ケインの戦い

 暴主体が私の言うことを聞き取れたはずがない。しかし奴を傷つけたためなのか、それとも殺気を感じたのか、奴が私を睨みながら咆哮した。


「私の民を害そうとして無事に帰れると思うな!」


 私も奴に呼応するように咆哮した。もちろん奴の注意を私に集中させるための行動だ。そして奴の注意が私に向けられた瞬間、結界魔獣の力を展開させた。


 ――バルメリア式結界術〈ジオマールの封印剣〉


 結界の糸が細かく絡み合い、巨大な剣の形をした結界兵器を二本作り出した。建物ほどの大きさで、結界魔獣の力で構成されて血のように赤かった。剣の力が暴走体を押さえつけた。


「ク……ワァッ!!」


 暴走体の筋肉が膨らみ、魔力が沸いた。奴の拳が〈ジオマールの封印剣〉を破壊した。続いて結界魔獣の翼から赤い〈捕惡のもり〉が放たれたが、それも暴走体の魔力と拳に破壊された。


「ふぅっ!」


 飛びかかってバトルアックスを振り回した。同時に上からは結界魔獣が突撃した。だが結界魔獣の力が込められなかったバトルアックスは暴走体の肌を突き破ることができなかった。奴もそれを知っているらしく、私の一撃を無視して結界魔獣に向かって魔力砲を発射した。


 ――バルメリア式結界術〈テオカルのギロチン〉


 バトルアックスで結界を展開した。まるで斧の刃をさらに拡張したような巨大な刃の形だった。結界の基本的な空間断絶機能を応用して、自由自在に移動できる結界を剣のように活用する一撃だ。今度はそれで暴走体の太ももを切った。それでも傷が浅いせいか、暴走体は依然として私より結界魔獣の方に集中していた。


 構わないよ。浅くても切れるということはわかったから。


 もう一度攻撃。今回は〈テオカルのギロチン〉と〈ジオマールの封印剣〉を同時に発動する。両方とも結界魔獣の力で強化された。〈ジオマールの封印剣〉が暴走体の肩を貫き、〈テオカルのギロチン〉が奴の足を深く切った。切断には至らなかったが、激痛と戸惑いで暴走体が悲鳴を上げた。


 その瞬間、結界魔獣を突進させた。暴走体は魔力をたっぷり込めた拳で結界魔獣を殴り飛ばしたが、結界魔獣は気にせずに奴にぶつかった。そして暴走体と触れ合った状態で翼を広げた。羽毛の一つ一つに〈テオカルのギロチン〉が発動し、小刃が形成された。暴走体は羽毛の刃にめった斬りされた。


 私はその間に飛びかかろうとした。しかし暴走体の行動がもっと早かった。奴は自分をめった斬りする結界魔獣の頭をつかんで地に投げつけた。奴の全身の傷から流れてきた血が突然空中に浮かんで、血の滴の魔弾となって結界魔獣と私に浴びせられた。結界魔獣の体に穴があいた。私は防御結界で防いだが、結界を貫通した魔弾が肩にかすめた。


 私は〈ケインの刑場〉の力をこの辺だけさらに強化した。まだ味方を識別して影響を排除する制御は不可能だが、単純に一部の圧力だけを増加させる程度はできる。暴走体の動きがもう少し遅くなり、奴が噴き出す魔力が結界の圧力に勝てず相殺された。でも奴は依然として凶暴な勢いで私と結界魔獣を攻撃しようとした。


 暴走体と結界魔獣がまた激突する瞬間、私はそちらに突撃した。


「来い!」


 結界魔獣の形が崩れた。魔力生命体である結界魔獣は形状が固定されていない。無定形の力の塊になった結界魔獣が私を包んだ。私を守る服になり、バトルアックスを強化する魔力になり、結界を増幅する触媒になった。


「はあっ!」


 赤い〈テオカルのギロチン〉が被せられた斧の刃が暴主体の拳を切った。続いて〈捕惡のもり〉をその腕に集中し、もう一度の斬撃でその腕を切り取った。しかし暴走体は私の攻撃に抵抗する代わりに、残りの腕で私を殴った。奴の腕を切り取ると同時に、奴の大きな拳が私の顔を強打した。


「くっ……!」


 クッソ、痛いね。結界魔獣の結界の力のおかげで致命的な打撃にはならなかったが、瞬間的に頭が揺れた。暴走体は腕が切断された切り口から噴き出した血を魔弾に変えて私に浴びせた。しかし結界魔獣の結界の糸が展開され、血の弾幕を防ぎ、その間に私は正気に戻った。


「終わらせてやる!」


〈捕惡のもり〉を切り口に集中した。切り口の細胞を無理に拘束して再生を妨害したのだ。それだけでなく、切り口の位置が空間に固定され、奴の動きにも制約が生じた。にもかかわらず奴は残った拳に巨大な魔力の塊を形成した。奴の魔力の塊と私の〈テオカルのギロチン〉が正面から激突した。奴の魔力の塊が割れて拳が切られた。


「クラッ!?」


 奴は戸惑いながらも口に魔力を集めた。凄まじい濃度の魔力砲だった。正面からやられば跡形もなく消滅するだろう。しかし、結界術師の私は防御のスペシャリストだ。


 ――バルメリア式結界術〈デリンの格子〉


 わざと私が直接結界術を発動し、結界魔獣の力は少し入れる程度にだけ使った。それでも一層強力になった〈デリンの格子〉が魔力砲を受け流した。その間、結界魔獣の力のほとんどをバトルアックスに集中した。〈テオカルのギロチン〉が真っ赤に染まった。渾身の横斬りが奴の腰を切断した。


 ――バルメリア式結界術〈ジオマールの封印剣〉


 もう一度二本の封印剣を具現して真っ二つになった奴の体をそれぞれ貫いた。下半身が結界の力で完全に封印された。上半身は激しく魔力を放出して抵抗したが、結界魔獣の力が集中した封印剣が奴の魔力を抑制した。


「終わりだ」


 渾身の縦斬りで暴走体の上半身を切った。奴の脳と心臓が一撃で破壊された。それでも奴の膨大な魔力が細胞を再生しようとしたが、結界魔獣を真っ二つにした上半身に被せた。物質を分解する力が奴の細胞を攻撃した。まだ再生しようとするのが感じられたが、このままでは結局結界魔獣の力が勝つだろう。


 ……終わった。


―――――


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