くだらない結末
「ふざけるな」
血の混じった唾を吐いた。しかし、奴は平然と拍手までした。
「本気だ。こう見えてもワタシは純粋な力で今の地位を占めた身だから」
「何なのかわからない地位を占めたと言ってもピンとこないぞ」
「そりゃそうだな。ワタシの称号や地位は様々だが……理解しやすく説明するにはこれが適切だな。――ワタシはピエリ様の直属補佐官だ。ピエリ様の勢力でナンバーツーと言える」
「……!」
ピエリのナンバーツー。すなわち安息八賢人を補佐する高位幹部の中でも、八賢人の真下ということか。
職位で言えば想像もできなかった大物だ。普通、安息領の対外活動で目撃される幹部は末端の宝蛇ぐらいだから。八賢人の直属部下くらいの存在は、歴史上たった二度しか現れなかった。
そんな大物の登場にボクが感じたのは……喜びだった。
「くっ、ハハハ……! そうなんだ。八賢人の直属補佐というのも大したことじゃないな。たかがボク程度をあっという間に制圧することもできないとは」
「……ワタシが全力を尽くしたと思うのか?」
「八賢人の直属補佐という奴がローレースオメガの力まで手に入れたにもかかわらず、せいぜいアカデミーを卒業することもまだな生徒一人をあっという間に制圧できなかった。全力とか何とか言うこと自体が貴様には恥ずかしいことだぞ、タワケ。笑わない理由がどこにあるのか? そして……」
ボクは方針を変えた。
見栄を張ってはいるが、ボクは奴に勝てない。しかし、必ずしも戦いに勝つ必要はない。
どうせ、ボクの計画を変える必要が全くないから。
「全力を尽くしていないのはこちらも同じだぞ!!」
〈冬結界〉を最大出力に保ったまま、魔力を最大限に高めた。
奴の全力がボクの思う通りなら、曖昧に力を惜しんでも意味がない。十夫長が断層を中和してくれることを信じて全力を尽くしてでも耐える。ボクはそれを狙うだけだ。
「愚かだな」
奴が突進した。しかし、その速度はさっきより遅かった。〈冬結界〉の魔力がボクの魔力と共鳴してより一層強くなり、奴の身体あちこちが凍りついたり表面に氷が結ばれた。奴は気に障るように眉をひそめた。
――狂竜剣流〈竜王撃・八方〉
八頭の竜が様々な方向から奴を襲った。奴は遅くなったにもかかわらず、両手と足だけで〈八方〉を完璧に防御した。ボクたちは同時に互いに向かって突進した。
ボクは魔力を最大に解放して――。
「がはぁっ……!?」
何の前兆もなく、口から血を吐いた。
突然のことだった。ボク自身も理由も経緯もわからなかった。それだけでなく、喀血と共に突然強烈な脱力感が訪れ、精一杯高めた魔力が消えた。〈冬結界〉の出力が急激に減った。
「あの御方のおっしゃる通りだな」
「何、だと……!?」
奴がボクの首を握りしめた。抵抗したかったが、体に力が入らず、魔力も使えなかった。
「何、を、したの、か……?」
「自分の体調は自分で知るべきだ」
奴がそう言った直後、後ろから何かが地面に落ちる音が聞こえた。苦労して振り返ってみると、気絶した騎士たちだった。奴とそっくりな男が気絶した騎士たちをこちらに連れてきたのだ。
いや、そっくりじゃない。あれは……。
「やはりあの御方の恩はすごい。あの御方の〈完全分身〉のおかげで、仕事が楽になった」
ピエリの〈完全分身〉を他人にも使えるということか。
ボクの周りを担当した騎士だけではなかった。断層を中和しに行った十夫長たちまで気絶した状態だった。
断層の向こうでは、まだテリアとピエリが激しく戦う気配が感じられた。向こうからこちらを助けに来るのはまだ不可能だ。
……ここまでか。
『隠された島の主人』の言葉を思い出した。これはあいつが言った悲劇なのだろうか。もちろんテリアなら逃げることは可能だ。しかし、ボクと騎士たちを放っておいて一人で逃げる性格ではない。
まさかその悲劇というのがこんなバカな流れだとは。罪悪感や申し訳ない気持ちよりも、呆れて苦笑いが出た。それを見て何を思ったのか、奴が眉をひそめた。
「心配するな。この場で貴様や貴様の友達を殺すつもりはない。貴様を確保した時点で我々の目的は終わった」
「何、だと……?」
「すぐわかるだろう」
奴の言うことを考える前に、奴の魔力がボクを気絶させた。
***
「ジェリア!!」
突然ジェリアの魔力が不自然に収まった瞬間、私は悲鳴のように彼女の名前を呼んだ。当然届くはずがないけど。
「退きなさい!」
「今さら退くなら最初から来ませんでした」
ピエリは私をあざ笑って私の攻撃を防いだ。さすがのピエリも私の攻撃を簡単に防ぐことはもはや不可能だけど、自分自身に『倍化』の強化を集中したピエリは堅固だった。私には彼を倒すことも、突破することもできない。
でもジェリアが危険なら、状況を考えることはできない。
――天空流終結奥義〈月食〉
次元の向こうに隠れて認識できず、次元を引き裂く最速の剣撃を放つ。この至近距離では避けられない。
けれど。
「大事なことをむやみに使うんですね」
ピエリは読めない軌跡を平然と読み、魔力で剣に空間を斬る力を与えた。その剣が次元の向こうに隠れた双剣を受け流した。
「うぐっ、あ……!」
私の両腕から血が出た。ピエリが何かをしたわけではない。〈月食〉の反動を私の腕の筋肉と血管が耐えられなかったのだ。だから〈月食〉を使っていなかったのに。
「貴方を殺すのは今日の目的ではありませんが……せっかくチャンスが来ましたね」
ピエリの剣がボクの首を狙って動いた。
でもその瞬間、突然地面から岩が湧き上がった。強力な魔力が凝縮された岩だった。ピエリの剣は岩を半分食い込んで止まった。直後、彼の後ろにかすかな影が現れた。
――ハセインノヴァ式暗殺術〈筋肉切り〉
シドであった。特性からトンネルを作り、邪毒の渦を迂回したようだった。
しかも現れたのはシドだけじゃなかった。
―――――
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