応援の参戦

 状況に変化を起こしたのは私でも、アルカでもなかった。


【うむ?】


「!?」


 私と邪毒獣が同時に目を向けた。結界の中に進入する大きな魔力の気配が感じられたのだ。


 熱くて激しい炎風が吹き荒れた。


「お嬢様!!」


 ちょうど邪毒獣がまた発射した邪毒の槍が炎風と激突した。炎風はその衝撃をすべて受けることができず墜落してしまったけれど、邪毒の槍も粉砕され散った。


 墜落した炎風が私の傍に近づいてきた。


「トリア!?」


「お嬢様、無事でしたね」


 トリアは目で邪毒獣を警戒したまま言葉だけを私に投げかけた。すでに彼女の両腕は魔力と完全に融合して炎風になっていた。彼女の最大の戦闘形態である〈炎風の巨人〉だ。


 どうしてここに、とかの質問はしなかった。そもそも今回の戦いでトリアには明確に限られた役割がなかったから。彼女の役割は状況が悪い場所を支援することであり……彼女ならきっと邪毒獣と戦う私の傍に来るだろうという、予感とも言えない確信があった。


【おお、面白いおもちゃが増えたのじゃ】


 邪毒獣は依然としてあざ笑うだけだった。本当に腹を立てる態度だけど、トリアはむしろ少し微笑んだ。


「油断してくれていいですね」


「……そうだね」


 何だろう。なんだか大人の貫禄みたいなのが感じられる。……こんなのんびりした考えができるのも奴の油断のおかげだと思うとちょっと妙な気分になる。


 けれど、邪毒獣が私たちを見下すのも仕方がない。それだけの力の差があるから。トリアの力ではその差を覆すことはできない。


 ……そう思ったのに。


 ――トリア式融合技〈傀儡の渦〉


 邪毒獣が邪毒の槍を二発同時に発射した瞬間、トリアも炎風の渦を起こした。激突するやいなや渦が槍の一部と同化し、槍の軌道が大きくずれた。


「今です!」


 トリアの叫びとほぼ同時に、私は雷になって邪毒獣の目の前まで一気に移動した。


 ――天空流〈三日月描き〉


 浄化神剣レプリカの破壊的な浄化力が巨大な斬撃に化した。邪毒獣は小さく歪んだ左手を差し出した。まるで爆発する火山のように噴き出した邪毒が〈三日月描き〉を相殺した。


 もう一度剣を振り回そうとした。けれど邪毒獣がまた邪毒の槍を放った。その槍はかろうじて相殺したけれど、少し速いテンポでもう一歩飛んできた。


 その瞬間、トリアが私の傍に飛んできた。


 ――極拳流奥義〈深遠の拳〉


 炎風の魔力が極限まで凝縮された拳が邪毒の槍と激突した。集中した力が邪毒の槍に少し食い込んだ。直後〈傀儡の渦〉が邪毒の槍と同化し、槍の力を分散させて槍を崩した。


 トリアが『融合』の能力をあんなに活用するのは初めて見た。敵の力の一部と同化するだけでも攻撃をそらしたり、小さな隙を活用して攻撃を完全に無力化する活用法なんて。力の大きさも私という規格外を除けばかなりのレベルだけど、その力を扱う技術の熟練さがもっとすごかった。


 おかげで私はまた邪毒獣を攻撃する余裕ができた。


 ――天空流〈流星雨〉


 右手では浄化神剣レプリカの破壊的な浄化力を、左手では『万壊電』と『獄炎』の魔力が入り混じった紫光技の力を。二つの力を猛烈な突きの弾幕として浴びせた。邪毒獣は巨大な右腕で邪毒を吐き出して防御したけれど、〈流星雨〉の無数の攻撃が奴の邪毒に隙を作り出した。


 ――天空流奥義〈空に輝くたった一つの星〉


 浄化神剣レプリカ経由で、莫大な魔力を凝縮した魔力剣を作り出した。


 扱える魔力量をほぼ限界まで一つの形状に凝縮する奥義。力の密度と大きさだけで言えば天空流でも最強に近い技だ。


 その浄化の魔力剣を精一杯撃った。


 邪毒獣が展開した邪毒をすっかり吹き飛ばし、奴の巨大な右腕に着弾した。残念ながら完全な破壊には至らなかった。けれど、奴の巨大な右腕に骨が現れるほど大きな被害を与えた。その上、浄化神剣の魔力が奴の血と傷を燃やしながら沸き上がる音を立てた。


【なかなかじゃのぅ】


 相変わらず余裕のある奴に向かって、遅滞なく剣を振り回す。致命傷を負わせるまで何度でも続ける勢いで。


 でも奴は依然として邪毒の槍を放つだけだった。私の剣が槍を迎撃し、トリアが槍の軌道を外し、時には後方からアルカが強力な射撃を続けて槍を無力化した。けれども、奴がまるで私たちのペースに合わせるように邪毒の槍を発射するだけでも進撃が阻まれてしまった。


 これをひっくり返すためには――。


「トリア!」


「はい!」


 トリアの炎風が二本の邪毒の槍を侵食した。彼女の力は槍の軌道を百八十度ひっくり返した。次に飛んできた邪毒の槍がそれらと衝突し、強烈な爆発でお互いに相殺された。


 その間私は剣を振り回し、〈雷鳴顕現〉の力で雷電を起こした。浄化神剣の斬撃が中央を切り裂き、空間全体の雷電が邪毒獣に浴びせられた。


 隙を狙ってかなり本気で放った攻撃――だけど、邪毒獣の余裕は消えなかった。


【急ぐのはダメなのじゃ】


 空間を埋め尽くした雷電を邪毒の槍が貫いた。


 一度に二発。一つは肩、もう一つは脇腹にかすめた。邪毒自体は『浄潔世界』のおかげで平気だけど、魔力が凝縮された槍自体の物理的な破壊力が私を傷ついた。


 反面、私の攻撃は盾のように立てた邪毒の槍に防がれた。その数は五つ。浄化神剣の力が込められた斬撃がそのうち二本を霧散させたけれど、残りの三本が直ちに頭を私の方に回した。


「お嬢様!」


「いや、私に任せて!」


『浄潔世界』の魔力を津波のように吐き出した。邪毒の槍が速く削られた。直後の斬撃で三つの槍をすべて破壊した。


 これで隙間を――。


【奥の手というものじゃ? 興味深いのぅ】


 ――狙うよりも速く、邪毒獣の巨大な右手が私を握りしめた。


「うっ!?」


 首下の全身が奴の右手に埋もれた。恐ろしい握力が私を締め付けた。


 奴の視線はただ私だけに向けられていた。


【じゃが……ワシをまともに攻撃できるのは、どうやらキミだけらしいのぅ】


―――――


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