってきた。


「……はっ」


 氷が奴を飲み込む直前――奴は豪快に笑った。


「面白ぇぜ。今度また戦ってよ」


 その言葉の直後、氷が奴の顔まで完全に覆い、次の瞬間には奴を閉じ込める巨大な氷の柱になった。


 ……最後まで戦いへの熱望しかない奴だったな。


 氷柱が壊れないことを確認した後、破壊された右腕に代わる臨時氷の義手を作った。魔力で呼び寄せた『冬天覇剣』をその右腕が握った。


「ふむ。性能は半分くらいか」


 義手の性能は本来の右腕に比べるとかなり残念だな。まぁ仕方ない。ボロスの奴の魔力が濃くて右腕の再生が遅い状況だから。


 そしてどうせ――残りの雑兵など義手でも十分だ。




 ***




 私が水たまりの地を蹴って突進した瞬間、タールマメインは水槍で私を指差した。


「金髪の方を重点的に狙え。銀髪の足を引っ張る」


 その指示の直後、〈水源世界〉に強化された兵力が一斉に私に飛びかかった。


 安息八賢人序列三位、『司令官』タールマメイン。序列三位だとしても、安息八賢人は単なる戦闘集団じゃなく似非宗教のトップであるだけに序列と戦闘力が正比例するわけではない。彼の単身としての力は四位か五位くらいだから。けれど〈水源世界〉と配下を動員すれば戦闘方面で三位のピエリとも互角に戦う存在だ。


 特にタールマメインの配下は〈水源世界〉の力と特徴をよく理解している。


「はあっ!」


 大剣が私を狙った。最後に倒した幹部の斬撃だった。それ自体は防御したけれどすぐ剣や槍、魔弾などが殺到し続けた。


 全部対処するのに問題はない。けれど〈水源世界〉の強化と弱化効果はさっきの雨よりはるかに強力だった。さっきは簡単に制圧した奴らの攻撃を防ぐことに本気を出さなきゃならないほど。しかも連係のレベルもはるかに高くなった。


 タールマメインは自分の雨で強化した味方に早い思念で直接命令を下すことができる。多分その能力を使っているのだろう。


「どうした? さっきのように俺たちを瞬殺してみろ!!」


 大剣の幹部が挑発を叫んだけれど、私は防御に専念しながら全体の気配を見ることに集中した。


 さっきより不利になったものの、それでもこの程度の兵力を切り倒せないわけではない。だけど〈水源世界〉の影響下にあれば、死なない限り何度も回復して立ち直るだけだ。だからそのまま倒すだけじゃ意味がない。しかも最大の警戒対象は強化された兵力などじゃなくタールマメインだ。


 もちろん相手もそれをよく知っていた。


―――――


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