死闘の終わり

 斬撃と槍が幾度も激突した。ほとんどの攻撃はお互いに相殺された。けれど斬撃を放つよりも邪毒獣が槍を作り出す速度がやや速かった。いくつかの槍が私の体にかすめ、時には熱い熱気が私の肌を焼いた。


 でも私は攻撃に耐えながらさらに前進した。


 ――天空流奥義〈太陽描き〉


 剣を振り回して巨大な魔力の球体を放った。


 見た目は〈満月描き〉に似ている。でも本質的には違った。徹底的に球体自体が斬撃の暴風である〈満月描き〉とは異なり、〈太陽描き〉は目によく見えないほど細かく砕けた魔力の斬撃を周辺に撒き散らしていた。


 細かく砕けた斬撃が浸透して魔力を斬りつけることで術式を無力化する技〈太陽風〉をまき散らし続けること、それが〈太陽描き〉の特徴だ。


 果てしなく撒かれる斬撃が邪毒の槍と熱気を無力化した。でも邪毒獣の本体は健在だった。しかも〈太陽描き〉が槍と熱気を無力化することを確認するやいなや、奴は戦術を変えた。


 ――第七世界魔法〈千変の形〉


 無数の腕と触手が伸びた。本来ならそんな術式ですら〈太陽描き〉の前では無力化するだろうけど、やっぱり異世界の道理だからか。奴の肉体に作用する技はまともに無力化できなかった。


 腕を弾き出して触手を切る。変形した肉体から放たれる怒涛のような連続攻撃は早くて強かった。でもその程度の攻撃には対抗できる。


 それに私は一人で戦うのじゃない。


 ――第七世界魔法〈千変否定〉


 再びイシリンの波動が広がった。邪毒獣の増えた腕と触手がすべて砕けた。ついに奴の右肩側に到達した瞬間、浄化神剣レプリカの刃先に大量の魔力を集中する。


 魔力が集束された刃先で邪毒獣の肩を刺した。直後、刃先に集束された魔力を〈満月描き〉として解放した。爆発する魔力が邪毒獣の肩を大きくくり貫いた。同時に〈太陽描き〉の魔力を左手の栄光の剣に集束し、邪毒獣の首筋に突き刺した。高密度に集中した魔力が奴の首筋を大きく削った。


【うおおおおお!】


 無数の邪毒陣が再び現れた。〈太陽描き〉の魔力を攻撃に変換したせいで隙が生じたのだ。今回は巨大な火の玉の弾幕だった。トリアが〈傀儡の渦〉で火の玉を無力化しようとしたけれど、今回は邪毒獣も甘くなかった。火の玉が〈傀儡の渦〉の炎風を弾き出した。


 私は防御を度外視して突進した。


 ――アルカ式射撃術〈ホシクモ〉


 アルカの支援射撃が火の玉の弾幕を相殺した。相殺できなかったいくつかの火の玉はただ体に魔力をまとって正面突破した。熱い炎が服と肌を燃やしたけれど、魔力の防壁と再生力で揉み消した。


 しかし邪毒獣は私が無理やり突進するのを見て後ろに下がった。同時に展開された無数の邪毒陣が火の玉や邪毒の槍を大量に吐き出した。私の前進に理由があると判断して牽制しようとしているのだろう。


 ――テリア式天空流〈月光蔓延二色天地〉


 全身全霊の乱舞ですべての攻撃を打ち返した。魔力が繰り返し激突して爆発が起き、その爆発がより一層邪毒獣の攻撃を牽制した。でも全力で迎撃していたので私も動けなかった。


 動く必要もなかったけど。


 いつの間にかトリアが邪毒獣の足元に近づき、アルカは邪毒獣の背後を取った。最大級の魔力が二人の攻撃手段に圧縮されていた。


 ――極拳流終結奥義〈根源の瞳〉


 ――アルカ式射撃術奥義〈天国の虹〉


 極限まで力が圧縮された拳が邪毒獣の腹をぶん殴り、巨大な光線のような砲撃が後頭部を攻撃した。二人の最強の技だけど、それらすらも邪毒獣に大きな被害を与えることはできなかった。でも邪毒獣の体を前に曲げさせることができた。そのおかげで奴の攻撃の勢いが途絶えた。


 その隙を狙って前へ。そして一度に扱える魔力すべてを浄化神剣レプリカに集束した。


 浄化神剣レプリカの力が原本より劣るのは剣の完成度が原本に及ばないため……ではない。イシリンの変身と模倣能力は完璧で、剣の機能も完全に複製された。というのが問題だっただけ。


 浄化神剣の権能は邪毒の影響を受けたすべてのものを破壊すること。そして浄化神剣レプリカはイシリンの力で構成された。つまり、レプリカ自体がなのだ。それでも普段の出力ではギリギリ問題ないけれど、剣本来の力を使えばすぐに自らの力で自滅してしまう。


 でもたった一度なら。浄化神剣レプリカの消滅を覚悟し、たった一撃なら原本の力を完全に発揮できる。


 ――浄化神剣レプリカ、完全開放


 きらびやかな輝きが結界の中を照らした。それだけで邪毒が消滅し、邪毒獣の威勢さえ萎縮した。


 その奇跡の力をすべて斬撃に変える。


 ――天空流〈三日月描き〉


 巨大な斬撃が邪毒獣の抵抗をすべて粉砕し、胴体に食い込んだ。そのまま奴を真っ二つにする軌道だった。けれど奴は〈千変の形〉で浄化力に侵食された部分を捨て、新しい肉体を作り出して破滅を避けようとした。


【ぐああああ……!】


 でもそれも完全じゃなかった。結局奴の右腕が切られた。切り口に残留した浄化神剣の力が奴の体を急速に破壊した。


 ――天空流〈一つの星〉


 消滅した浄化神剣レプリカの代わりに、魔力が圧縮された魔力剣を手にする。そして今の私はたった一度しか使えない最強の一撃を、今この瞬間に放つ。


 ――天空流終結奥義〈月食〉


 空間を越えて、次元さえ超越する絶技。剣が異空間に隠れてしまって認識できず、次元を切り裂く剣撃は防御もできない。そしてその速度は最速。


 それに対し、邪毒獣は残りの左腕で巨大な魔槍を作り出した。凝縮された魔力と熱気の威力はこれまでで最高だった。


 次元を斬る刃と地獄より熱い魔槍が交差して――決着がついた。


―――――


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