制圧

 ――『獄炎機関』・『天風機関』臨界稼動


 ――トリア式融合技〈炎風の巨人〉


 トリア姉貴は最初から全力を発揮した。


 姉貴の体の大部分が炎風に変わった。両腕だけだった過去と違って、さらに修練して高めた完成型。単に体が変わるだけでなく、融合率が上昇することで魔力の出力もはるかに強くなった。


 おそらく相手がとても強いと感じたのだろう。


 ――『虚像満開』専用技〈雷神の偶像〉


 巨大な女神の幻想を具現化した。それが巨大な雷槍の幻想を二本具現すると同時に、トリア姉貴が氷の軍勢へと突撃した。氷を溶かす攻撃的な炎と魔力に干渉して制御を乱す〈傀儡の渦〉が同時に展開された。


 しかし敵はまるで暖かいそよ風でも吹いてくるような態度だった。


「悪くない。だが足りない」


 目に見えるすべての範囲を吹雪が覆った。トリア姉貴の炎風が急激に萎縮した。〈雷神の偶像〉の雷槍を実体化させ爆発させて吹雪を押し出したが、その程度など大したことではないように再び僕たちを圧迫した。


「無駄だ!」


 トリア姉貴が咆哮し、魔力をさらに高めた。


 ――極拳流〈閃拳〉


 炎風の魔力が込められた拳圧が吹雪を一時的に追い出した。そのように開かれた空間の中をトリア姉貴が突進した。文字通り炎の風になった姉貴が空間をさらに広げ、実体化した武具と雷神の幻影を従えた僕がその後に続いた。


 ――『冬天』専用技〈酷寒のファランクス〉


 無数の氷の槍が現れた。


 前方だけではなかった。両側と上側、さらには前方の地面にまで氷の槍がぎっしり詰まっていた。それらと極寒の魔力がトリア姉貴の炎風を削った。


「姉貴!」


 僕は跳躍して姉貴の頭上を通過した。そして〈雷神の偶像〉の両手で巨大な雷電の槍を作り出した後、振り下ろしながら槍を実体化した。華麗な雷電が周囲を華やかに染め、槍の軍勢を粉砕……しようとしたが、実際に壊れたのは半分程度に過ぎなかった。しかもその半分さえもあっという間に復旧した。


 しかし壊れて復帰するその短い瞬間にすでにトリア姉貴は魔力を集めた。


 ――極拳流〈一点極進〉


 炎風の拳が咆哮した。無数の氷の槍も、飛びかかる氷の動物も大量に砕け散った。姉貴の炎風は依然として劣勢だったけど僕の補助と姉貴自身の強力な攻撃が引き続き攻撃を振り払い、僕たちを前に進むことができるようにした。


 すると敵は少し興味深いような声を出した。


「弱者にしてはなかなかだな。だが……外の少女が仲間にするにははるかに足りない」


「!」


 奴の言葉に僕とトリア姉貴が同時に反応した。


 すでに敵の声を発している人形は僕たちの射程圏内だった。拳が直接届く距離ではないとしても、僕たちの魔力で放つ拳撃なら十分に奴を壊すことができる。


 ――極拳流〈一点極進〉


 姉の炎風の拳と僕の〈雷神の偶像〉の拳が同時に炸裂した。


 しかし敵は鼻で笑いながら手を上げた。氷の手が僕たちの拳撃を正面から受け止めた。他の人形や武具と違って、その人形の手は傷すらついていない。


 それでもあれくらいの堅牢さならきっとあの人形もそれなりに重要な個体……。


「ふむ。納得できないのか。だが真実だ」


 今度は敵がむしろ前に進んだ。それに加えて雪崩のように大量の冷気と氷雪が外から流れ込んだ。僕と姉貴の力でそれに対処しようとしたが、その中から飛び出した人形が僕たちに飛びかかった。


 見た目も、感じられる魔力も、氷でできた身体の固さも。いずれも声を放っていた人形と全く同質だった。


 ――極拳流奥義〈双天砕〉


 ――『虚像満開』専用技〈幻影実体化〉


 姉貴の炎風が爆発した。僕の魔力が無数の火炎と稲妻の槍を実体化した。しかしどんな攻撃も突然現れた人形の軍勢には通じなかった。小さなキズくらいは出すことができたけどそれだけで、奴らの前進も魔力行使も全く妨げられなかった。


 ――極拳流奥義〈深遠の拳〉


 僕と姉貴は拳に最大の魔力を凝縮して放った。姉貴の拳が人形一つの手を破壊した。僕の拳は破壊まではできなかったが大きな亀裂を出して押し出すことには成功した。


 だが〈深遠の拳〉程度の奥義でも人形一つを完全に破壊することさえ不可能だとは……!


「もうわかったか?」


 人形が一斉に飛びかかってきた。さらに、厳しい寒さの中で新しい人形が現れ続けていた。僕と姉貴は激しく抵抗したが、一つもまともに破壊しにくい人形の軍勢に耐えることはできなかった。その上、奴らが作り出す氷の鎖が僕たちを身動きできないように拘束してしまった。


「っ……!」


 姉貴も僕も鎖を破壊するために全力を尽くしたが、いくら魔力を高めても鎖はびくともしなかった。


 氷の人形が近づいてきて僕たちを見下ろした。


「強者にはそれに相応しい仲間が必要なものだ。だが外の少女を後ろで助けている弓の少女も、今ここにいる爾らもあの少女の仲間でいるにはとんでもなく弱い」


「たわごとを……!」


「私は外の少女との戦いに力のほとんどを使い果たしている。正直、私にも侮れない相手だ。だがそのような少女と戦いながら力の範囲を広げ、分身を配置しただけで爾らをこのように簡単に制圧した。それが何よりも明白な証拠だと思わないか?」


 氷の人形が顔をそっと動かした。目鼻立ちのようなものが別に存在しなかったので分かりにくかったが……トリア姉貴の方を見ているような気がした。


「でも……こちらは利用価値がありそうだ」


「何だって?」


「正直ミッドレースオメガは進捗がよくないからな。しかしその力なら役に立つだろう。爾自身も強くて使い道のある存在になるだろう」


―――――


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