二度目の決着

「お嬢様?」


 私がトリアを通り過ぎて歩いていくと、トリアは疑問に思うような声を上げた。一方、敵のおじさんは興味を持っている様子だった。


「ほう、今度はオマエか?」


 その言葉に答える代わりに、私の体に大量の魔力をむやみに浴びせた。


 まだ私の『万魔掌握』でも再生関連特性は複製できなかった。でも再生能力がなくても、大量の魔力を消耗すれば体の再生力を高めることはできる。『万魔掌握』の無限の魔力の恩恵を持つ私なら、それだけでも相当な負傷はすぐに回復できる。


 もちろん、再生を妨害する魔力に攻撃されたらそうならない。実際、敵のおじさんが同じ方法を使えないのもそのためだし。


 ――『万壊電』専用技〈雷神化〉


 紫の雷電になった私の体が銃弾のように撃たれた。


「ほう?」


 雷電を含んだ剣を、敵のおじさんは軽く受け止めた。細目をしたけど、その中に込められた感情はただ興味だけ。


「あのコムスメと同じ技だな。同じ能力を持ってんのかァ? それとも……」


 ゆったりとした声を覆ってしまうように、何度も雷電の剣を振り下ろした。雷電が爆発するたびに敵のおじさんの厚い魔力場が揺れた。けれど、彼の槍は少しも揺れなかった。


 余裕を持てるのも今だけだよ。


 ――ボロス式槍術〈精一杯振り回し〉


 ――天空流〈三日月描き〉


 二つの斬撃がぶつかって……同時に相殺された。


「は?」


 意外だって言うように眉をひそめた敵のおじさんに向かって、もう一度雷電の剣を振り回した。もう一度お互いの魔力が相殺され、私たちの頬に同時に浅い傷ができた。


 その時になってやっと敵のおじさんは何が起こっているのか気づいて微笑んだ。


「……はははっ! 面白ぇぜ!」


 振り回された剣と槍がぶつかり合い、魔力が爆発する。


 ただそれだけの応酬。しかし莫大な魔力と魔力がお互いを相殺し、浅い傷が累積し続けた。


「オレの魔力量を相殺できるヤツを一日に二人も見るって、今日はとても面白ぇ日だぜ!!」


 ……こっちはそれでも必死に魔力量を追っているのに、あっちはまだまだ余裕があるね。腹立つ。


 私は歯を食いしばってまた力を高めた。


 ――『万魔掌握』魔力複製『冬天』・『結火』


 突然湧き出た氷壁が私たちだけのコロシアムを形成した。中に冷気が充満し、敵のおじさんの動きが少し遅くなった。


「面白ぇオモチャだぜ!」


 振り回される槍は剣で防御。その間、背後に展開されていた〈星の翼〉の矢が無数の魔力弓に装填された。


「はああああっ!」


 雷電の一撃が敵のおじさんの濃い魔力に隙を作り、その隙から矢を浴びせた。すべてが『冬天』の冷たい魔力が宿った矢だった。敵のおじさんの槍や魔力に防がれたせいで直撃はしなかったけれど、動作や魔力の動きが少しずつ鈍っていた。


 そして遅くなった敵のおじさんに向かって、もう一度雷電が充満した剣を振り回した。


「せいやあ!」


 強烈な剣閃が再び道を開いた。その中で、今回は激しい『結火』の矢を浴びせた。何度も爆発が起こった。


「うはは! ちくちくするぜ!」


 ダメージは明らかに累積していた。けれど浅い負傷に過ぎず、敵のおじさんは相変わらず豪快に笑いながら槍を振り回していた。


 ――『万魔掌握』魔力複製『剛体』


 筋肉に力がついた。


 まるで山も抜かれそうな気分。その気持ちのまま剣を振り回した。槍がそれを防ぐと、そのまま力で押し出した。


「このオレに力比べって、なかなか唐突な……うむ?」


「はあああああああ!」


『剛体』の魔力を全身に限界まで満たし、その力で槍を押し出した。敵のおじさんは眉を一度震わせ、両手を槍に当てて私の力を受け止めた。


 力はせいぜい拮抗する水準だったけど……そのため、敵のおじさんも手を他の用途で使う余裕がなくなった。


 ――『結火』専用技〈砲火の檻〉


〈爆炎石〉の垣根が私たちを包んだ。その直後、垣根から噴き出した爆炎が一斉に敵のおじさんに浴びせられた。


「うお!?」


 爆炎が降り注ぐ間、私は後ろに下がってまた魔力を集めた。


 今私が使える最強の技を放つために。


 ――天空流奥義〈空に輝くたった一つの星〉


 ……多分お姉様もこれを見たら驚くんじゃないかな。


 私が使える唯一の奥義。制御できる魔力量の限界まで全部たった一つの武器に圧縮する秘術。〈星の翼〉の矢も、それを撃っていた魔力弓も、そして他のすべての魔力がすべて私の手に集まり、ただ一つの魔剣を形成した。


「行きますよぉっ!」


 ただ精一杯剣を振り回し、すべての魔力を斬撃として吐き出した。


「く……はぁっ!?」


 その一撃は敵のおじさんでさえ完全に防げなかった。圧倒的な魔力の波が敵のおじさんの槍を切断し、体にも深い傷を残した。これまでで最も深くて大きな傷だった。


 けれど……彼は相変らず笑いながら両足で立っていた。


「はっ、すげぇ一撃だったが……まだ足りねぇぜ」


「……私も知っています」


 でも構わない。


 なぜなら……最初から私の力で勝てるとは思わなかったから。


「本当に、本当にお上手でした」


 炎風が私を通り過ぎた。


 トリア、リディアお姉さん、そしてジェフィスお兄さん。三人とも強大な魔力を限界まで集めたということが感じられた。


 最初から、私は彼女たちが力を集める時間を稼ごうとしただけ。


「しまっ……!?」


 慌てる敵のおじさんに向かって、みんなが集めてきた力を放出した。


 ――狂竜剣流『加速』専用技〈閃光の竜〉


 極限の速度を威力に変えた重剣が魔力の腕を切り取って。


 ――リディア式射撃術〈太陽の弾丸〉


 爆炎の魔弾が反対側の腕を爆発させ。


 ――極拳流終結奥義〈根源の瞳〉


 すべてを一点に圧縮した至高の拳が、敵のおじさんの腹部に直撃した。


 すべてを溶かして吹き飛ばす炎風が爆発し、敵のおじさんの体が遠く飛ばされた。


―――――


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