ケインの力の成長
――バルメリア式結界術〈捕惡のもり〉
結界の糸を大量に展開した。物理的な攻撃能力はないが、対象を貫いた後は力場で動きを拘束する技だ。だが暴走体には糸自体が通じず、オメガたちは剣で糸を切った。雑兵の魔力量では糸を切ることはできないが、やはりオメガは雑兵レベルではないようだ。
「プランBに行く。全軍準備せよ!」
防御を固めて奴らの前進を阻止することは私一人でも可能だ。しかし、防御ではなく討伐になれば私の力だけでは不可能だ。でもここに集まった戦力をすべて活用すれば不可能ではないと判断した。
本来なら王子として警備隊に任せて、私は後方から指揮を取るべきだが……今はそうはいかない。警備隊の戦力が足りない。警備隊が無能なのではなく、単に数が足りない。アカデミーの警備隊は本来このような状況を想定した組織ではないので規模が小さい上に、四つの門に戦力が分散しているから。
そして『バルセイ』のストーリー通りなら、未来にまともな兵力の支援なしに私をはじめとする攻略対象者と主人公のパーティーだけが敵を迎えて戦う状況が来る。そのような状況に備えるためには私の力を検証し、さらに強くしなければならない。
テリアさんはそのために三年前に私にヒントをくれたのだと、今では理解できる。
――バルメリア式結界術〈ケインの刑場〉
〈クドリアンの闘技場〉の上にもう一つの結界を重ねる。
バルメリア式結界術は先祖の知恵の精髄。そして現代の継承者は次の世代のために自分の精髄を体現した技を残す。つまり、この結界は私が開発し、私に最適化されたものだ。
「くっ!?」
「これは……!」
ローレースオメガたちの動きが目立って鈍くなった。暴走体は大きな影響を受けなかったが、何かイライラしたように咆哮するのを見れば何ともないわけではないだろう。
〈ケインの刑場〉はただ濃度が途方もなく高い結界に過ぎない。その濃度の効果で内部にものすごい圧力がかかることはあるが、それだけ。強力な制圧力はあるが、そのための技ではない。
私のバトルアックスに血のように赤い光源が宿った。私の奥の手である結界魔獣、魔力がある限り死なず強力な力を持つ魔力生命体だ。本来は結界兵器の中でしか生きていられない奴だが……三年前、テリアさんが私に重要なヒントをくれた。
「出て来い」
結界魔獣が解放された。バトルアックスから飛び出した赤い光源があっという間に膨れ上がり、巨大な鳥の形になった。顕現した結界魔獣は〈ケインの刑場〉と共鳴した。結界全体に血のように赤い光が漂った。
「キャオオオオーー!」
暴走体が咆哮して魔力を放出した。その魔力が結界と結界魔獣の力を押し出した。やはり暴主体には間接的な圧力などでは通用しないな。しかし、結界魔獣の真価はたかがそんな圧力などではない。
「警備隊は結界外でバックアップせよ。そして今この結界の外にいる安息領の兵士たちを迅速に制圧せよ!」
指示を出すと共に、結界魔獣を暴走体に突撃させた。
暴走体が拳を突き出した。結界魔獣は飛行軌道を変えてそれを避け、暴走体のわき腹をくちばしで刺した。暴走体は反対側の手で結界魔獣の頭をつかんで止めた。しかし、結界魔獣は触れるだけで物質を粉砕する魔獣。暴走体の手のひらから血があふれた。暴走体はすぐに結界魔獣を投げつけた。しかし結界魔獣はすぐに反転して突進し、暴走体はその勢いに押された。
悪くない状況だが、それだけで済むわけではない。
「今だ!」
オメガたちが結界魔獣を無視して私に飛びかかった。結界と結界魔獣の力が奴らを抑えたおかげで奴らの動きは非常に鈍かった。でも兵士全員がこの空間で動くだけでも思ったよりすごいというか。
しかも……。
「ふっ!」
バトルアックスを振り回した。オメガは剣で防御したが、力に勝てず飛ばされた。しかし他の二人のオメガが同時に私の首と肩を狙った。結界の糸に防御と逆襲を同時に遂行してあいつらを吹き飛ばす間、両側面を他の奴らが狙った。剣を避けたが、バトルアックスを振り回すスペースがなかった。仕方なく結界の糸の力場で奴らを制圧し、後ろに大きく後退した。少し前まで私がいた場所にオメガたちの魔弾が浴びせられた。
奴らは大きく弱体化したが、とにかく多い。それに私も万全の状態ではなかった。結界魔獣は放しておくだけで莫大な魔力を消耗する両刃の剣であるため、分身を全て解除したし身体強化も不完全だった。まだ私の力が足りないために発生したペナルティだ。
その上、まだ〈ケインの刑場〉は完成度も熟練度もむちゃくちゃで制御がうまくいかない。最大の問題は味方識別ができないことだ。そのため警備隊は結界外でバックアップするか結界外にいる敵を相手にする程度しかできなかった。
だからといって負けるつもりはない。
「はあっ!!」
バトルアックスを振り回し、結界の糸を放ち、時には魔弾を撃つ。すべての攻撃がオメガを牽制し、圧倒し、後退させた。しかし奴らは器用に攻撃を受け流して致命傷を避け、倒れないままずっと私に飛びかかってきた。
だが奴らも状況にイライラしたのか、一人が口を開いた。
「王子なら王子らしく後ろで偉そうにいろ!」
「五人の勇者の伝説でも復習して来い、テロリスト」
奴の戯言を一蹴してバトルアックスを高く振り上げた。巨大な斧の刃に赤い魔力が絡まった。結界魔獣の魔力だった。バトルアックスを地面に叩きつけると、巨大な爆発のような衝撃波が広がった。周辺にいたオメガがほとんど全員飛ばされた。特に私と近くにいた奴らはその一撃で完全に意識を失った。しかし、残りは再び立ち上がって姿勢を整えた。
「貴様ら全員ここから逃げられないぞ」
奴らが飛びかかるより先に、結界の糸を四方に展開した。
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