有利な戦闘、不利な戦況
ベルトラムが黒騎士の魔道具で自分自身を強化しながら戦況に介入した意図。それはアジトに潜入した|
ベルトラムが力の領域を拡張した後、彼の魔力がロベルとトリアのいる所までおよび、二人が戦闘を繰り広げる気配を感じた。二人がベルトラムの力に圧倒されるのも。
普段のベルトラムならともかく、黒騎士の魔道具まで使ったとすれば二人が耐えられる敵ではない。力の大部分は私を相手に使われていたけれど、あふれる力の余波だけでも二人を圧倒するのに十分だった。
そこまでは悪い可能性として想定していた事態だったけれど……問題はその次だった。
「アルカ!?」
突然アルカがそっちへと突撃したのだ。
多分同じように二人の危機を感じたのだろう。今この場のミッドレースベータは私とベルトラムの戦いの余波だけで絶命したり無力化された状態だから、アルカがそっちに行っても大きな問題はない。私をバックアップしてくれるからといってもこっちの結果が大きく変わることもないだろうし。
けれど問題はアルカがそっちに行ったといってそっちの状況が変わることもないということだ。
「どけささい!」
――天空流奥義〈五行陣・木〉
極強の斬撃がベルトラムの体を切った。ベルトラムは強力な防御技を使って防ごうとしたけれど完全には防御できなかった。大きな傷から血があふれた。
けれど『冬天』の氷が傷を覆った。あれくらいの処置では体を積極的に動かすことはできないだろうけど、そもそもベルトラムは肉体を積極的に使うタイプじゃないから構わないと判断したのだろう。
――『冬天』専用奥義〈七雪山の王冠〉
――『冬天』専用奥義〈遥かなる天の鎧〉
巨大な、あまりにも巨大な氷の槍が作られた。まるで雪山に面したような威容の槍が計七つあった。同時にベルトラムを守る氷の全身甲冑が具現された。
――天空流奥義〈五行陣・火〉
大地と空間に刻まれた〈五行陣・木〉の魔力に私自身の魔力まで大量に込めて爆発させた。暴れる斬撃の暴風が〈七雪山の王冠〉の槍を三つ破壊し、二つも大きく損傷させた。だけどそれらの犠牲で〈五行陣・火〉が相殺された隙を残りの二つの槍が刺した。
――天空流奥義〈五行陣・金〉
確率と可能性を一つ一つ分解し、氷槍の構造と弱点を分析した。そして手にした剣だけで槍をいなすことができる可能性を確定した。おかげで突進に魔力を注ぐ暇ができた。
「どけなさいって言ったでしょ!」
至近距離から力いっぱいの強撃を放った。〈遥かなる天の鎧〉に大きな刀痕が刻まれた。けれど奥義級防御技を完全に破壊することはできなかった。
むしろ鎧で私の一撃を受け止めたベルトラムが反撃を準備した。もう一度発動した〈七雪山の王冠〉がすべての方向から私を狙った。
下段を狙う槍をジャンプしてかわし、続く二撃と三撃を回転しながら受け流した。少し遅れて攻撃してくる四撃目は剣でいなした直後一撃で真っ二つにした。左右から同時に襲ってくる五撃と六撃を双剣の斬撃で破壊した。
そして最後の七撃が目前に迫った瞬間、私は右手の剣を捨てた。
――天空流奥義〈五行陣・水〉
右手で槍を握り締めて魔力を掌握した。〈五行陣・金〉の目で観測した構造と確率をもとに瞬く間に槍の力を奪った後、私の魔力まで加えてベルトラムに投げつけた。ベルトラムは突然の魔力強奪と反撃に対応するために防御技を展開しなきゃならなかった。
その隙に私は右手でもう一度〈魔装作成〉の剣を握った。
――天空流奥義〈二つの月〉
二つの〈満月描き〉を双剣に凝縮した。先ほど太陽の力を剣に込めたのと同じ方式だけれど、二つの〈満月描き〉をそれぞれ注入したのでさっきよりさらに強力だ。『万壊電』と『獄炎』の力が融合した魔剣はすでに二つの太陽を手にしたも同然だった。
破壊的な一閃がベルトラムの鎧の前面部を吹き飛ばし、彼の体にも傷を刻んだ。ベルトラムは険しい顔をした。
「どいてあげられぬ!」
ベルトラムの体から『冬天』の魔力が波のように噴き出した。すべてがあっという間に凍りついた。止まってしまった空間が私の動きさえ封じようとした。けれど〈二つの月〉の双剣を一度ずつ振り回しただけで空間の凍結が壊れた。
魔力を吐いて空間を支配するなんて、私にもできるわよ。
〈雷神化〉で稲妻そのものとなった体に『獄炎』の魔力を加えた。爆発するように広がっていった『万壊電』と『獄炎』の魔力が周辺を支配する『冬天』の魔力を押し出した。
そのように突進を防ぐことをなくし、近づいて剣を振り回した。ベルトラムが展開した氷の槍と私の剣が交差した。ベルトラムの肩を切ったけれど今度は私のわき腹も槍に突き刺さって血を流した。平凡な氷なら〈雷神化〉状態の私の体を傷つけることはできないけど、やっぱり強力な魔力が込められた魔槍は違う。
「ふん!」
剣で槍を破壊してからまた一閃。ベルトラムは体を後ろに飛ばして避けた。同時に数多くの氷の剣と槍が展開された。それを〈雷神化〉の足で踏んで壊すと破片が突然蒸発し強力な魔力場に変わった。
けれど私は一度の咆哮で魔力場を吹き飛ばした。そして最大速度で突進してベルトラムの数多くの兵器と防御技を壊し、彼の体を斬った。一つ一つの傷はそれほど深くないけれど、戦闘自体は私が優勢だと言っていいだろう。
でも目の前の戦闘じゃなく、ここの戦況全体で言えば不利なのは私の方だ。
ベルトラムも私の焦りに気づいたようだった。彼の口が弓のように曲がって嘲笑を出した。
「焦っているんだな。あの弱者たちを救えなさそうで不安なのか?」
―――――
読んでくださってありがとうございます!
面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!
一個だけでもいいから、☆とフォローをくだされば嬉しいです! 力になります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます