乱入と結果
あれはテリアお嬢様がおっしゃっていたそれのことか?
トリア姉貴の『融合』なら確かに奴らのキメラ研究に役立つだろう。実際にそれを利用される可能性についても話が出たし。
トリア姉貴は眉をひそめ、不愉快そうな声を上げた。
「私が貴様を手伝うと思う?」
「手伝うつもりがなくても構わない。強制的に利用する方法はいくらでもある。もちろん恣意的に行うより効率は落ちるだろうが、ないよりはマシだろう」
人形が手を上げた。その手に莫大な魔力が集まった。
しかしその魔力が何かをする前に状況が変わった。
「二人を放して!!」
外から巨大な紫色の斬撃が飛んできた。それが道を開き、その道に沿って華やかな紫色の閃光が乱入した。アルカお嬢様だった。
――アルカ式射撃術奥義〈九頭の竜〉
アルカお嬢様の弓が巨大な魔力を放った。矢というより巨大な破壊の閃光と呼ぶべき攻撃が計九回、一つ一つにそれぞれ異なる特性の力が適用された射撃だった。何の対応もなく直撃すればこのアジトの建物を丸ごと吹き飛ばせる威力だった。
敵は巨大な氷の盾を五枚展開した。アルカお嬢様の攻撃は五枚の盾に正確に相殺された。しかしアルカお嬢様が隙を突くように撃った矢が僕とトリア姉貴を拘束した鎖を破壊した。
「ありがとうございます!」
――極拳流〈頂点正拳突き〉
僕とトリア姉貴は同時に魔力を素早く凝縮した拳を放った。アルカお嬢様も反対方向から射撃を浴びせた。
「弱者が集まっても変わることはない」
――『冬天』専用技〈遥かなる天の鎖〉
さっきよりも強力な魔力が感じられる氷の鎖が出現した。僕とトリア姉貴の拳が鎖を一度弾いたが破壊されなかったし、アルカお嬢様側も魔力の矢で鎖を破壊しようとしたが上手くいかなかった。でも姉貴と僕がそれぞれ炎風と雷電の魔力を爆発させて鎖を無力化し、アルカお嬢様も『万魔掌握』で複製した『万壊電』の魔力で鎖を破壊した。
――『万魔掌握』魔力複製『重力操作』
アルカお嬢様がどこかで複製した魔力を矢に込めて撃った。矢自体は氷の盾に防がれたが、着弾地点を中心に巨大な魔力場が展開された。敵の人形や兵器の動きが急激に鈍くなり、一部は地面に墜落した。
僕とトリア姉貴は魔力場の中に飛び込んでも何の影響も受けなかった。おかげで自由に攻撃を放つことができ、敵の人形をいくつか破壊することに成功した。アルカお嬢様も破壊の閃光を繰り返し発射して多数の人形や兵器を破壊した。
その瞬間、アルカお嬢様の後ろに氷の人形が現れた。
「お嬢様!」
人形の周りに氷の槍がいくつか具現された。アルカお嬢様もすぐに気づいて回避行動を取った。単に攻撃を避けるだけでなく、意図的に『重力操作』の魔力場に飛び込んで追撃を弱めたのだ。直後剣で斬撃を撒き散らして周囲を牽制することも忘れなかった。
「判断力は悪くない。だがそれだけだ」
――『冬天』専用技〈遥かなる天の騎士団〉
――『冬天』専用技〈極北の神殿〉
今度は敵の結界が広範囲に展開された。魔力を少しでも下げるとすぐに凍って死にそうな冷気が僕たちを遅くした。そしてその中で武装した氷の人形がいくつか現れた。
アルカお嬢様の『重力操作』の魔力場は相変わらずだったが、新しく現れた軍勢は気にしなかった。……いや、違う。奴らも『重力操作』の影響を受けてはいた。ただ力と魔力が強すぎて完全に制圧されないだけだった。
「くっ!?」
氷の軍勢が剣や槍で攻撃を展開した。それを避け、いなし、時には反撃することは可能だった。でも敵の結界の力が強すぎて僕とトリア姉貴はもちろん、アルカお嬢様さえも動きが鈍化した。そして鈍化した動きと力で相手するには氷の軍勢が強すぎた。
――『万魔掌握』専用技〈万魔支配〉
アルカお嬢様は一帯の魔力を強奪しようとした。敵の結界の魔力がアルカお嬢様の意思に従って動き、氷の兵器と鎖を作り出した。氷の軍勢の攻撃がしばらく弱まった。
しかし敵は依然として余裕があった。
「始祖オステノヴァの力か。興味深いが、文献に伝わる力に比べると弱すぎる」
敵の魔力が再び高まった。アルカお嬢様の〈万魔支配〉が強奪した制御権を再び奪われていた。完全に失ったわけではないけどアルカお嬢様がコントロールできる魔力が半分も残っていない。
「どうして……!」
「『万魔掌握』は強力な力だ。だが結局魔力を支配するのは個人の力量だ。強い特性を持っているとしても、きちんと扱えなくては猫に小判に過ぎない」
もう一度氷の軍勢が前進した。氷の鎖もまるで空を覆うような勢いと量で僕たちを襲った。僕たちは全力で抵抗したが、一つも相手しにくいほど強い氷が僕たちを圧倒する量に殺到することには耐えられなかった。
僕たちが皆制圧される直前、トリア姉貴が何か決心したような顔をした。
「ロベル、私とアルカお嬢様に長距離探査の幻影をつけて」
「はい? 急に何の……」
「早く!」
一応言われた通りにした。それを確認した瞬間、トリア姉貴がしばらく穏やかに笑った。
しかしそれもほんの少しだけ。突然姉貴の炎風の手が僕の胸ぐらをつかんだ。
「アルカお嬢様! お願いします!」
アルカお嬢様は自分とトリア姉貴の体に隠れた幻影を感じ、理解したかのように頷いた。
しかし僕は理解できず戸惑った。
「姉貴、一体……」
その瞬間、姉貴の胸の中からかすかな魔力が感じられた。魔力を貯蔵しておく魔道具の気配だった。
これは……エリネさんの?
それがどういう意味なのか考える前に姉貴が僕を投げた。巨大な炎風の渦と共に。そこにアルカお嬢様が『獄炎』と『万壊電』を複製した矢まで加わり、強力な破壊の力が氷の軍勢と鎖を突き破って僕を吹き飛ばした。
やっと僕は気づいた。二人がアルカお嬢様ではなく、僕だけを脱出させようとしているんだと。
遅まき制止の声を出す前に、氷の鎖がそこを完全に覆った。
―――――
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