テリアに対する心
「前世で私は魔力も魔物もない世界に住んでいたの」
原因不明の不治の病を患った。一生を自由ではない人生を送ったけれど、そんな私も外を夢見ることができるようにしてくれる道具があった。それが私に世界を見せてくれる窓であり、その窓がある日私に大切な縁をもたらしてくれた。
「『バルメリア聖女伝記』。私が一番好きだったゲームのことよ。えっと、そのゲームってことは……作られた話を読むだけでなく、直接登場人物を動かして話を進める遊びなのよ」
多くのことを話した。ほとんどはつまらない前世の人生の物語から、その人生の一番のやりがいだった『バルセイ』の物語まで。『バルセイ』のストーリーについてもほとんどを語ってた。……人によっては少し傷つくかもしれないラスボスたちの正体を除いて。
いや、これだけは本当にしょうがないんだから。ラスボスはネタバレだから! って幼稚な理由を除いても、今この場で話せば問題が生じる可能性がある。そしてその一部はラスボスになる可能性がすでにほとんどなくなったし。何より……
……そうだ。
『バルセイ』のラスボスの一部は、今ここにいる。
……あくまで安息領とピエリの陰謀に巻き込まれただけだけど、自ら招いた部分も少しあった。しかし、その自ら招いた部分は今この現実にはない。だから大丈夫。
まぁ、それ以外にもわざと飛ばしたのはいくつかあるけれど。例えばトリアがゲームでは私を暗殺しようとしたとか。そんなこと言っても心が痛いだけで、何の役にも立たないじゃない。
すべての話が終わるまで、誰一人も口を開かなかった。淡々と……って言うには表情変化がダイナミックすぎだったアルカとリディアも、表情どころか眼差しさえ変わらないジェリアとケイン王子も、そして各自のやり方で反応する人々も。
ついに話が終わった後、最初に口を開いたのはトリアだった。
「やっと納得できますね。お嬢様は八才の時に急に人が変わりました。まだ信じられないという気持ちはありますが、お嬢様が急に変わった理由としては納得できると思います」
「考えてみれば入学してすぐボクに言いがかりをつけたし、いろいろ見つけて見事に解決したんだな。そういうことができた理由としてはつじつまが合っている」
「リディアを盛り上げてくれたことも全部知っていたからだったよね。リディアにも可能性があるって……」
トリアの後はジェリアとリディアだった。
……いや、ちょっと待って!?
「みんな……信じてくれるの? こんなバカげた話を?」
「むしろ今までの君の行跡やその不思議なほど強い力こそバカげた話だったぞ。そこに隠された裏事情もこの程度バカげた話であってこそ収支が合うだろな」
ジェリアは豪快に笑った。大したことではないという態度だったけど、私にはそれが本当にまぶしく見えた。
「リディアは……テリアでよかったと思うよ。テリアはゲームの知識を利用したって……そのせいでリディアに申し訳なさそうだけど、全然違うの。それはいくらでも違う風に……悪く活用することもできる記憶だったでしょ。でもリディアはテリアに救われただけだった」
「あ、だが気に入らないことが一つあるんだな」
ジェリアの言葉に私は緊張した。いよいよそれが来るよね。
しかし、ジェリアの言葉を引き取るのはアルカだった。
「……お姉様が中ボスだったってことですよね?」
「えっ? いや、それは重要じゃないでしょ?」
瞬間的にツッコミを言った。でもアルカは私のツッコミに返事さえせず、ただジェリアを静かに見上げた。そしてジェリアが頷くと、悲しい目でまた私を振り返った。
「お姉様がそんなに苦しんでいたのに誰も助けてくれなかったなんて。そういうのはひどいじゃないですか」
「いや、助けてくれた人たちはいたわよ。ただ私がそのすべてを振り切って一人で狂ってしまっただけよ。それより気に入らないというのがそれだったの?」
「一体何を期待した?」
ジェリアは厳しい視線を送った。まるで私を責めるような眼差し。しかし責める部分が、私が思っていたこととは全く違っていた。
「友人として当ててみよう。君、この世界がゲームの世界だと……ボクたちがゲームの登場人物にすぎないという事実に傷つくと思ったよな?」
言葉が出なかった。まさに的を射る言葉だったから。
ジェリアは苦笑いしながら手を伸ばしてきた。頭をなでようとしているのかと思っていた私の額に強烈な衝撃が走った。ジェリアのデコピンだった。
「痛っ!?」
「痛めよ。余計な心配をする奴にはこれくらいの罰は必要だろう」
ジェリアは私の首をなでた。正確には包帯を。彼女の目が悲しそうに歪んだ。
「その痛みが遠いことのように感じられるのか? 違うだろ。今君は観客なのか? それともこの世界の中で生きていく一人の人間なのか? ……もし君が本当にボクたちをただのゲームというものの登場人物に過ぎないと思ったなら、ボクたちと距離を置いて接していたら、ボクたちは傷ついたかもしれない。しかし、君はそうではなかった」
「いつも一番先に進んで、一番傷つく御方でしたね」
ロベルが口を開いた。真剣な顔の中で赤い瞳が熱く燃え上がった。その心の火があまりにも暖かくて……少し泣きそうな気分になった。
ジェリアは頷いた。リディアは強い目で口を開いた。
「そのゲームということとこの世界の正確な関係は分からないよ。それは貴方も知らないじゃない。重要なのは貴方はいつも全力で生きてきたし、真剣にリディアたちに向き合ったということよね。その本心を感じないほどのバカはここにいないよ。……感じるだけの時間が足りなかった人はいるけどね」
本心を感じた。その言葉が胸に染み込んだ。
私は一人だったことがなかった。しかし、いつも重要なのは一人で抱きしめていた。寂しいとも、手に余るとも思わなかったけれど……何ともなかったと言うと、それは嘘だろう。
分かってほしかったわけではないけど……その言葉が思ったより深く染み込んで、少し涙がにじんでしまった。
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