押し寄せる敵と対応

 ――狂竜剣流奥義〈竜王撃〉


 大きく振り回された剣が魔力の斬撃を生み、その斬撃が渦巻いて次第に体を膨らませ、ついに巨大な嵐になった。自分で少しは円熟したと胸を張って言えるほどの完成度で、無限の渦がボクを包み込んだ。


「強い奴が来ます。対応いたします」


「補助する」


 十夫長の宣言と共に騎士の隊列が再び変わった。ボクを先頭とする錐のような形だった。やはり騎士たちだな。狂竜剣流の特徴をよく知っている。


 仲間が並ぶなんて本来邪魔にしかならない、やっかい暴君の本質をな。


「――行くぞ!!」


 突進して渦を発射する。同時に安息領の方からも一人が前に出た。奴が抜いた巨大な剣が〈竜王撃〉の一撃を防御した。先ほど感じた強力な魔力の当事者だ。


 奴の重剣、そして魔力の流れはボクになじみのあるものだった。


「狂竜剣流の使い手か。我が家と関係がある奴らしいな」


「ふぅ……貴様らは自分たちが捨てた者をよく忘れたりする」


 大体どんな奴か分かる気がする。


 狂竜剣流を伝授される者は我が家の直系か、あるいは一部特殊な許可を受けた家臣のみ。多分あいつはその家臣の家柄の一つに属していた奴だろう。しかし、クソ親父は自分が育てた剣士さえも必要ならば道具として利用し、弊履のごとく捨てる。事例をすべて知っているわけではないが、そのような者がいることは理解している。


 理解したので、ボクは鼻を鳴らした。


「クソ親父の仕業をボクにかぶせるな、犯罪者。みっともないぞ」


 見え透いた挑発だったが、相手はまともに引っかかった。奴の魔力が高まったが、それに対して制御は乱れた。暴力的な魔力が噴き出した。


 正直に言うと、個人的には可哀想だと思う。そんな風に捨てられるのはクソ親父の悪行だから。ボクが助けることができる人はこっそり助けているが、ボクが使える権限と財産では限界がある。こんな者たちを救えなかったのは結局ボクの力が足りないからだろう。


 しかし、それが犯罪組織に入ることまで擁護するほどの理由にはならない。


「ふぅっ!」


 奴が斬撃の渦を作り出した。〈竜王撃〉に似ているが、まともに完成していない一撃だった。あれくらいまでたどり着いたということは、かなり有望な人材だったという意味だな。


 さらに、奴の体のあちこちに見える魔物の特徴は、ローレースオメガのもの。技は未完成だが、暴力的な魔力と出力が凄まじい威力を生み出した。


「無駄だ」


 渦巻いていた〈竜王撃〉の暴風の一部が圧縮された。それを剣に乗せて力強く振り回して解放した。鋭く圧縮され精錬された斬撃が放たれた。


 ――狂竜剣流〈竜王撃・尖竜〉


 斬撃が奴の不完全な渦を両断した。奴自身は避けたが、完全に避けられず肩を切られた。それでも奴は怒声を吐いて再び魔力を吐き出した。


「無駄だと言ったはずだ」


 ――狂竜剣流〈竜王撃・八方〉


 八つに分かれた嵐が奴の魔力を霧散させ、奴の手足を粉砕した。奴の剣が主人を失って飛んだ。それを左手で握りしめ、『冬天』の魔力で凍らせて粉砕した。


「大人しく逮捕されるように……」


「ぐああああああ!」


 話を終える前に奴が咆哮した。粉砕された手足の切り口から無数の触手が出た。いや、背中からもどんどん育っている。すでに人間の領域を外れていると主張するような光景だ。


 いや、〝ような〟ではないぞ。


「死ね、フィリスノヴァ!」


 一部の触手が融合して巨大な刃を作った。だが、〈竜王撃・尖竜〉がその触手ごと奴の腹部を両断した。今度は上半身の切り口から触手があふれ出て下半身の代わりをした。


 奴は触手と魔力を前面に出して突進しようとしたが、その瞬間ボクはすでに奴の胸に突っ込んでいた。


「ふっ!」


 ――『冬天』専用技〈氷縛砕〉


 対象を氷結させて破壊する技で、奴の心臓を直接破壊した。


「がはぁっ……!」


「その程度の能力なら、心臓を破壊しても死なないものだ」


 奴は死んではいないが、しばらく動きが固まった。その間に〈竜王撃〉の渦が奴の触手をすべて粉砕した。そして奴が魔物の力で心臓の修復に集中する瞬間、奴の身体の表面をすべて氷結させた。そして後方に投げると、騎士たちが奴を魔道具で捕獲した。


「恐ろしいですね。力の論理を掲げるフィリスノヴァ公爵家で最も有力な後継者と呼ばれるに値します」


「感嘆している余裕はありません」


 騎士の一人がボクに話しかけたが、ボクは冷静に言った。もちろん不快だからではなく、余裕を見せる状況ではないからだ。


 今のあいつは難しくなかった。戦っている間、騎士たちが他の奴らを牽制してくれたおかげで戦うことも楽だった。だが今のあいつと似ていたり、もっと強い奴らの気配がずっと押し寄せていた。いったい奴らの全力がどの程度なのかが分からない今、いちいち対抗して戦う消耗戦は危険だ。


 しかし、テリアの方とボクたちを分断しているのはピエリが大地に刻んだ断層。大きくて深いのは問題ではない。問題は断層自体に残留したピエリの魔力があまりにも濃く破壊的だということだった。物理的なこと以上にあちらとこちらを分断させる強力な障害物だった。


 ボクは決心を固めて十夫長に話しかけた。巨大な氷壁でしばらく安息領の奴らを遮断したうちに。


「お願いがあります。安息領の奴らはボクが相手にします。平騎士を五人だけボクに同行させてください。卿は残りの騎士たちと一緒にあの断層に残留した魔力を中和してください」


「いくら強いとしても実習生だけを前面に出すことはできない」


「そんなことを言う場合ではありません。気配を感じたと思いますが。このまま集まってくる奴らと戦い続けたら消耗して死ぬだけです。ボクと騎士たちが奴らを防ぐ間に断層を中和してあちらと合流した方が良いです」


 あちらにはピエリがいるが、ボクとテリアとピエリが全力で戦うなら、安息領の奴らは余波のため接近もできない。だから合流した方がいい。


 十夫長の決断は早かった。


―――――


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