犯しがたい威容
「ケイン第二王子殿下。準備ができました」
「ご苦労だった。作業を始めてほしいと伝えるように」
騎士の報告を聞き、指示を出す。その一方で、私は念のため空間を注視した。
すでに『覇王の鎧』は着用している。そしてこの部屋を含め、中央講堂一帯全体に数十重の結界を展開した。時空亀裂の拡張を遅らせ、邪毒を防ぎ、有事の際に全員を外に転移させる空間転移の結界まで。もちろん異空間や遠距離からの干渉も徹底的に防御している。
すでに不純分子がこの部屋の中に入っている場合でなければ、すべての場合の数を遮断したと言っても過言ではない。そして作業者と騎士の身元は徹底的に確認した。ピエリや安息領と少しでも関連がありそうな者は皆排除し、所持品検査も万全。
これで十分だ……とは確信できないけど、少なくとも私にできることはすべてした。もし予防に失敗しても空間転移で避難させることはできる。でもそれ以前に事件自体を予防するのが一番だから。
ところで……何だろうか。忌まわしい不安感が消えない。
しかし、すでに指示を受けた作業者たちが作業を始めた。漠然とした不安感で作業を遅らせるわけにはいかない。
一番最初に封印パーツが分解され、時空亀裂が姿を現した。空間そのものにひびが入った形状。割れ目から何とも言えない何かが垣間見えた。闇のようでもあり、深海のようでもある……ただ混沌としか表現できない何か。亀裂を通して微量の邪毒が流れ込んだ。
それでも亀裂が暴走する気配はないね。
作業員たちはすぐ次の手順に進んだ。強化パーツの『固定』で亀裂を固定する作業に。
その時、突然テリアさんから思念通信が入ってきた。
[ケイン殿下! 作業を中止させてください!!]
「!? 待って、作業を中止……」
理由を聞くよりも先に口を動かした。
騎士に伝達を命じると遅れる。だから私の言葉がすぐ届くように声を高めた。理由はわからなくても、声の焦りが私を動かした。
しかし……それさえも遅かった。
私が話す前に、作業員の強化パーツの操作が終わった。パーツの魔力が亀裂に流れ込んだ。
その瞬間、亀裂が急激に膨張した。
「っ――転移!!」
判断するより先にすべての人を外に転移させた。私自身も一緒に。
出たのは中央講堂のすぐ前。作業員たちは突然の状況に驚いて目をパチパチした。でも騎士たちは直ちに対応体系を整えた。やはり我が国の騎士は頼もしい。
だが、講堂に結界を新しく展開するよりも、巨大な講堂建物が一気に爆発するように破壊されるのが先だった。
舞い散る破片越しから見える形状は……。
――バルメリア式結界術奥義〈百環封印刑場〉
巨大な円筒状の結界が講堂のあった敷地全体を覆った。
百の関門で空間を封鎖する結界。人間なら、それこそ騎士団長レベルの実力者でない限り絶対に壊せない極限の奥義だ。
これに加え、封印に特化した結界をさらに展開した。
――バルメリア式結界術奥義〈八門封陣〉・〈ゴルナクの城塞〉
巨大な八角柱型結界が〈百環封印刑場〉を覆い、その上を再び城塞のような形をした結界が包んだ。
私が使える最強の封印式。ここに騎士隊が直ちに魔力と術式を加えて強化した。
この連携は父上にも認められた、この国最強の大規模封印術。これならいくら邪毒獣でも……。
考えを終える前に、突然恐ろしい衝撃がお腹の中を襲った。
「カハッ!?」
私は血を吐いて座り込んだ。
「殿下!!」
「くっ……結界をさらに強化せよ! 〈百環封印刑場〉が破壊された!!」
騎士の顔色が変わった。
クッソ、まさか奥義級の封鎖結界をたった一撃で壊すとは。しかもその衝撃で私にリバウンドが来た。そしてたった今、騎士たちの強化にもかかわらず、二番目の〈八門封陣〉まで破壊された。
半透明の城塞の向こうで、歪んだ形状が微笑んだような気がした。
「チクショウ!」
再び魔力を高め、〈ゴルナクの城塞〉の上に別の結界を追加した。
今度は結界が持ちこたえていた。だがそれは結界が強いためではなかった。邪毒獣の勢いが弱まったおかげだ。
奴が弱くなったはずはない。結界の向こうにも感じられる恐ろしい魔力を見ると、それは一目瞭然だ。
それでも勢いが弱くなったということは……手加減をしているのだ。
「クソが……!」
普段は吐き出さない悪口が口からあふれた。その感情まで込めて、騎士たちとの連携で合同結界を繰り広げた。しかし結界一つを展開するたびに、邪毒獣が結界一つを破壊した。
こちらのペースに合わせた破壊活動。明らかに私たちのことで遊んでいる。このままでは希望がない。
「奴を攻める!」
――バルメリア式攻性結界奥義〈地獄三門の処刑場〉
巨大な三角柱の結界が広がり、各壁に無数の砲撃陣が展開された。無数の砲撃で内部のすべてを壊してしまう攻性結界。奴を殺すことはできなくても、まず勢いをくじかないと。
私と騎士たちの魔力が共鳴して巨大な力場を展開した。
――バルメリア式戦術結界術〈地獄八門の羅刹〉
万物を貫き裂く結界が完成した瞬間。邪毒獣の気配が急激に増幅した。そして莫大な魔力と轟音が爆発し、多重結界が一度に破壊された。
「くうっ……!」
莫大な邪毒が津波のようにあふれ出た。辛うじて結界を展開して邪毒自体は防いだが、敗北感まで防ぐことはできなかった。
……私たちの力では、あいつを止められない。
邪毒が私の結界を腐食させる音が、まるで私をあざ笑っているようだった。でも結界が消えるやいなや邪毒が消えた。
いや、収めたのだ。邪毒獣の意志で。その意図が余裕の誇示であることは明らかだった。
ついに、邪毒獣の完全な姿が私の目に入った。
―――――
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