分断された戦闘
「退きなさいよ!」
――天空流〈三日月描き〉
気づいた瞬間、私はすぐに全力の斬撃を放った。でもピエリは鼻で笑いながら剣を振り回した。
――蛇形剣流〈大蛇の牙〉
放たれたのは〈三日月描き〉と同様に巨大な魔力の斬撃だった。二つの斬撃が衝突して相殺され、魔力の爆発が周りを襲った。でも私もピエリも衝撃波など気にせず突進した。
同時に振り回した剣がぶつかる瞬間、ピエリは口元をそっと引き上げた。
「やはり切れ味だけは奥義級の〈三日月描き〉らしいですね。私の斬撃を完全に防ぐとは」
「ふん!」
余裕を見せるなんて。
ピエリは一本の剣を使うけど、私が使うのは双剣。一つの剣で彼の剣を受け止め、もう一つの剣で隙を狙った。けれど、ピエリは触れた剣をそのまま回転させて反対側の剣まで防御した。そして魔力を爆発させて私を押し出した。
――蛇形剣流〈蛇巣穴突き〉
――天空流〈月光蔓延〉
ピエリの多重斬撃を私の乱舞で相殺した。その直後、百人隊の騎士たちが一斉にピエリに飛びかかった。
誰かは近づいて斬りを。誰かは遠距離から魔力の斬撃や魔弾を。各自のやり方で、しかしお互いを邪魔しない連携だった。やっぱり高度に訓練された騎士たちだね。
しかし、ピエリは鼻で笑った。
「面倒ですね」
――蛇形剣流『倍化』専用奥義〈十頭竜牙〉
巨大な竜の頭を模した多重斬撃の束が十回放たれた。私に飛んでくる一つの頭は〈満月描き〉で相殺した。しかし、残りの九つの頭が騎士たちを襲った。彼らは各自の技術と力で〈十頭竜牙〉の威力を削ったけれど、結局完全に相殺できず斬撃に荒らされた。九十人の騎士が一瞬にして無力化された。
そのうち一人、ピエリの奥義に耐えた人がいた。百夫長さんだった。彼は竜の頭を構成する斬撃の束を受け流して打ち返し、被害を最低限に抑え、掻かれた程度の傷だけで耐え抜いた。でもピエリの強力な斬撃に対応した剣の方がボロボロになった。
「ピエリ・ラダス!」
百夫長がピエリに突進した。ボロボロの剣身に彼の魔力が重ねられ、以前よりも鋭く強い剣となった。
彼の特性は『鋼鉄』。ディオスと同じだけど、百夫長らしくその熟練度は格が違う。
「それなりによく精錬された魔力ですが……」
ピエリは百夫長さんの剣を軽く受け止めた。
「私は現役騎士だった時も万夫長でしたし、今はあの時よりも強くなりました。たかが百夫長の剣が私に届くと思いますか?」
「騎士が剣を振るうのは民を守るためだ。甘い敵を斬るためではない。貴様も騎士だったら知っているはずだろう?」
「……もちろん。とてもよく知っています」
ピエリは不愉快そうに眉をひそめた。
彼は騎士だった過去を思い出すのが大嫌いだ……と『バルセイ』で言及されたことがあった。百夫長さんに言われて思い出したんだろう。
ピエリが百夫長の剣を強く押し出した。でも百夫長さんは持ちこたえ、その間に私が側面を狙った。ピエリは舌打ちをし、自分の剣を『倍化』でもう一本作って私の剣を防いだ。
〈選別者〉を最大出力に高めた私がピエリに攻撃を浴びせ、百夫長さんが適切にピエリを牽制した。ピエリはそれらすべてを無傷で阻止したけれど、性急に攻撃することはなかった。
いや、攻撃に出る必要がなかったというか。
「そこから退きなさい!」
むしろ焦っているのは私だった。
ピエリはわざと守備を固めていた。その理由は明らかだ。私をジェリアのもとへ行かせないためだった。
私はジェリアの方の魔力反応を確認し、歯を食いしばった。
***
強烈な衝撃が大地を襲った時、ボクは反射的に『冬天』の氷壁を建てた。氷壁が衝撃波を防いでくれたおかげで、ボクも騎士たちも隊列を崩さなかった。だが氷壁越しから感じられる魔力反応だけでも非常事態だということが分かった。ピエリ・ラダスの魔力が感じられたから。
しかし、それに対応する余裕はなかった。
「今だ!」
安息領の奴らが押し寄せてきた。
テリアが保持していた浄化の通路。ピエリの一撃の衝撃波で周りの邪毒が一時的に散り、その通路も広がった。そこから安息領の奴らがどっと押し寄せていた。
「隊列を整備せよ!」
十夫長が指示を出し、騎士たちは正確に動いた。だがボクは騎士たちよりも前に出た。
今押し寄せてくる奴らは普段の雑兵とは違う。普通の安息領雑兵たちは十人が飛びかかっても平騎士一人に勝てないが、今押し寄せてくる敵はかなり強い。感じられる魔力の気配だけ見ると、平騎士より強い者も混じっているほど。ほとんどの兵士がローレースオメガだった上に、普通のオメガより強い奴も混ざっていた。
――『冬天』専用技〈冬結界〉
巨大な氷の木が育った。それを中心に巨大な『冬天』の結界が展開された。永久凍土の魔力が安息領の奴らの動きを鈍化させた。
「結界で奴らの動きを制約します。結界の外に出ないでください」
「ありがとうございます、ジェリア嬢!」
ボクは十人隊と一緒に戦った。
今のボクの力はもう百夫長以上。敵の戦力を考慮すれば、ボクが前方を引き受けた方が良い。その考えに従って前に出た。
騎士たちはボクのことを守るべき実習生だとは思わなかった。すぐボクの力と現在の戦力バランスを把握し、ボクを補助する形で隊列を展開した。騎士たちが防御と牽制を引き受け、ボクは強力な攻撃に集中して安息領の奴らを倒す陣形が完成した。
やはりプロだね。判断と連携のレベルが格が違う。単純な力の大きさ以上の存在たちだ。
そう思って微笑んだが、楽観的な気分ではなかった。強力な魔力が近づいてくるのを感じたから。
ボクは眼鏡を外してポケットに入れた。本気で力を発揮するために。
―――――
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