夢の記憶
それは先日見た夢の記憶。夢なのに妙に鮮明で、まるで粘り強いように心の片隅にくっついて離れない記憶だった。
夢の中の場所は今のような東の教育棟一帯。そこで土壁が再び地に戻り、一帯が解放されることから夢が始まった。
でもそれは魔物たちに道が開かれたという意味ではなかった。大地の刃が、鋭い暗器が奴らを倒陸した。土壁が消えてさらに速く強くなった影がまるで刃の嵐のようだった。
その影の正体は〝俺〟だった。
「これさえ防げば……!」
巨大な石の槍を時空亀裂に打ち込んだ。
そんなことでは時空亀裂をなくすことはできない。それは〝俺〟もよく知っていた。だけど越えて来る邪毒の塊を槍で突き破って、そのまま蓋をするように亀裂を防いでしまった。こうしたら魔物が越えて来られないから。実際、亀裂は隙間から微量の邪毒を吐き出すだけで、石槍が壊れたり魔物が現れる気配はなかった。
……しばらくの間は。
亀裂を塞げて安心したのもつかの間だけ。塞がれた亀裂から魔力が振動する気配が感じられた。異変はすぐに起こった。
亀裂が、破れたのだ。
塞がってしまった亀裂が圧力に耐えられず破れたのか、それとも向こうから誰かが強制的に亀裂を拡張させたのかは分からない。そもそも時空亀裂については不明なことが多いから。とにかく結果的に亀裂は破れてしまい、さらに多くの邪毒が流れ始めた。〝俺〟は慌てて亀裂を塞ごうとしたけど、あふれ出る邪毒が『地伸』の岩や土を素早く腐食させたせいで不可能だった。
そして……もっと強い魔物がたくさん出てきた。
〝俺〟は全力で奮闘した。そしてある程度は意味があった。ますます濃くなった邪毒の間で、より強くなった魔物を速いスピードで駆逐していったのだから。正直、この程度なら普通の大人よりもよく戦ったと自信を持つことができた。
でも任務の観点から見れば、それは結局失敗に過ぎなかった。
「しまっ……!」
何人かの魔物が空き地の外の部隊に飛びかかった。〝俺〟は急いで土壁を隆起させて部隊を守った。すると魔物は土壁をそのまま通り過ぎて空き地の外に出てしまった。そのように抜け出る魔物が少しずつだけど確実に増加していった。
部隊員たちは守ったけど、〝俺〟の任務はここの封鎖。魔物が抜け始めたことを遮断できなかった時点で、最も重要な役割がまともに遂行されなかったのだ。
その時から状況が悪化するのはあっという間だった。
溢れる魔物の勢いには耐え難く、他の所に漏れた奴らも多かった。その一部は近くの東の庭園に流れ込んだ。東の庭園はすでに強力な魔物に襲われていたのに。しかし〝俺〟と部隊員たちは目の前の状況だけでも手一杯だった。
やっと余裕ができて、東の庭園に向かったときに見えたのは……死んでいくジェフィスの姿だった。
痕跡だけを見ても非常に激しい戦闘があったことが推測できた。そして東の庭園を襲撃した強力な魔物の周りには他の魔物の死体も並んでいた。その中から見慣れた魔物も見えた。〝俺〟が阻んでいた教育洞エリアからの奴だということを〝俺〟は少し遅れて気づいた。
いや……気づかないことを願ったというか。
ジェフィスの死体に残った傷は多様だった。その中でどんな傷が教育棟から流出した魔物からのものなのかは簡単に見えた。そして庭園にいた人たちは怪我をしたけど死んだ人はジェフィスだけだった。それでも庭園の魔物は全部死んでいて、死体の状態から見て最も強力な魔物……本来庭園を襲撃した奴が最後の相手だったようだ。
つまり、ジェフィスは最後の最後にあいつと共倒れしたということだろう。教育棟から流出した魔物のせいで負担が加重された状態でも、最後の相手まで始末して戦死したのだ。
そこまで考えた瞬間、〝俺〟は仕方なく考えてしまった。
もし教育棟から魔物が流出しなかったら……ジェフィスが死んでいなかったかもしれないんじゃないかと。
……夢の中の〝俺〟とその光景を見る俺、両方が同時に考えた。
自信のある人生だった。何をしても成功し、何を望んでも手に入れた。いや、俺にできることとそうでないことをよく区分したというか。できることを明確にし、責任を持って遂行することがやりがいであり誇りだった。そしてできると思ったことはできるという自信があった。俺がそう思っていたから、夢の中の〝俺〟もきっと同じだったんだろう。
そんな〝俺〟にとって初めての失敗であり……その失敗で人が死んだ。
純粋に〝俺〟だけのせいではないかもしれない。でもその可能性を疑うに値する。それが〝俺〟を責め立てた。
その後どうなったかは夢には出てこなかった。しかし……俺の事だ。どんな気持ちか完全には分からなくても、ある程度想像はできる。
もちろん今なら違う。夢で亀裂が暴走したのは物理的に亀裂を塞ごうとしたからだ。むしろその前までは俺が意図した通り敵を殲滅し亀裂の位置を掌握していた。亀裂を塞げてしまう代わりに、出てくる魔物だけをすぐ倒す程度なら大丈夫だろう。
そう思いながらも、本当にそれでいいのかという疑念が頭をもたげた。
〝それが本当に良い方法なのか疑ったことはありますの?〟
テリアの言葉。俺自身が抱いた疑いをとっくに見抜いていたようだ。まるで今この瞬間を予備したような言葉が鎖のように俺を縛った。
それが俺が今ためらう理由だった。
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