雨の中の戦い
私とジェリアは山の中の安息領支部に向かって一直線に突撃した。
すでに安息領の方も私たちを迎えようとするかのように部隊が出ていた。まだ肉眼では見えなかったけれど、魔力を見れば慌ただしく動きながら私たちを迎撃しようと準備していることが分かった。さらにタールマメインの雨が彼らを強化していた。
「ジェリア!」
「ああ!」
ジェリアは固有武装である『冬天覇剣』を取り出して魔力を解放した。
――『冬天世界』専用技〈冬の刃〉
巨大な氷の刃が森を斬り裂いた。刃が木と大地を分割し、刃が通った軌跡を中心に巨大な氷が芽生えた。氷が森をさらに破壊しただけでなく、周りを支配する冷気がタールマメインの雨を一部無力化した。
「奴らの先発隊を打撃した。気配を見ると半分くらいは戦闘不能になったようだな」
「いいわ。このまま西方面を荒らしてちょうだい。一度大きなダメージを与えれば、まだ中から待機中の兵力を引き出すことができるでしょ」
「それはいいぞ。奴らを殴り倒した後にまた会おう」
ジェリアは西方面に向かって突撃した。巨大な氷と冷気を散らしながら。
同時に私は東方面を睨みながら足に力を入れた。
――天空流〈彗星描き〉
『万壊電』の魔力が森をめちゃくちゃ破壊した。そのように軌跡を残しながら東方面の先発隊を強襲した。普通の雑兵ならこれだけでも全滅させるほどの魔力だった。
しかし、タールマメインの雨で強化された部隊は違った。
「ぐおぉっ……!」
破壊力を耐えられず吹き飛ばされたのが半分ほど。けれど残りの半分は武器と魔力でなんとか持ちこたえた。特に一人が私の剣を正面から直接受け止めた。
ジェリアの攻撃の余波で雨足が弱くなったのにこれくらいだなんて。魔力の深淵を覗いてみると、タールマメインの雨の力がそれほど強力だということが分かった。
「へえ。なかなかだね」
「小娘が……! ふざけるな!」
「他の奴らの魔力を譲り受けてもまともに防げなかったくせに口だけはお上手ね」
私の一撃を防いだとはいえ、奴の腕は『万壊電』の魔力に燃えてしまった。それを笑って足で蹴飛ばした。そして周りから飛びかかる奴らを高速剣で斬り裂いた。
「ふむ。雨の効果が強いわね」
タールマメインの雨がさらに激しくなった。安息領の奴らの魔力がさらに膨らんだ。反面、私の魔力を強圧的に押さえつけるような感じが加わった。
タールマメインの雨は敵対者の魔力を破壊する効果もある。その機能は肉体内部にはほとんど影響を及ぼさないため身体強化には問題ないけれど、魔力を外に放出することが大きく制限される。結界とかを展開しても雨の力ですぐ破壊されちゃう。
まぁ、こいつらを相手にはこれくらいのデバフなんてハンディにもならないけど。
「はっ!」
高速剣で周辺の奴らの手足を斬り裂き、魔力を妨害する魔力を模写して奴らの魔力を封じた。雑兵たちはタールマメインの雨で強化されたにもかかわらず抵抗できなかった。けれど下位幹部格は武器と魔力で私の剣撃を防いだり、せめて戦闘不能にならないほどダメージを最低限に抑えた。
ふむ。やっぱり私の魔力出力を抑え、味方を強化する作用が同時に働くと効果が大きいわね。魔力の根源を見れば本来なら私の平凡な剣撃さえ防げない水準だったのに、今は魔力の放出が抑制された状態で奴らを無力化するにはかなり骨が折れるみたい。
このままでも奴らを全員無力化することはできる。でもこの戦闘は本命じゃない。できるだけ早く終わらせて次の奴らを引き出さないと。
――紫光技〈選別者〉
私の肉体を最大に強化した。圧倒的な魔力の波動と威圧感が一瞬雨を押し出した。
タールマメインの雨の効果は雨に降られている間だけ続く。持続性が全くないから、雨に少しでも当たらないと効果がない。つまり、今この隙に他の魔力を展開することができる。
――紫光技〈天否定の天蓋〉
上空に巨大な魔力障壁を展開した。
本来は上空からの爆撃などを防御するための技。それで一瞬雨を防いだ。タールマメインの雨には一秒も耐え難いけれど――そのくらいの隙なら、奴らを数十回は全滅させることができる。
――天空流〈月光蔓延〉
しばらく雨が止んだおかげで私の魔力出力が戻ってきて、安息領の奴らの力が弱くなった。その隙に無数の斬撃で奴らを襲った。幹部格が少し抵抗しようとしたけれど、雨の加護がなければ斬撃の一発さえも耐えられなかった。
全員の手足を斬って無力化した後になって〈天否定の天蓋〉が壊れた。〈選別者〉の力が雨の力を無視したおかげで体は重くならなかったけど魔力の放出は依然抑制された。
いずれにせよ戦闘続行に支障はない。そのため、奴らを脅かす意味で支部の建物に向かって一歩前進した。
気持ちとしては今すぐ建物に突入して暴れながらアルカとトリアを早く救いたいけれど、曖昧に敵の軍勢が残った状態でタールマメインと戦うことになると非常に煩わしい。まずはできるだけ敵の兵力を引き出して数を減らしてこそ確実に勝機をつかむことができる。
そう思いながら威嚇で剣を一振りするかと思った瞬間、突然建物の中で大きな魔力がふくらんだ。
この気配は……。
「アルカ!?」
どんな状況かは分からないけど、その魔力は間違いなくアルカのものだった。彼女も中で安息領に抵抗して戦っているのだろう。
アルカに呼応するためにもう一歩踏み出した瞬間、安息領の建物から巨大な斬撃が噴き出した。
「ふん!」
斬撃を一度の剣閃で相殺し、奴らを脅かすように走った。すると建物から武装した兵力がどっと押し寄せてきた。
規模は百人程度。頭数だけはむしろ先ほど無力化した兵力より少ない。でも一人一人の力はむしろ強かった。全部が幹部格だった。最低も最下位の幹部である宝蛇だったし、奴らの先頭に立った男は安息八賢人の部下の部下程度の者だった。
走る勢いを緩めて奴らに向かって歩くと、先頭の男がニヤリと笑いながら口を開いた。
「来るとは聞いたが、本当に来るとは。恐怖を忘れた女だな」
―――――
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