強き敵手

 テリアが安息領の一方を攻撃している間、ボクは反対側で派手に暴れていた。


「貴様ら如きはボクの相手にならん! なれる奴を連れて来やがれ!!」


 ――『冬天世界』専用技〈剣の吹雪〉


 無数の氷の刃の暴風で戦場を切り裂いた。安息領の奴らは各自魔力障壁や魔道具を前面に出して防御を試みたが、刹那の瞬間さえ耐えられず倒れた。


 奴らの戦力に空白が生じた間、『冬天覇剣』を強く握り魔力を集中した。


 曖昧に押し付けるだけでは意味がない。どうせ今回の戦いでのボクの役割は支部を制圧し、安息八賢人の一人を相手として迎えて戦うこと。一言で圧縮すれば〝全力で暴れること〟、それ一つだけに集中すればいい。


 全身の筋肉を一度緊張させた直後、『冬天覇剣』を勢いよく投げた。砲弾のように飛んだ剣が支部の壁を大きく破壊した。だがそれはただの挨拶にすぎない。本領は別にある。


 着弾した『冬天覇剣』から酷寒の魔力が噴き出した。支部全体を凍らせてもお釣りが来るほどだった。それだけでなく、剣から放出される氷が着弾地点の近くを破壊し続けた。対応しようと押し寄せる安息領の兵士たちは剣の力を少しも相殺できず倒れていった。


「早く出なければ全滅するぞ。それが望むことなのか?」


 挑発の言葉を投げた直後。その言葉に反応したのかは分からないが、建物の中から巨大な魔力が膨らんだ。それが『冬天覇剣』を打ち負かした。


 まるで巨大な尖塔が飛んできてぶつかったような感じだった。それが『冬天覇剣』の魔力を消滅させ、剣そのものさえも抜き出して吹き飛ばした。支部の壁を覆った氷も粉々に砕けた。


 ボクは飛んでくる剣を手を伸ばしてつかみ、暴れる魔力の深淵をじっと見つめた。


「ふむ。ボロスか」


「おう。前に見たことある顔だぜ」


 巨大な槍を片手で軽く振り回す巨体の男。ピエリの王都テロ当時に見た安息八賢人、ボロスだった。テリアの予想通りだな。


「あん時は相手にする味もなさそうな小娘だったが、今はすげぇ奴になったな。面白ぇぜ」


「そういえばあの時は互いに直接戦ってみなかったんだな」


 ボクたちは誰が先だと言うまでもなく笑った。温かさと優しさは全然ない、好戦性百パーセントの笑いだった。


「貴様は安息八賢人でも力の大きさだけでは最強だったな?」


「そう言われてるぜ。まぁ、あん時の小娘は面白ぇほどの技の精巧さでオレを超えたけどな」


「フフ。ボクは今でもあの時のテリアほど精巧な技を持ってはいないぞ。テリアのように腕で力の差を克服する真似はできない」


「何だ? じゃあ時間稼ぎでもしに来やがったぁ?」


「まさか」


 ボクの笑顔がもっと深まった。嬉しくてたまらない。


 そりゃそうするしかない。かつてボクはテリアに及ばないという劣等感と、それによって彼女の役に立たないという絶望に捕らわれてバカなことをしたから。


 だが今のボクは違う――それを試せる一番いい相手が目の前にいるから。


「貴様をボクの力と技術で押したら、力の大きさが最強の者を相手にも今のボクの力が通じるということが証明できるぞ」


「はっ」


 ボロスの笑いがさらに深まった。


 不愉快な思いなど少しもなかった。そこにいるのはただ純粋に敵に会ったことを喜ぶ戦闘狂の微笑だけだった。


「面白ぇぜ。そう言うほどの力はあるみてぇし。一度楽しんでみようぜ」


「すぐに飛びかかりそうに言いながら、なぜじっとしているんだ?」


「なぁに。せっかく面白ぇ奴に会ったのに、急ぐ飛びかかるなど風流のねぇことはできねぇぜ」


「堪え性悪く体をビクビクさせているくせにか?」


 ボロスはボクの話を聞いて爆笑した。その笑い声に触発たれたように、彼の巨大な魔力が震え、空間が振動した。彼の後方からこちらを睨んでいた安息領の兵士たちは彼の巨大な魔力に圧倒され、近づくこともできなかった。


 しかしボクにはそよ風ぐらいの感じに過ぎなかった――それがあまりにも気持ちよかった。


「さて――」


「遊んでみようぜ!!」


 ボクたちは同時に互いに向かって突進した。


 ――『冬天世界』侵食技〈冬天世界〉


 走りながらボクの世界を展開。雪原と雪山の風景が一帯を支配し、激しい吹雪と冷気がボクを除いたすべてを遅くして凍りついた。


 その中でもボロスは平気で突進してきた。


「すげぇな、おい!!」


 ――ボロス式槍術奥義〈三倍突き〉


 ――ジェリア式狂竜剣流『冬天世界』専用技〈神竜の爪〉


 立ち上がりから全力の一撃を交換する。


 ボクの神獣『リベスティア・アインズバリ』を召喚し、〈氷竜昇天〉と結合した一撃がボロスの奥義格突きを相殺した。激突した魔力が暴れて巨大なクレーターを作った。だがボクもボロスも全く勢いが衰えていない。


 いや、むしろ一合のたびにボクたちの勢いはますます高まっていった。


「ハッハハハハハハ! 期待以上だぜ、おい!!」


「それはこちらのセリフだぞ!」


 剣と槍が交差し、魔力と魔力がぶつかる。ボクたちは絶えず走り跳躍し動きながら〈冬天世界〉の中を走り回り、何千何万回を激突し衝撃をまき散らした。〈冬天世界〉の雪原に数多くのクレーターができ、雪山が跡形もなく吹き飛ばされた。


 ボロスの超越的な速度と力は今のテリアよりも強い。だがボクの〈冬天世界〉の影響を無視することはできず、遅くなり弱くなった一撃をボクの強大な魔力と『冬天世界』の魔力の特性で正面から相殺した。相殺することができた。


 偽りのない正面対決で、ボクの力が通じる。


 その事実を確認したボクは次に進むためにさらに力を開放した。


 ――『冬天世界』侵食技〈冬天世界〉法則発現〈暴君の座〉


 極寒の世界全体がボクをしっかり支えてくれる感覚。万物を止めて壊すことができる――そんな破壊的な全能感がボクの体と心を包み込んだ。


 それをそのまま剣に宿らせて振り回した。


―――――


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