浄化能力の戦い
「ふん……本当に、そうかしら?」
邪毒獣の握力に体がきしむ渦中にも、努めて笑いながら奴の言葉に反論する。けれど奴はそんな私がおかしいと言うように笑った。
【クフフ、隠そうとしているんじゃのぅ? 無駄なのじゃ。結果が結果なのじゃ】
トリアとアルカは今でも私を救うために邪毒獣の腕を攻撃していた。でも彼女たちの攻撃は少しも効果がなかった。
トリアの〈傀儡の渦〉はエネルギーだけに通じるらしく肉体には使えないようで、彼女の炎風やアルカの矢は邪毒獣の皮膚を貫くことができなかった。しかもさっき私が残した大きな傷に攻撃を加えてもその傷を広げることさえできなかった。
けれど、私は依然として笑った。
「お姉様を放して!!」
アルカの〈星の翼〉が一つになった。無数の矢の翼が一つの巨大な矢となった。〈空に輝くたった一つの星〉の矢の形。その上、『万魔掌握』で習得した多様な特性が入り混じってまるで虹のような色を帯びている。
――アルカ式射撃術奥義〈天国の虹〉
矢というよりも、まるで巨大な光線のような〝砲撃〟だった。
虹色の一撃が邪毒獣の右腕の傷に直撃した。狂暴な魔力が奴の腕を大きく削った。腕を完全に切断したり粉砕するまでには至らなかったけれど、瞬間的に奴の指から力が抜けた。その隙に手のひらを蹴って抜け出した。
「ありがとう、アルカ!」
奴の手のひらを蹴った反動として向かった所は――上空。
――『浄潔世界』専用技〈浄純領域〉
光が降臨した。
いや、実際にはただ純白の魔力が上空を埋め尽くしただけ。けれどその光がまるで神聖な何かが降りてくるように見えた。魔力そのものの神聖で澄んだ感じのせいでなおさらそう見えるのだろう。
『浄潔世界』の最強の浄化力が上空全体を埋め尽くした。上空に展開されていた無数の邪毒の槍が〈浄純領域〉の力で浄化された。
奴に致命傷を負わせるのは難しくても、捕まった時に抜け出すこと自体はそれほど難しくない。それでもじっとしていたのは〈浄純領域〉のための魔力を集めるため。本来はそれに加えて抜け出す魔力まで集めてから行動を取ろうとしたけれど、アルカのおかげでそのような手間が減った。
そして〈浄純領域〉は単純に邪毒を純粋な魔力で浄化するだけではない。
――『浄潔世界』専用技〈審判の槍〉
上空に展開されていた無数の邪毒の槍。それらすべてが神聖な浄化の槍に変わった。数千……もしかしたら一万本を超えるかもしれない無数の槍を、全部一気に邪毒獣に発射した。
邪毒獣は降り注ぐ聖槍の雨を前にして笑い出した。
【少しはやり甲斐がありそうじゃ!】
巨大な邪毒のカーテンのようなものが展開された。最強の浄化能力である『浄潔世界』の魔力で構成された聖槍さえも一つでは突破できないほど強力な防御技だった。でも数十発が穴を開け、百発がその穴を広げ、再び三百発がカーテンを引き裂いた。その後のすべての聖槍が邪毒獣に直撃した。
ドドドドドッ! と着弾の音が続くのがしばらく。〈審判の槍〉の攻勢が終わった時はすでに、あまりにも多くの聖槍に遮られ邪毒獣の姿が見えもしなかった。
けれど、その中にいる奴の気配は依然として健在だった。それだけでなく反撃を狙う余裕さえあるようだった。突然私の周りに邪毒の槍がいっぱい現れたのだ。
「お嬢様!!」
「お姉様、危な――!」
「大丈夫よ」
四方から邪毒の槍が私を刺してきた。あまりにも簡単に私の体が貫かれた。
でもその次の瞬間、すべての槍が白く染まった。『浄潔世界』の魔力が邪毒の槍を浄化したのだ。
「急いだのかしら。さっきのように物理力を持った槍なら私に被害を与えることができただろうけど、今の槍は純粋な邪毒の侵食だけを狙った物だよね? こんなことでは私に何の影響も与えないわ」
【……面白い。実に面白いのじゃ】
邪毒獣の声がこぼれた。そして莫大な邪毒が溢れ出た。
『浄潔世界』の技なら邪毒を吸収してさらに強くなる。したがって普通なら邪毒で対抗してもますます強くなる槍が奴を制圧したのだろう。けれど今の邪毒はあまりにも濃密で強かった。〈審判の槍〉が浄化し吸収するより速い速度で〈審判の槍〉を腐食させて崩した。
その下から明らかになった邪毒獣の姿は……思ったより元気だった。『浄潔世界』の浄化力に純粋な物理力まで加わった槍だったけれど、奴の体にあけた穴は早くも埋められていた。その上、奴から感じられる強大な力も相変わらずだった。
……ちっ。やっぱり浄化神剣レプリカの力でなければ浄化系の最強である『浄潔世界』でも大きな被害を与えることはできないのかしら。
【認めるのじゃ。キミはなかなか相手にする甲斐があるようじゃのぅ】
「全然ありがたくないわよ!」
魔力をできる限り高め、すぐに奴に向かって突進した。トリアとアルカも私に歩調を合わせて攻撃の準備をした。
くだらないことをする暇は与えない!
だけど……奴はあえて暇なんて必要とする存在じゃなかった。
【ワシも少しは楽しむようにするのじゃ】
何の前兆もなく、巨大な幾何学的な文様が私の突進を防いだ。
これは……邪毒陣?
――第七世界魔法〈赤天の威容〉
邪毒陣から半透明で巨大な形状が飛び出した。あれは……竜の頭?
巨大な竜の頭が私の剣を噛み締めて止まった。必死になってもびくともしなかった。すぐ『浄潔世界』の魔力を浴びせて弱体化させ剣を抜いたけれど、その隙を逃す邪毒獣ではなかった。
ドカン!! と、まるで爆発するかのような轟音が鳴った。奴の拳が私をぶん殴る音だった。全身が折れそうな激痛と共に、私の体が後ろに飛ばされた。けれどトリアが飛んできて私を受け止め、アルカの射撃が邪毒獣を牽制した。
それをまったく気にせず、邪毒獣は笑った。
【光栄に思ってもいいのじゃ。ワシに少しでも本気を出させたのじゃ】
その言葉と共に、邪毒獣の体が変異を起こした。
―――――
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