局面転換
――蛇形剣流〈毒蛇の牙〉
――天空流〈月光蔓延〉
ピエリが放ったのは強力な一撃。しかし、私が放ったのは無数の斬撃の乱舞だった。一撃を物量で圧倒しようとする思惑だった。けれど〈毒蛇の牙〉の斬撃が瞬間ぼやけるかと思った直後、突然数が増えた。
増加した〈毒蛇の牙〉の数は合計十本。そのうち九つが〈月光蔓延〉を相殺し、残りの一つが私の首に飛んできた。
「ち!」
それを受け流して再び剣を振り回した。同時に雷電の剣の弾幕を豪雨のように浴びせた。けれど、ピエリは〈蛇巣穴突き〉の分裂斬撃と〈毒蛇の牙〉の強力な斬撃を同時に放った。それらはまた十倍に増えた。それらが私の攻撃を相殺した直後、散乱する雷電を突き破ってピエリの刃がやってきた。私はかがんでその刃を避けた。
その直後〈雷鳴顕現〉を解除した。
――紫光技特性模写『束縛』
特性で強化した束縛の術法を十重展開した。鎖と結界、見えない圧迫感などがピエリを襲った。彼は〈蛻け〉で抜け出した後、私を狙おうとした。
でもその時すでに私は十人になっていた。
「また幻影ですか? もう無駄です」
ピエリは幻影を無視してすぐに本体の私に突撃してきた。魔力の感覚さえも欺く幻影を見抜いてすぐ無視するなんて、いい判断力だ。
ロベルの特性が『虚像満開』じゃなかったら、ね。
――『虚像満開』専用技〈幻影実体化〉
虚像の私たちが雷電の斬撃を放った。本来なら現実に何の影響も及ぼさないはずの幻想。でもその攻撃がピエリに届く直前、ピエリはびくっとして後ろに退いた。彼のいた場所が雷電に焼けて灰になった。
「これは〈幻影実体化〉……まさか?」
まれに驚愕しているピエリにまっすぐ飛びかかった。再び『束縛』の力を多重に展開してピエリを縛ろうとした。彼は今回も抜け出そうとした。けれどその瞬間、彼を取り囲む壁の幻想が現れた。そして一瞬だけその幻想が実体になって彼を阻止した。その間、私の束縛が彼を拘束することに成功した。
「まさか幻影系でも最上位に準ずる『虚像満開』を持っているとは……これは予想外ですね。『冬天』と同格の特性がアカデミーにもっとあったとは…」
やっぱりピエリ程度なら知識はあったらしい。
〈幻影実体化〉は『虚像満開』級の幻影能力だけが持つ固有の権能だ。その能力はその名の通り幻影に実体を与え、現実に影響を及ぼすこと。実体化できるのはごく短い一瞬だけだけど、その瞬間をうまく活用できれば非常に強力な力だ。
もちろん、束縛に成功したからといって安心できる状況ではないけど。
「ふぅっ!」
拘束を破壊しようと魔力を爆発させるピエリと、その上に新しい術法を重ねて状態を維持しようとする私。その戦いが稼いだ時間はほんの少しだけだったけど……それで十分だった。
血まみれになったジェリアは重剣を振り上げたまま飛び出した。
「はあああ!」
――狂竜剣流『冬天』専用奥義〈冬天の流星〉
改めて氷雪の斬撃が放たれた。ピエリは最終的に拘束を破壊し、剣を振り回した。けれど〈冬天の流星〉を防ぐほどの力を集める時間はなく、彼の斬撃は〈冬天の流星〉の力を多少削っただけだった。
……そうすべきだったけれど。
――『倍化』専用技〈魔力増幅〉十倍
ピエリの放った斬撃の魔力が急激に増幅した。〈冬天の流星〉も相殺できるほど。
力、速度、魔力、個数。どんなものでも数字で表現できれば全部倍化させてしまう力。さらにピエリの『倍化』は最大十倍という驚異的な倍率を誇る。
けれど、その程度はすべて予想した。
「はああっ!」
ジェリアと同じく血まみれになっていたロベルが跳躍してきた。同時に私は再び〈雷鳴顕現〉を発動した。私は雷電の剣を突き出し、ロベルはまるで私を真似るかのように雷電の幻影を拳にまとった。ジェリアさえも次の攻撃を準備していた。
――蛇形剣流『倍化』専用奥義〈三頭竜牙〉
三匹の竜の斬撃が私とロベルとジェリアをそれぞれ襲った。けれど、私は〈雷鳴顕現〉に同化した周辺空間に瞬間移動してその攻撃自体を避けた。そして『万壊電』の力でロベルとジェリア側の竜を相殺した。おかげで二人はピエリを攻撃することができた。
一瞬実体化した雷電の力を込めた拳と、すべてを凍らせて壊す永久凍土の力が込められた斬撃。ピエリはそれさえも増幅された斬撃で相殺した。
しかし、私はその隙を狙っていなかった。ピエリが周りを見回す余裕を持てるように。
「……!?」
ピエリの顔色が変わった瞬間、私は魔力を集中した一撃を放った。ピエリはあたふたと防御したけれど、依然として慌てた様子だった。
「なに? あっちに加勢したいの?」
私はそんなピエリをあざ笑って横目で見た。
先ほどアルカたちが倒したボロスの方を。
ボロスは最高幹部である安息八賢人の一員であるだけに、強くて影響力も大きい。そのようなくせに性格が単純でピエリを気に入っている方なので利用しやすい。実際、ゲームでもピエリはボロスを道具として最後までこき使ってたし、彼がいなければ成功できない計画も多かった。そんな奴をこんな所で失うわけにはいかないだろう。
もちろん、落ち着きを取り戻すまで待つつもりはない。
――『万壊電』専用技〈雷雲〉
〈雷鳴顕現〉が支配した空間全体が発光し、落雷になって魔道具の方の分身ピエリと私の前のピエリを一度に襲った。ピエリたちは剣を中心に魔力場を展開して落雷を防いだ。被害自体は受けていないけど、これでボロスの方を助けに行くことはできなくなった。
私はピエリの動きを注視しながらも、口ではためらわず挑発の言葉を吐いた。
「さあ、これからどうするの?」
―――――
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