暴君の証明

 錯覚ではない。彼女の視線に込められた魔力が私を制圧したのだ――ということに気づいた時はすでに、ジェリアが再び放った剣撃が〈赤月の影〉を相殺した後だった。


 斬撃が遅れたわけではない。ジェリアがとんでもない速度で隙を回復し、剣を再び振り回しただけだ。


 その中もそのまま追撃が来た。


「うっ……!?」


 何とかいなした。でもジェリアの連撃が続いた。一度一度が奥義級以上の威力を誇る斬撃をまるで何でもないかのように振り回していた。


 双剣を振り回して直撃だけはなんとか避けた。けれど、あまりにも重くて強い斬撃をずっといなして受け流す間、腕の筋肉と骨が悲鳴を上げた。この攻防を続けるだけで腕が破壊されるだろう。


 魔力を集める暇がない……!


 それさえも連撃を受け流し続けられるのも〈浄純領域〉と浄化神剣が邪毒を浄化し、邪毒の剣の莫大な出力が威力を補正してくれたおかげだ。自力だけだったら間違いなくもう死んでいた。


 けれど、ジェリアは私が耐えていること自体が気に入らないように眉をひそめた。


【……あああ】


 ジェリアの声がこぼれ、〈冬天世界〉の魔力が大きく揺れ動いた。


 世界権能の侵食技はそれ自体で戦場を支配する力。けれども、その真価は環境を支配することなどだけじゃない。


 世界権能の持ち主は一つの世界の主人。その中で絶対的な〝権限〟を得る。


 それが何なのかは各自の性格と個性によって異なる。ただ一つはっきり言えるのは、その〝権限〟に関してだけは絶対的な力を発揮するということ。


 今までただ膨大な魔力を放出するだけだったジェリアがいよいよ〈冬天世界〉の真の力を解放しようとしていた。


 でも阻止することはできない。阻止したくても、あまりにも強大で圧倒的な魔力が接近さえままならないようにした。


 ……まぁ、どうせ。


 止められても止めなかったと思うけど。


 ――『冬天世界』侵食技〈冬天世界〉法則発現〈暴君の座〉


 まるで〈冬天世界〉のすべてがジェリアに吸い込まれるような感覚だった。


 極寒の世界のすべてがジェリアを支持し、力を与えた。自分の世界を展開したにもかかわらず、その利点を活かす姿などなかった。ただ世界の支持を受けて彼女自身が最強になっただけ。


 やっと、来た。


 考えるやいなや二つの剣の力を集約した奥義を放った。


 ――テリア式天空流奥義〈夜空の満月〉


 ジェリアはたった一撃で奥義を相殺した。そして私に突進して連撃を浴びせた。


 振り回された『冬天覇剣』を『天上の鍵』で受け止めた。その瞬間『天上の鍵』が凍結され破壊された。再び始祖武装を召還する間に放った〈赤月の影〉も一撃で霧散され、後に続いて放たれた突きをギリギリで避けた。するとジェリアは〈神竜の爪〉を放った。


 ――紫光技特性模写『結火』・『不滅』


『不滅』の力が込められた赤い宝石の防御壁を展開した。本来なら決して破壊されない無敵の壁であり、たとえ破壊されたとしても宝石が爆発する火力で敵を撃殺する。


 だけど〈神竜の爪〉が宝石の防御壁を凍らせて壊した。爆発も発動しなかった。


 凍らせる。止まる。壊す。この三つをジェリアが直接行うときに限り、その結果を必ず実現する力。単なる力の大きさ自体も圧倒的だけれど、それよりも現実操作レベルの強制力で力を強いる能力。それこそ〈冬天世界〉の真の力である〈暴君の座〉だ。力の大きさと無関係じゃないけど、〈暴君の座〉の権能を防ぐには相当な力の差が必要だ。


 自分の世界で唯一無二の絶対者となった暴君が猛暴な勢いで剣を振り回した。私も全力を尽くした連撃でそれに立ち向かった。


 あっという間に数千回、数万回の剣と魔力が交差した。〈浄純領域〉がジェリアの邪毒を浄化し、紫光技で火炎と〝動〟に関連した数多くの特性を模写して『冬天世界』の氷を溶かし、停止の権能を相殺した。邪毒の剣が足りない出力を相当部分補った。


 それにもかかわらず、〈暴君の座〉の権能は強かった。


「くっ……!」


 敵の攻撃の軌道を捻る〈日暈〉でジェリアの斬撃を流そうとしたけれど、『天上の鍵』ごと右腕が破壊された。右腕を再生して『天上の鍵』を再び召喚する間、邪毒の剣でジェリアの攻撃をなんとか受け流した。


 イシリンが悲鳴を上げた。元邪毒神の彼女は〈暴君の座〉にある程度抵抗できるけれど、痛いのは仕方ないようだね。


【あいつ、『天上の鍵』を砂糖菓子みたいに壊してるじゃない!? 始祖武装は壊せないんじゃなかったの?】


[不可能なことじゃないわ。ただ壊すなら圧倒的な力……まさにラスボスレベルの力が必要なだけなのよ]


 至近距離でジェリアの剣を避けた。そして外れた剣の側面を強くぶん殴った。するとジェリアは左手を私に伸ばした。万物を、いや時間さえ止まってしまう絶対的な〝凍結〟が私を襲った。ギリギリ避けたけれど、その隙にジェリアは剣を取り直した。


 ――ジェリア式狂竜剣流『冬天世界』専用技〈神竜の猛進〉


 神獣の力が込められた破壊の嵐が放たれた。


 おそらく〈竜王撃・巨竜〉の進化形態だろう。あまりにも巨大な嵐は本来なら対軍殲滅技だっただろう。けれど、〈暴君の座〉の力が加わった今は逃げ場のない絶対的な破壊の領域を作る必殺技だった。


 私は避ける代わりにその中に飛び込んだ。


【テリア!?】


[大丈夫よ]


『結火』を。『冬天』を。『万壊電』を。『鋼鉄』を。あらゆる魔力を絶えず吐き出した。〈神竜の猛進〉を相殺することはできないけれど、ただその魔力を削り続けるために。


 そうしながら私は『看破』の目で見守り続けた。〈神竜の猛進〉を……絶対的な破壊力を与える〈暴君の座〉の深淵を。


 私がこの戦いで狙ったのは〈冬天世界〉の深淵を解釈することだったから。


―――――


読んでくださってありがとうございます!

面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!

一個だけでもいいから、☆とフォローをくだされば嬉しいです! 力になります!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る