激戦
「いいぜ」
敵のおじさんが短く呟いた瞬間、突然魔力が盛大に爆発した。
「うっ!?」
「きゃあ!」
近づいて攻撃していたトリアとジェフィスお兄さんだけでなく、遠くから射撃をしていた私とリディアお姉さんまでその魔力爆発に巻き込まれて飛ばされてしまった。それだけ強くて暴力的な爆発だった。
トリアだけは空中から炎風を放射して耐えた。それだけでなく、すぐに敵のおじさんに飛びかかって炎風を浴びせた。
――ボロス式槍術〈クマのように振り回し〉
だけど、今の爆発で〈絶望の監獄〉はすでに破壊された。敵のおじさんは槍を振り回してトリアの炎風を吹き飛ばした。以前よりもはるかに濃密で莫大な魔力がトリアを襲った。トリアは渦巻く炎風で攻撃を防ごうとしたけれど、あふれる魔力に耐えられず再び吹き飛ばされた。
敵のおじさんが微笑んだ。
「よォやく『麻痺』の影響が消えたんだぜ。魔力を使いやすくなったな。腕は相変わらず本物より遅ぇだが」
今までは『麻痺』のせいで魔力をまともに使えなかったってこと……!?
ゆったりと驚愕している時間はなかった。
「おおっと、可愛いガキだな。殺すのはちょっとアレだな」
敵のおじさんが突然私の目の前に現れてそんなことを言った。
「!?」
驚いた私は反射的に弓を上げた。けれど、敵のおじさんの手が私の手首をつかんだ。
痛い。握力が強すぎる。でも……ここでただ慌ててばかりいるわけじゃないよ!
――天空流〈三日月描き〉
右手の矢を剣に変えて一撃。敵のおじさんはすぐに私の手首を放して避けた。その間、私は虚空に多数の魔力弓を具現した。その弓一つ一つに〈星の翼〉の矢が装填された。〈ホシクモ〉の乱射とは異なる、弓それぞれの強力な一撃を弾幕で浴びせる技。
「発射!」
すでに砲撃と呼ぶべき射撃が敵のおじさんを襲った。余波だけで大地がめちゃくちゃに壊れた。敵のおじさんは槍を何度か振り回すだけでそれを全部防御したけれど、おかげで隙ができた。
その隙を逃すトリアじゃない。
――極拳流奥義〈深遠の拳〉
炎風の魔力が集約された拳が敵のおじさんのわき腹を強打した。
「ぐあっ、熱ぇ……!」
トリアの拳が敵のおじさんを追い詰めた。彼は強大な魔力を爆発させて威力を相殺した。だけど〈深遠の拳〉は莫大な魔力を超高密度に圧縮する奥義。いくら太山のような魔力を持つ敵のおじさんであっても、単なる魔力の強さだけでは防ぐことはできない。
……それでもわき腹が多少焼けた程度に終わったのは十分バケモノのようだけど。
「今度はオレの番だぜ!」
――ボロス式槍術〈精一杯突き〉
巨大な魔力砲に等しい突きがトリアを襲った。トリアは炎風の腕でそれを受け流そうとしたけど、威力をすべて処理できずに大きく押し出された。影響を受けただけでトリアの肩とわき腹に大きな傷ができた。
敵のおじさんの攻撃はそれで終わらなかった。
「うりゃうりゃあーー!」
――ボロス式槍術〈たくさん突き〉
乱死した魔力の突きが出てジェフィスお兄さんとリディアお姉さんを襲った。私とジェフィスお兄さんは防御を試み、ある程度は威力を削った。けれど、余波だけでも血を流してひざまずいた。
でもリディアお姉さんは違った。
「ふざけないで!!」
――『灰色の猿』専用結火剣術〈紅蓮の鎖〉
――『野性の爪』専用結火剣術〈暴君の爪〉
爆発を利用した加速。リディアお姉さんは一瞬にして敵のおじさんの突きを避け、近づいて剣を振り回した。連鎖爆発が相手を襲った。その攻撃は敵のおじさんの莫大な魔力に相殺されたけど、反撃もリディアお姉さんには届かなかった。
マチェテから拳銃へ。時には散弾銃や他の武器で。自由自在に武器を変えながら魔弾と〈爆炎石〉を撒くと、敵のおじさんの体に少しずつでも傷が累積した。
でもリディアお姉さんの体からも血が流れていた。直撃した攻撃は一つもなかったけれど、ただ避けたり受け流した攻撃の余波だけでも傷が増えた。傷の大きさで言えば、むしろリディアお姉さんの方が大きかった。
けれど、それは時間稼ぎには十分だった。
――アルカ式射撃術〈願いの星〉
私はもう一度矢を放った。その瞬間、リディアお姉さんが後ろに避けた。敵のおじさんは槍で矢を防いだ。
それは間違いだったよ、おじさん。
――『万魔掌握』魔力複製『冬天』
――『冬天』専用技〈氷縛砕〉
「!?」
槍が手と共に凍り付いた。破砕には至らなかったけど、氷結自体は簡単には振り払うことのできない束縛となって敵のおじさんの槍を封じた。
もちろん敵のおじさんならすぐ氷を砕くだろう。でもその程度の隙間で十分だった。
――狂竜剣流〈竜の咆哮〉
――アルケンノヴァ式射撃術〈常進の一線〉
ジェフィスお兄さんが放った魔力砲をリディアお姉さんの戦術級魔弾が吸収した。同時に、私は魔力を限界まで圧縮した矢を発射した。トリアは炎風の手で矢をつかんだ。
――トリア式融合技〈巨神の槍〉
巨大な炎風の魔力が加わった矢が、ジェフィスお兄さんとリディアお姉さんの魔力が合わさった魔弾と共に敵のおじさんを襲った。
「うおおおお!」
力強い気合と共に振り回された槍が巨大な魔力の波を吐き出した。
激突。
莫大な魔力の競り合いの末に勝利したのは私たちの挟攻だった。敵のおじさんの体に深い傷痕が刻まれ、血が滝のように噴き出した。
けれど、敵のおじさんは相変わらず堂々としていた。
「一日に二回もこれだけの傷を負うとはな。初めてだぜ」
魔力が傷口を覆った。再生はできないようだけど、少なくとも血は止まった。
「くっ、強い……!」
トリアは歯を食いしばった。
魔力と体力の減少、そして負傷。みんな消耗が激しかった。敵のおじさんも大怪我をしたけど、その魔力にはまだ終わりが見えなかった。まるでお姉様みたい。
けれど……それだけなら、まだ方法はある。
敵のおじさんの特徴はすでに十分把握している。まさに力だけが全てだって主張するようなタイプ。技なんて意味のないほどの圧倒的な力ですべてを圧倒する者。
それなら、私にも立ち向かう方法はある。
―――――
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