失敗

 さっき私が切断した腕があっという間に再生された。反対側の腕は依然として意識を失ったジェリアに担げたままだった。奴の魔力場が私の魔力の念動力を遮断し続けていた。戦うことになった状況なのにジェリアを手放さなかったのは、私が念動力で彼女を回収するのを防ぐためだろう。


 私が眉をひそめるその短い瞬間、奴は魔力を高めた。その魔力に呼応して肉塊の津波が押し寄せてきた。ただ、今度は私に飛びかかるだけの暴走ではなかった。奴の命令を受けるように、私を牽制する触手と奴を護衛する触手に分かれた。


「ふん!」


 膨大な雷電で肉塊の津波を燃やして突進した。けれど、ローレースオメガの身体が暴走した上、奴の魔力が追加で注入されたせいか、触手の耐久度は相当だった。私は舌打ちをして、高速剣で触手を切り裂いて前進した。


 ――ハセインノヴァ式暗殺術奥義〈次元交差斬り〉


 その間、シドが空間を超越する斬撃で奴を直接攻撃した。奴は斬撃の気配を感じてすぐに身を引いた。でも、おかげで触手を強化する魔力が途絶え、私は奴の目の前に到着して剣を振り回した。


 狙うのはジェリアを担げた腕を切ること。


 普通はほとんど不可能だ。ジェリアを担げた腕を、ジェリアを避けて腕だけ正確に切るのは。でも魔力であらゆる不思議なことを起こせるこの世界なら、そして自ら誇りを持つほど強力な私の魔力制御能力なら……その程度の技芸はそれほど難しくもない。


 奴は自由な腕に強力な魔力を凝縮して剣撃を受け止め続けた。かなり器用な戦い方だったけれど、私の鋭い魔力を完全に防げず腕に傷が累積していった。そのように攻防を交わす間も触手が絶えず押し寄せてきた。


 ――天空流〈流星撃ち〉


 触手の束を魔力の突きで突破した。〈流星撃ち〉が奴の肩にかすめた。『麻痺』の魔力を込めた突きだったけれど、奴は自分の魔力で『麻痺』の力を弾き飛ばした。


 全方位から鋭い触手の槍が一気に放たれた。同時に、奴が魔力を集中させた蹴りが正面から放たれた。


 ――天空流〈月光蔓延〉


 斬撃の乱舞ですべての攻撃を同時に迎撃した。奴は足から血を流して退いた。けれど、切断された触手から濃密なガスが噴き出した。毒ガスのようなものだけど、単なる毒ではなく有毒な魔力と邪毒からなる汚い魔力のガスだった。


「私のことをよく知らないらしいわね」


 浄化能力は邪毒だけでなく有毒な魔力もすべて無効にする。こんな魔力の毒ガスなんて、『浄潔世界』の能力者である私には全く通じないわよ。


 私は躊躇なく突進し、シドは地面を経由して奴の後方を占めた。私とシドが同時に前後から奴を攻撃した。奴は触手で私たちを牽制した後、相対的に弱いシドの方へ突進した。


「ふっ!」


「くっ!?」


 シャープなキックがシドの頭を狙った。シドは腕を上げて止めたけれど、その腕が妙な角度に折れた。大量の触手が腕の折れたシドを握りしめた。私が斬撃を放った瞬間、奴は触手につかまったシドを私の方へ投げた。斬撃の軌道にシドが位置するように。すぐに魔力を操作して斬撃がシドを迂回させるようにしたけれど、おかげでワンテンポ遅くなった斬撃が外れた。


 その間、奴は大量の触手と肉の塊を盾に立てて逃走の態勢を取った。そうはいかないわよ。


 ――天空流〈流星雨〉


 両腕で〈流星撃ち〉を機関銃のように浴びせる技を放った。盾として立てられた無数の触手と肉の塊が破壊され続けた。そしてついに、すべての肉の塊が破壊され、道が開かれた。


 鋭い突きが奴の背中に向かって――。


「そこまでだ」


 ――神法〈魔法創造〉・〈空間断絶〉


 無駄に大げさな防御膜が魔力の突きを防いだ。


「!?」


 私は反射的に後退した。あの技……〝魔法〟、そして声。勘違いするはずがない。あれは……。


「久しぶりだな、小娘」


「テシリタ……!?」


 小柄ながらも傲慢な魔女。安息八賢人の筆頭補佐であり安息領の実質的なリーダー、『崇拝する魔女』テシリタ・アルバライン。ここにいてはならない存在が、防御膜の向こうに着地した。


「テシリタ様……! ありがとうございます」


「早く消えろ。貴様の脱出を助けるようにというのが筆頭の指示だったからな」


 逃げる奴の後を守るように、テシリタは魔法陣を展開した。


 ダメ……!


「退きなさい!!」


 ――天空流奥義〈二つの月〉


 ――天空流終結奥義〈月食〉


 双剣に〈満月描き〉を一つずつ凝縮して究極の刃を形成し、それで〈月食〉を放った。今私が使える最も強力な斬撃でテシリタの防御膜を破った。


「あの御方の意に逆らおうとするな、小娘」


 しかし、テシリタは空間に干渉する魔法で私の剣を弾き飛ばした。〈二つの月〉の刃の威力すらテシリタの魔法を突破できなかった。


 ――ハセインノヴァ式暗殺術奥義〈次元交差斬り〉


「未熟極まりない」


 シドが放った空間の斬撃もテシリタの魔法に無力化された。シドは驚愕しながらも岩の魔剣を投げかけようとし、私もまた一撃を狙った。


 ――神法〈魔法創造〉・〈究極の威厳〉


 しかし、テシリタは強力な重力魔法を発動した。私とシドはまるで地面にくっつくように倒れた。恐ろしい圧力が体を押さえつけた。抵抗どころか、このまま潰れて死にそうな勢いだった。


「理由はオレも分からないが、あの小娘を連れてきて貴様は生かしておけというのがあの御方の指示だ。だから殺さない。虫のようにうつぶせになって友達が拉致されるのを見ろ」


 テシリタはそう言って姿を消した。しかし、彼女の魔法は消えなかった。その間にもジェリアを担げた奴が早く遠ざかっていく気配が感じられた。


「うぐっ……!」


 全身に魔力を循環させて起き上がろうとしたけれど、テシリタの魔法は強力だった。全身の筋肉が切れて骨が折れるほど無理をしても同じだった。


 それは奴の気配が完全に消えるまで続いた。


「ク……ソ――!」


 下品な悪口を言っても変わることはなかった。


―――――


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