決着の為の整理

 決心を固めてもう一度地面を蹴った。


 ――ジェフィス式剣術〈月光の竜牙〉


 突進しながら巨大な斬撃を放った。奴は四本の腕のうち二本に魔力を集中して斬撃を防いだ。奴の腕に浅い刺傷ができ、奴が後ろに押された。しかし残りの二本の腕が魔力をいっぱい含んで僕の方に向かって伸びた。二つの手のひらが巨大な魔弾を吐き出した瞬間、僕は『加速』の俊足として奴の後方を取った。


 後ろから攻めるつもりだったが、ザコ何匹かが僕を狙って襲い掛かってきた。


「邪魔するな!」


〈八頭竜の牙〉の連続斬撃でザコどもを倒すと同時に宿敵のことも牽制した。ちょうど奴が振り向いて拳を放ったところだった。その拳を割ることはできなかった。でも軌道を外すことは成功した。


 でもやはりザコどもが面倒だ。完全な一対一でも難しい戦いなのに。


 その時、庭園の結界側から魔弾が数発飛んできた。


「ギャアッ?」


 飛んできた魔弾はすべて宿敵に命中した。しかし奴に被害を与えることはできず、奴も怪しがるように声を一度出しただけだった。


 やはり支援射撃班には奴の防御力を突破するほどの攻撃力がないのか。


 でも彼らは奴に魔弾が通じないことを確認するやいなや、周辺のザコどもをターゲットにした。おかげで前よりもっと余裕ができた。


「ふっ!」


 宿敵の奴が出した拳を避け、その拳の衝撃波を魔力の斬撃で相殺した。そして奴の後ろにいるザコ一匹を狙い、片方の剣を全力で投げた。剣がザコの頭を貫いた。


「はああ!」


 残った片剣で全力の〈月光の竜牙〉を放った。目標は宿敵の奴の足。骨に届くほどではなかったが、筋肉に少し食い込むほどの深さの傷がついた。


「ガァアアッ!」


 奴が右の両拳を振り回した。まるで二つの拳で僕を閉じ込めるような軌道だった。しかし僕は体を飛ばして拳をかわした後、奴の腕に乗り込んだ。その腕に沿って一気に肩まで駆け上がった。


 肩から飛び降りた後、奴の心臓付近に向かって〈星のツブテ〉の突きを放つ。同時に終連剣の機能を発動した。


 ――『終連剣』引力発動


 後方のザコに刺さっていた剣がこちらに飛んできた。投げる時よりも速い速度だった。〈星のツブテ〉の突きが宿敵の奴の胸に命中すると共に、奴の後方から飛んできた剣が背中を刺した。


「ギャアアッ!」


〈星のツブテ〉の強烈な衝撃が奴を後ろに押した。後方から奇襲した剣は奴の皮膚を掻きながら動き、肩を浅く切り取ってから僕の手に戻った。奴の傷は浅かったが、終連剣の引っ張る力が奴にもある程度通じるということを確認した。


 僕と宿敵の奴は同時に次の手を投げた。


 ――ジェフィス式剣術〈空を飛び回る翼〉


 魔力の刃を重ねた双剣を投げた。もちろん宿敵の奴ではなく周りの魔物の方へ。一方、奴は魔力を集中させた四本の拳を高速で繰り返し振り回した。


 ――『加速』専用技〈音越え〉


 最大の加速で、浴びせられる拳の雨を全部避けた。けど奴の猛攻は『加速』を最大に開放した僕さえもきわどいほど速かった。その上、拳一つ一つが伴う衝撃波も強かった。それが数十、数百発が一瞬にして重なり激しい気流を作った。


「くっ……!」


 もう一度終連剣の引力を発動させる。〈空を飛び回る翼〉ですでにザコの何匹かを倒陸した双剣が互いに向かって飛んだ。途中の魔物は剣の魔力の刃で命を落とした。


 直後チャンスを見て宿敵の奴の腕に乗り込み、大きな跳躍で宿敵の奴の頭を飛び越えた。そして魔力で剣を引き寄せた。魔物を屠殺しながら飛んでいた双剣が僕の手に戻ってきた。


 高い所からザコどもの配置を確認した後、もう一度周辺に向かって〈空を飛び回る翼〉を投げた。直後、宿敵が僕に向かって拳を振り回した。素手の僕は白光技のシールドを展開したけど拳の威力をすべて受け止めるには力不足だった。


「がはっ」


 シールドが壊れ、拳が直撃した。シールドのおかげで威力が減ったのが幸いだろうか。しかしそれだけでも大きな打撃だったし、僕は威力に押されて地に投げつけれてしまった。


 にもかかわらず、集中力だけは失わなかった。


 ――『終連剣』引力発動


 先程投げた終連剣を操作し、もう一度飛ばさせた。そして双剣が当たる前に引力を切った後、魔力で軌道を少しひねった。剣の間の距離が遠くなるたびにそれを繰り返し、『加速』と簡単な魔力操作で速度と飛行を維持させた。ザコの間を飛び回る双剣が奴らをすべて切り捨てた。


 宿敵の奴が再び飛びかかって拳を放つと同時に、両側から飛んできた双剣が拳と激突した。魔力が爆発し、拳の軌道がずれた。


「……これでザコは始末したよ」


 魔力を操作して双剣を僕の手に呼び込み、口に溜まった血を荒々しく吐いた。


 周りの状態は目で見るまでもなく、魔力の気配だけで把握した。ますます押し寄せてきたザコの魔物たちがすべて終連剣の乱舞で死んでいた。


 ……さっき殴られたせいで全身が痛みを訴えていたけど、のんびり痛がっている暇はない。


「クルァアアア!」


 宿敵の奴が魔力を集めた。量だけを考えると、家一軒くらいは一撃で吹き飛ばすほどの魔力だった。それが魔力砲になった。


 避けるには広すぎて速い。


〈月光の竜牙〉の巨大な斬撃を一発、後に続いて〈星のツブテ〉も放った。二回の攻撃が魔力砲を相殺した。しかし、奴は気にせず突進して拳を振り続け、結局僕は後ろに大きく後退せざるを得なかった。


 やはりいい加減にする気なんてないらしいね。いや、僕だって傷ついた相手を追い詰める機会があれば逃さないよ。それは奴も同じだろう。


 これまでは奴よりも周辺のザコを殲滅することに集中してきた。でもそろそろ奴の固い体を貫く方法をきちんと考えなければならない時だ。


―――――


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