未来への戦い

「キャオオ!」


 奴はためらうことなく咆哮しながら突進した。


 速い。足を動かす速度自体も非常に速いのに、巨大な体の歩幅まで合わさると迅速そのものだった。突進の速度だけを見れば最大出力の『加速』を使った僕に匹敵する。


 でも僕は足を一切動かさなかった。ただ魔弾を地面に一発撃っただけ。それが合図となり、アレンたちの白光技が地面を吹き飛ばした。宿敵の奴は突然できた穴に対処できず、そのまま片足が落ちてしまった。それから僕は奴に向かって走って行った。


 ――白光技〈獣縛り〉


 魔力が緻密に絡み合った鎖が宿敵の奴の体に巻かれた。アレンたちの拘束術式だった。なかなか強力な拘束技ではあるけど、宿敵の奴が一度力強く腕を広げるだけで簡単に壊れてしまった。


 だが、は作り出した。


 奴の近くから地面を蹴って飛び上がった。そして終連剣の引力を発動した。剣の引力が僕を引き寄せ、僕の体は恐ろしい速度で空中を飛んだ。


 終連剣の片方は依然として奴の肩に刺さっていた。それを支えに引力を発動することで、僕をそちらに引き寄せる道しるべとして活用した。


 飛んでくる僕を捕まえようとした手が空気を切り、僕の足が奴の肩に触れた。奴の肩に刻まれた傷とその傷に刺さっている剣を確認し、傷に向かって剣を振り下ろした。少し開いた傷に刃が突っ込んだ。


「バオオオオ!」


「うぁっ!?」


 温泉水が爆発するような魔力噴射が僕を追い出した。


 未練なく地面に復帰し、奴の周りをぐるぐる回るように走った。僕を追いかける拳と魔弾が地面をめっちゃくちゃにした。


 迂回して足を攻撃しようとした。でもその前に奴が手のひらを突き出した。巨大な魔力場がまるで壁のように僕を狙った。


「おっと……!」


 僕の特性は速く動くこと。それをつかむ最良の方法は動く空間ごと押さえつけることだ。


 魔力場だけでも圧死されそうな圧力だったけど、押さえつけられた僕を奴の拳が殴った。急展開したシールドが壊れ、殴られた衝撃で吹き飛ばされた。口から血があふれた。今度こそ左腕の骨が魔力でも支えられないほど完全に壊れた。


 激痛で歯を食いしばりながらも、右手に持った剣に魔力を注ぎ込んだ。


 ――『終連剣』引力発動


 飛んでいた体の方向が変わった。終連剣の引力で、奴の肩に向かって。僕を止めようとする魔弾が太ももやわき腹などにかすめた。それだけでも肌が焼けるように痛かったけど、激痛で止まっている場合じゃない。


 奴の肩を通り過ぎながら、そこに刺さっていた剣に魔力を注入した。そして右手だけで剣を振り回す。


 ――ジェフィス式剣術〈無情な月光の視線〉


 閃光のような剣閃がひらめき、奴の傷がさらに大きく広がった。血と悲鳴が沸き起こった。怒った奴が僕の方に振り向こうとした。


 その前に終連剣の引力を最大出力で発動した。今度は僕の方が引き寄せられないように、魔力で自分自身を地面に固定しながら。


 奴の肩に刺さっていた終連剣が、開いた傷に沿って下にずっと引きずり下ろされた。奴の体を深く切り裂きながら。今までで最も多くの血があふれた。


「ギャアアアアッ!!」


 苦痛と怒りの咆哮が爆発した瞬間、奴の血が生物のように動いた。突然先が尖った触手のように変わって僕に襲い掛かったのだ。


 その瞬間、僕は自分の体を固定させた魔力を解除して跳躍した。跳躍力と終連剣の引力が僕に超高速飛行を与えてくれた。奴の手と魔弾を避け、羽のあたりまで奴の体を切り裂きながら降りてきた剣を荒々しく引き抜いた。そして上空に向かって高く跳躍した。


 ――ジェフィス式剣術〈空を飛び回る翼〉


 剣一本だけに魔力を集中させ、極限まで鍛えられた魔力の刃を着せた。それを宿敵の奴の足の方に投げつけると、剣が足を突き破って地面に刺さった。そして魔力の刃がクモの巣のように変わって地中に入り込み、剣が抜けないように堅く固定した。まるで奴の足を縫って束縛するように。


 魔力の足場を踏み切り、全力の跳躍で奴に向かって下降する。同時に終連剣の引力を最大出力で発動した。


 ――ジェフィス式剣術〈狂竜の猛進〉


 右手の剣に巨大な魔力の刃が発現した。さらに本来の速度に終連剣の力、そして『加速』の力まで加えた、今の僕が放たれる最速の一撃。


 奴は拳と魔弾で対抗した。無数の魔弾が僕の全身を貫き焼いた。近づいた時は拳がかすめたりもした。しかし拳は最速で落下する僕を完全に捉えることはできず、魔弾もまた〈狂竜の猛進〉の巨大な刃に半分相殺された。


 ついに、奴の肩の傷に〈狂竜の猛進〉の刃が刺さった。


「ギャアアアアアー!!」


 刃は深く突っ込んだ。しかし十分ではなく、奴の固い体が落下速度を落とした。


「ぐっ……はああああぁ!」


 全力で魔力を放つ。刃がだんだん奴の体を切り裂いていった。


 もちろん遅くなった僕は奴にもいい標的だった。魔弾と拳が何度も僕の体を削った。しかし全力の魔力放射が奴の威力を軽減させた。僕はそれだけを信じて、すべての力を奴の体を切ることだけに注いだ。


 ……そして、ついに。


 巨大な魔力の刃が奴の股間から抜け出た。


 肺を切り、心臓を切り、ついに胴体を真っ二つにされた体が倒れた。地面を潤した血が最後の反抗のように動いたけど、それもすぐに静まった。


 倒れて動かない奴を見て、僕はしばらく茫然と立っていた。ボロボロになった全身の痛みも、血をびっしょりかぶったベタつきも感じられなかった。


 しばらく時間が止まったような感覚が過ぎ去り、しばらくして。


「……あぁぁぁぁぁあああああああぁぁーー!!」


 こみ上げてきた感情がそのまま咆哮した。


 あまりにも多くのものが入り混じって、ほとんど言葉では言い表せなかった。ただそれを少しでも減らそうとするかのように叫び続けるだけ。しかしその中でただ一つ、確実に言えることが一つあった。


 ……僕は、勝ったのだ。


―――――


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