強敵

「できるだけ早く役割を果たす。死なないように」


「ありがとうございます」


 ボクたちはすぐに引き受けた通りに動いた。


 決定を行動に移し始めるとほぼ同時に、臨時に安息領の奴らを阻んでいた氷壁が破壊された。さっき制圧した奴と似ていたり、もっと強い奴らが多数目についた。


「全力で行きます!」


〈冬結界〉の出力を最大に上げた。弱い奴らはそれだけで凍りついて戦闘不能になった。強い奴らも動きが目立って遅くなった。この程度なら他の騎士にも負担がないと思うほど。


 騎士たちもそれを感じたようだが……彼らは同時に他のことも感じたようだ。


「ジェリア公女。大丈夫ですか?」


「こんな魔力を維持し続ければすぐ疲れるよ。無理しないで」


 彼らはそれぞれの言葉でボクのことを心配していたが、ボクはわざと自信を持って微笑んだ。


「ボクは魔力量が膨大なのが自慢です。できるだけ早く奴らを始末してくださればいいです」


 実際、魔力消耗がかなり激しい方法であるのは事実だ。長期戦になるとボクでさえ耐えられない。しかし、長期戦にならなければいい。


 ――狂竜剣流〈竜王撃・巨竜〉


 巨大な魔力の嵐が安息領を襲った。奴らの三割がその一撃で戦闘不能になった。ローレースオメガの力が身体を再生させようとするのが感じられたが、〈冬結界〉の魔力が弱くなった肉体を氷結させて再生を遮断した。そして奴らの先頭と激突する瞬間、ボクは突き出した左手に一番先に捕まった奴を問答無用で凍らせた。そして奴をまるで棍棒のように振り回して他の奴らを吹き飛ばした。


 中途半端に力を節約して戦闘時間が長くなると、むしろ消耗が大きくなる。いっそ力を大きく消耗してでも、今回の敵を短時間で終わらせるのがもっとマシだ。


 もちろん安息領はさらに多く押し寄せるだろうが、どうせ奴らの頭数も無限ではない。最も効率的な方法を使えばいいだけだ。


〈竜王撃・尖竜〉が二人を一度に切り、広く展開した〈氷縛砕〉が五人の脚を粉砕した。その間、騎士たちも合計十人を倒した。安息領の奴らの強者が騎士たちに逆攻を加えようとしたが、ボクが奴ら全員の足を凍らせた間に騎士たちが奴らを制圧した。


 よし、このまま行けば……。


「なかなか相手のやり甲斐ありそうな奴だな」


「!?」


 突然後ろから声が聞こえた瞬間、ボクはためらうことなく剣を振り回した。振り回される剣に沿って強力な氷の槍が芽生えた。しかし、相手は腕を一度振るだけで氷の槍を破壊した。


 見た目は特別なことなどない男だった。いや、あえて言うとかなり疲れて見える印象が特別ではあった。まるで休まず残業を続けて疲れた人のような印象だった。現れた顔からは魔物の特徴が見えず、残りの身体部分は服と手袋で隙間なく隠されていた。


 しかし、奴から感じられる気配には魔物の気配がかすかに混ざっていた。


 他の騎士は……周りの牽制に集中しているのか。幸い、奴はボク以外には関心がないようで、他の奴らは騎士たちが確実に防いでくれている。


 多分奴はローレースオメガだろうが、他の奴らとは格が違っていた。多分もともと強かった奴がオメガになってもっと強くなったんだろう。


 ――狂竜剣流〈竜王撃・尖竜〉


 問答無用で斬撃を放った。ボクの最速の奇襲だった。しかし、奴は平然と拳でボクの斬撃を相殺した。そして次の瞬間には、奴の拳がボクの腹部を強打していた。


「がはぁ……!?」


 あまりにも衝撃が強くて体から力が抜けるところだった。それでも歯を食いしばって魔力を高めたが、奴は拳が凍りつく前にもう一方の拳でボクを殴った。だが、ボクの氷がその拳を防いだ。直後、振り回された剣と奴の蹴りが衝突した。


 続いた攻防は一瞬だった。ボクは全力の速度で剣を振り回し、〈竜王撃〉の斬撃と『冬天』の氷が台風のように奴に殺到した。しかし、奴は魔力が凝縮された拳と足で平然と対応した。いや、むしろボクが全力を尽くしたよりも速い連撃が時々ボクの攻撃の隙間に突っ込んだ。幸い最初の一撃ほど大きな打撃を受けるのはなんとか防いだが、ダメージの交換が一方的だった。


「はあ!」


 ――狂竜剣流〈竜王撃・牙突〉


 ボクが放った渦のドリルを、奴の拳から爆発した魔力が吹き飛ばした。直後、奴の手がボクの顔をつかんだ。ボクはそのまま後頭部から地に打ち込まられた。だがボクの手が奴の手首を握って〈氷縛砕〉を発動した。奴の腕は〈氷縛砕〉の破壊に魔力で耐えたが、凍りつくこと自体は防げなかった。


 ――『冬天』専用技〈剣の冬森〉


 無数の氷の刃が奴を狙った。その瞬間、奴は握られた腕を切断して抜け出した。その隙にボクは起き上がった。


 ――狂竜剣流〈竜王撃・双竜〉


 斬撃の渦が二つの竜の頭を生んだ。奴は二度の蹴りで〈双竜〉を相殺した。しかし、その時すでにボクは〈竜王撃・牙突〉で突進していた。


「なかなかだな」


 奴は残った手で〈牙突〉の渦を正面から受け止めた。さっき切断された腕があっという間に再生された。再生された拳が〈牙突〉の渦をぶん殴って霧散させた。


〈竜王撃・尖竜〉を放つために剣に渦を圧縮した瞬間、奴の拳がボクのあごを強打した。脳が揺れ、手から力が抜けた。


「くっ……!」


 魔力で強制的に体を整え、大量の魔力を凝縮した氷の槍を放った。だが奴はそれさえも破壊し、またボクの腹部に一撃を食わせた。口から血があふれた。


「公女から離れろ!」


 二人の騎士が側面から奴を襲った。しかし、奴の拳が彼らを吹き飛ばした。そして奴が地面を思いっきり踏みつけると、広がった魔力と衝撃が地震のように地面を揺らした。騎士たちとボクの間に落とし穴のような大きな穴ができた。


 その間、ボクはなんとかダメージを収拾し、再び剣を握った。そんなボクに奴がまた声をかけた。


「ワタシの攻撃にここまで耐えた奴は久しぶりだ。光栄に思え」


―――――


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