ジェリアレイド

「お姉様!!」


 まるで絶叫するように溢れ出た声が私の耳に届く前から、彼女たちの接近を知っていた。


 私はただ先行しただけ。砂漠全体を〈冬天世界〉が飲み込んだ時はみんな驚いただろうけど、この過酷な世界の中でも死なずにここまで到達できると信じていた。


[みんな遠距離からバックアップしてね! 前列を担うことができるのは私だけだから!]


 私と戦っているのがジェリアであることを確認し、みんな驚いたようだった。でも私が強い意志を込めた思念通信を送ると覚悟が感じられた。一部始終を把握するよりも、まず目の前の状況を解決することを優先したのだろう。切り替えが早い点はとてもいい。


 ただ一度だけ、アルカがみんなを代表して質問を送った。


[でもどの程度で……?]


[殺す勢いで撃ちなさい。どうせ殺せないから]


 冷静に聞こえるかもしれないけれど仕方ない。私以外のみんなの能力では、本気で殺す覚悟で攻撃してこそやっと今のジェリアを少しでも制止できるはずだから。


 異見はなかった。私があえて説明しなくても、ジェリアの膨大で圧倒的な魔力を感じて自分で知ったのだろう。本気の全身全霊でもジェリアにはまともに通じないと。


 アルカの矢と他のみんなの魔弾や斬撃がジェリアに殺到した。私は魔力で空中を蹴飛ばす立体機動で器用に避けながら、攻撃だけをジェリアに浴びせた。


【……あああ】


 ジェリアの口から気合いなのかうめき声なのか分からない声がこぼれた直後、彼女は腕を上げた。


 ――『冬天世界』専用技〈神獣召喚〉・『リベスティア・アインズバリー』


 極寒の魔力が巨大な氷の竜を生み出した。


〈氷竜昇天〉のものまねとは違う。正真正銘の竜だった。


 本質はケイン王子の結界魔獣に似た存在。実際に生きている生命体じゃなく、〈冬天世界〉の中でしか顕現できない魔力生命体。〝神獣〟と呼ばれるのに相応しい力を持った存在が、山より巨大な威容でアルカたちの攻撃を防いだ。


 ――テリア式天空流『邪毒の剣』専用技〈赤月の流星〉


 イシリンの力が込められた突きが神獣の力を破壊し、道を開いた。私はその道をまっすぐ突進した。


 けれど、壊れた神獣の身体と外の氷の破片が動いた。鋭い欠片の嵐だった。肌を裂かれた痛みで歯を食いしばった。


 この程度では止まらない。


 防御を犠牲にして集中した力をすべて『天上の鍵』に注入した。


 ――テリア式天空流『浄化神剣』専用技〈純白の月光〉


 眩しい純白の斬撃がジェリアの邪毒を切り裂いた瞬間、ジェリアが剣を振り上げた。


 ――ジェリア式狂竜剣流『冬天世界』専用技〈神竜の爪〉


〈氷竜昇天〉が神獣と融合した。その力が込められた斬撃が〈純白の月光〉を相殺した。いや、残る力が私にも迫った。


 ――天空流〈月暈〉


 剣で〈神竜の爪〉をそらし、その魔力を操って回転させた。私を包み込むように渦巻く酷寒の魔力に私の力まで加えて精一杯放った。ジェリアはもう一度〈神竜の爪〉を放って相殺した。


 ぶつかって爆発する魔力を突き破り、私とジェリアは刃を直接ぶつけた。


 その瞬間、アルカたちは再び攻撃を浴びせた。それは依然として神獣の力を突破できなかった。でも外野のおせっかいが気になったのか、ジェリアが眉をひそめて神獣を操作した。神獣の力のほとんどがアルカたちの攻撃への防御に投入された。おかげで私の方は少し余裕ができた。


 ――テリア式天空流〈月光蔓延二色天地〉


 ――狂竜剣流〈狂暴乱舞〉


 超加速した私の剣舞をジェリアの剣舞が打ち返した。


 斬って、弾き飛ばして、いなして、受け流す。もともと私は魔力と身体能力で優位だったけれど、今はむしろジェリアの方が私を圧倒する。確かにお互いに剣撃を浴びせ交わしているのに、私の方だけ傷がだんだん増えた。


 ジェリアは剣を一度大きく振り回した。私の双剣がその一撃をいなすことができず弾かれた。ジェリアは隙を狙うように左手を伸ばした。


 その瞬間、空間を越えた斬撃がその左手を狙った。シドの〈次元交差斬り〉だった。同時にリディアの魔弾が神獣に浴びせられた。


 ジェリアは直前に手を引いて〈次元交差斬り〉を避けた。その隙を狙って私がまた斬り込んだけれど、ジェリアの剣に弾かれた。直後に噴き出した反撃をシドの〈次元交差斬り〉が再び弾き出した。


 その瞬間、トリアの〈傀儡の渦〉が神獣の魔力を撹乱した。氷の防壁に隙間ができた。その隙間をロベルの〈雷神の偶像〉とリディアの魔弾の洗礼がより一層広げた。そうやって穴が開いた直後。


 ――アルカ式射撃術奥義〈天国の虹〉


 アルカの最強の一撃が放たれた。それが神獣の防壁の穴からジェリアを狙った。そして私が着弾のタイミングを狙って〈純白の月光〉を放った。


 二つの攻撃がジェリアに届くという瞬間――突然彼女の姿は消えた。


 上だ。


 見上げた私の目に、超越的な跳躍力で空高く飛び上がったジェリアの姿が見えた。彼女の右腕はすでに剣を振り回す準備ができていた。


 それを見るやいなや思念通信を放った。


[全力で防ぎなさい!!]


 私が跳躍すると同時に、ジェリアは剣を大きく振り回した。


 まるで世界を切り裂こうとするような斬撃だった。あまりにも巨大で鋭く圧倒的な一撃が狙ったのは私ではなかった。バックアップのみんながある方だった。


『結火』の壁が。地伸の壁が。トリアの炎風が。アルカの〈万魔支配〉が。そして他のみんなの魔力と武具がすべて、その一撃を防御するために展開された。その上をジェリアの斬撃が襲った。


 大地に巨大な線が刻まれ――みんなはなんとか持ちこたえた。けれど斬撃の威力を抑えるのが限界であり、みんなが重傷を負いボロボロになった。


 それでも即死はしなかった。私が予想した通り。


「はああっ!」


 私の跳躍はみんなを守るためではなく、ジェリアの隙を狙うためだった。そして今、斬撃を放ったジェリアの隙へと〈赤月の影〉を正確に突き刺した。


 ……でも、その瞬間。


 ジェリアの冷たい眼差しが私に向けられた瞬間、私は全身が凍りつくような感覚に駆られた。


―――――


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