援軍と議論

 そのような状況に変化を与えたのは俺でも魔物でもなかった。


「グワッ!?」


 突然外郭の魔物たちが悲鳴を上げた。直後、その悲鳴を埋めてしまうほど大きな爆発音と共に爆炎が起こった。最初は土壁の近くだったけど、まるで鎖のように連鎖的に爆炎が起き、だんだんこっちに近づいていた。爆発するたびに飛ばされる魔物の姿がまるでグロテスクなポップコーンのようだ。


 鎖のように続く爆炎と一緒に俺の前へと現れた人は……小さくて可愛い少女だった。


「指示で助けに来ました! 今から一緒に戦います!」


 銀色の髪をツインテールに結び、似合わない大きな銃を持った少女。リディア・マスター・アルケンノヴァだ。


 彼女は俺に話しかけながらも赤い宝石を周りに撒いた。宝石が爆発し、近くの魔物を打ち砕いた。あれが『結火』の象徴である〈爆炎石〉なのか。さすがに恐ろしい威力だね。


 それより急にリディアをこっちに送ったって? なんでだろう?


 そういえば、テリアの友人たちはみんな役割が一つずつあった。でもリディアだけはなぜか事前に協議された役割がなかった。何かテリアとひそ話していたような気がするんだけど……まさかそれが俺の方を助けてくれという話だったのか? なんで?


 ……いや、それより今は状況をきちんと把握するのが優先だ。


 剣や『地伸』の術法で魔物を駆逐していきながら、リディアの戦いを観察する。


 正確で迅速なのは俺と同じだ。でも攻撃や戦闘のスタイルは大きく違っていた。特に『結火』の強力な爆炎は原形をほとんど残さず敵を粉砕したり燃やしたりし、その範囲も広かった。大量の魔物を虐殺することに関しては俺よりはるかに強く優れた能力だ。


 リディアの支援があれば作戦を変更してもより確実かつ安全に対処できる――そんな気がした。


「あのね、お願いがあるんだけど」


 話しかけると、なぜかリディアの表情が微妙に固まった。「何ですか」と答える声からもどこか不満そうな様子が感じられた。それでも俺は見ていないふりをして言葉を続いた。


「作戦を少し変えたいんだ」


「……変えるってことは?」


 リディアは大きな技を披露し、周辺の魔物を一気に殲滅した。俺も『地伸』で周辺を整理し、堀を掘ったり俺たちの位置を隆起させて魔物が接近しにくくした。しばらく話をするための地帯が形成された。


 もちろんそうだとしても魔物が全く入ってこないわけでもなく、俺たちが戦闘から抜け続けることはできない。でも俺もリディアも遠距離攻撃手段は着実に備えており、この程度の戦闘ならやり取りしながら同時に遂行することぐらいは容易だ。


「もともと俺の役目はここの封鎖だけど、止めるだけでは良くないんだ。魔物は少しずつだけど強くなり続けているし、亀裂から流れ込んできた奴らと全面戦争を続ける方式では結局俺たちが消耗するだけだよ。だから一度全力で魔物を一掃した後、亀裂の周辺を掌握した方がいいと思う」


 これは俺の独断ではなく、ある程度検証された知識に基づいた話だった。


 一度活性化して魔物を吐き出した時空亀裂は決して自ら止まらない。放っておくと果てしなく魔物を呼び寄せる。ただ魔物を退治し続けるという生ぬるい対処では根本的な解決にはならない。むしろ果てしなく戦うばかりで力が枯渇する未来だけだ。


 夢の中の俺が亀裂を物理的に塞いでしまう暴挙に出たのもそれを知っていたためだった。問題は正しい対処法を知らなかったことだけ。


 今も亀裂を直接何とかすることは不可能だ。でも今いる魔物を全部討伐し、亀裂の位置さえ握ればずっと楽に対処できるよ。例えば亀裂の前を掌握し、魔物が出てくるやいなや倒せば、このようなやり方で戦うことに比べて力を節約できる。


 そういう風に効率を上げて戦闘持続力を向上させ、亀裂を閉じる方法を見つけ次第対処すればいいと思ったけど……。


「お断りします。当初の作戦通りに行動しなければなりません」


 断られたけど、それ自体は思ったよりそれほど衝撃的ではなかった。


 渋い態度を見た時からある程度予想はしていた。おそらくリディアは俺がこのような提案をすることをすでに知っていたのだろう。当初、俺が見た夢の話は皆と共有していたし、テリアと何か話をしたのかもしれない。


「やっぱりテリアの予想通りですね。生半可な考えはやめてください。今引き受けた仕事に集中するようにしましょう」


 やっぱりテリアから何か言いつけられたらしいね。


 しかし、俺もそれなりに考えたことをあんな風に否定されるのはちょっと悔しい。実際、亀裂に対する考えは間違っていないはずなのに。


「あのさ。時空亀裂のことよく知らないのかよ? 亀裂そのものを何とかしない限り、魔物は無限に現れるんだよ。それをこんな風にずっと相手にしているわけにはいかないんだ。いつか俺たちが先に消耗して死ぬだけだよ」


「それをテリアや他の人たちが知らなくてこんな作戦を立てたと思うんですの? 作戦が使えるか悩むのはいいですけど、なぜそのような作戦を立てたのかをまず考えてください」


「じゃあお前は理由が分かるってこと?」


 ついカッとなってしまった。リディアは俺の方を見ずに魔物たちの頭に銃で風穴を開けていたけど、気配は感じたかのように小さく鼻で笑った。


「すべて知っているわけではありません。けれど一つは知っていますの。邪毒獣が現れた以上、邪毒獣を討伐できなくちゃ随所の派生亀裂を閉じることはできないってこと」


「それは俺も知っているんだ。でもこういう風に戦っているのが非効率だっていうのは変わらないじゃん。邪毒獣を倒すまで各地を守るのが俺たちの仕事なのは事実だけど、そうして力が尽きたら逆に危険だよ。だからもっと効率の良い方法を……」


 考えたことをできるだけ頑張って説明した。しかし、リディアの表情は良くなかった。むしろ眉をひそめるとか、ため息をつくとか、唇を噛むとか……不満がうかがえる信号がさらに増えていった。


 結局、彼女の不満が爆発してしまった。


「ああもう! バカなのくせに勝手に言わないで!」


―――――


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